インフルエンサーマーケティング市場は年々成長を続け、デジタルマーケティングのコアチャネルとして認識されるようになりました。近年は、インフルエンサーマーケティングの広がりに伴って競争も激しくなっています。このように急成長している業界で結果を出すためには、プロセスを強化して付加価値を生み出す必要があります。
インフルエンサーマーケティングは、1ドル投資すると6.50ドルを獲得できると言われるほどROIの高いマーケティング手法として知られていますが、なかなか狙ったような成果が出せないブランドが多いのも現状です。
パフォーマンスを向上させるには、キャンペーンに適したインフルエンサーの選択から始まり、戦略の立案、キャンペーン結果の分析まで、全体的なアプローチが必要です。今回は、インフルエンサーマーケティングのROIを改善するためにやるべき8つのことを紹介します。
目次
- 1.エンゲージメントの高いインフルエンサーを見つける
- 2.インフルエンサーをコントロールしない
- 3.CTAを絞る
- 4.コンテンツを投稿するタイミングを見直す
- 5.キャンペーンの結果を次に活かす
- 6. 広告とインフルエンサーマーケティングを併用する
- 7. 特別感のあるコンテンツを作成する
- 8. インフルエンサーと長期契約を結ぶ
- まとめ
1.エンゲージメントの高いインフルエンサーを見つける
インフルエンサーマーケティングでよくある間違いが、「フォロワーの多いインフルエンサーとタイアップできれば売上に繋がる」というものです。確かに、数十万人、数百万人といった膨大な数のフォロワーを持つ有名インフルエンサーは一気に話題を拡散させる力を持っています。しかし、有名インフルエンサーのフォロワー全員がインフルエンサーのコンテンツを毎回チェックしている訳ではありません。
ブランドにとって最適なインフルエンサーを見つけることは大きな課題で、米国インフルエンサーマーケティングプラットフォーム「Mediakix」が2019年1月にブランドやマーケターを対象に実施した統計結果によると、61%のマーケターが「ブランドに合うインフルエンサーを探すのは難しい」と答えています。
また、インフルエンサーもタイアップ相手として適切なブランドを慎重に選定しており、別の調査では、インフルエンサーの71%が価値観の合うブランドとタイアップすることを最重要事項として挙げています。
インフルエンサーとタイアップする際には、時間をかけてインフルエンサーのプロフィールを確認し、ブランドのコンセプトや価値観に共感してくれるパートナーを見つけることが大切です。
インフルエンサーの候補が見つかったら、次のポイントを確認しましょう。
ブランドのターゲットオーディエンスに到達できるか?
スポーツウェアブランドが、ランニングが好きなミレニアル世代をターゲットにしたインフルエンサーマーケティングキャンペーンを実施する場合を例に挙げて考えてみましょう。
この場合、ランニングが好きなインフルエンサーを見つけるだけでは不十分です。インフルエンサーだけではなく、フォロワーの特性までしっかりと見ることが大切です。
候補となっているインフルエンサーのフォロワーは、ブランドの希望するターゲットオーディエンスと一致しているでしょうか。例に挙げたスポーツウェアブランドのキャンペーンの場合、フォロワーはインフルエンサーと同じように、ランニングに対して情熱と強い興味を持っているでしょうか。また、フォロワーは、他にどのようなタイプのインフルエンサーをフォローしているでしょうか。
時間とリソースを使ってオーディエンスを理解し、バイヤーペルソナを作成します。そうすることによって、ブランドのキャンペーン目標を達成するための理想的なインフルエンサーを明確にすることができます。
インフルエンサーとオーディエンスの繋がりは深いか?
インフルエンサーを選定する際は、「フォロワー数が多いか」よりも、「繋がりが深いフォロワーが多いか」ということが大切です。コンテンツに寄せられたコメントを読むことによって、インフルエンサーとフォロワーの繋がりの深さを確認することができます。
コメントにはポジティブな意見が多いでしょうか。また、本物のフォロワーから寄せられたコメントのように見えるでしょうか。それとも、ボット(AI)からの自動メッセージのように見えるでしょうか。
また、フォロワーのコメントに、インフルエンサーが紹介したブランドやブランドの商品についての話題が多ければ、インフルエンサーのアプローチが成功していると言えます。
フォロワーは「本物」か?
インフルエンサーのプロフィールをチェックする際は、フォロワーの数やコメントの内容と共に、フォロワーのユーザー名やアイコンもチェックしておきましょう。アイコンに何も設定されていないアカウントが多数見つかった場合、それらはお金で買われた偽のフォロワーかもしれません。
New York Timesによると、偽のフォロワーとボットは引き続き増加傾向にあり、フェイスブックには推定6,000万件、ツイッターには4,800万件のボットが存在すると言われています。多くのマーケターにとって、インフルエンサーの信頼性を検証することは、キャンペーンのROIの測定に次ぐ最大の課題ですが、複数のインフルエンサーのフォロワーを調査するプロセスは非常に手間がかかります。
そこで活用したいのが、インフルエンサーとの契約からキャンペーンの運用まで、一連のプロセスを管理できるインフルエンサーマーケティングプラットフォームです。インフルエンサーマーケティングプラットフォームには多数のインフルエンサーが登録されており、実績やプロフィールを簡単にチェックすることができるため、インフルエンサーを選定するプロセスの合理化に繋がります。
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2.インフルエンサーをコントロールしない
インフルエンサーマーケティングのROIを改善しようとすると、結果を求めるあまり、コンテンツ作成に深く関わりたくなることがあります。しかし、インフルエンサーマーケティングは、インフルエンサーを通じて潜在顧客となるオーディエンスとの繋がりを作ることを目的としているため、インフルエンサーのコンテンツの内容をブランドが細かく指示すると、全体的な成功に悪影響を与える可能性があります。
フォロワーは日頃からインフルエンサーのコンテンツをチェックしているため、ブランドが売りたいものをプッシュしたコンテンツを投稿すると、すぐに気づかれてしまいます。インフルエンサーマーケティングは、インフルエンサーとオーディエンスの信頼関係によって成り立っているマーケティング手法なので、インフルエンサーが発信した情報が「インフルエンサーの意思によって発信されている本物の声」と感じてもらえることが何よりも大切です。
インフルエンサーを信頼して、クリエイティビティの自由を与えましょう。そうすれば、オーディエンスがコンテンツを見た時に、インフルエンサーの「本物の声」と感じるでしょう。
オンラインインタラクションはインフルエンサーが熱心に取り組んでいる技術であり、インフルエンサーはオンラインでの認知度を重視しています。多くのインフルエンサーがフォロワーに関連するコンテンツの戦略化と開発に1日3時間以上費やしているという調査結果もあります。
3.CTAを絞る
人は、選択肢が多すぎると意思決定プロセスを完全に放棄することがあります。言い換えれば、選択肢を絞ることは、オーディエンスの購買行動の後押しに繋がるということです。
インフルエンサーマーケティングの目的はブランドによってさまざまですが、オーディエンスに対して複数の行動を促すフレーズを伝えることによって、かえってオーディエンスの行動を妨げてしまう可能性があります。
インフルエンサーマーケティングキャンペーンを実施する際は、オーディエンスに求める明確な行動を1つ決定します。
・自社ウェブサイトへの訪問
・オンラインイベントへの登録
・ソーシャルメディアの公式アカウントのフォロー
ブランド認知から購買までのカスタマージャーニーの道筋を描くときは、各段階でさまざまなタイプのCTAを選択する必要があります。まずはブランドを知ってもらうためのCTAから開始し、オーディエンスとブランドの関係性が深まってきたら、CTAはプレゼンテーションやオンラインイベントへの参加や、商品購入へと変化するかもしれません。
ブランドの目的に合わせてより明確で実用的なCTAを使用することによって、焦点を絞ったインフルエンサーマーケティングキャンペーンを実施することができます。さらに、CTAを絞ることによって、実施中のキャンペーンの効果とROIをより適切に追跡できるようになります。CTAを決定する際は、全体的なマーケティング目標をCTAに正しく反映させるのがポイントです。
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4.コンテンツを投稿するタイミングを見直す
プラットフォームや業界によって、コンテンツを投稿するのに「最適なタイミング」というものがあります。コンテンツを投稿するタイミングは、インフルエンサーマーケティングキャンペーンのエンゲージメントに大きな影響を与えます。
現在インフルエンサーマーケティングを実施しているブランドで、インフルエンサーの好きなタイミングでコンテンツを投稿してもらっている場合、タイミングを見直すことによってROIの改善に繋がる場合があります。
ROIを最大限に高めるためには、プラットフォーム、業界、フォロワーに関するグローバルデータと、ブランドの知識、さらにはインフルエンサーの知識を組み合わせて最適なタイミングを導き出します。
例えば、平日にコンテンツを投稿すれば、ブランドはリードをフォローアップできるスタッフを増やすことができます。また、インフルエンサーは、「木曜日と土曜日にコンテンツを投稿すると反応が良い」といった体験的なデータを持っているかもしれません。
また、コンテンツのリリース日時を設定するときは、次の点について確認しておきましょう。
業界内で他にイベントはないか?
コンテンツの投稿を予定している日時に、業界内で大きなイベントはないでしょうか。もしあれば、その話題でコンテンツが埋もれてしまうかもしれません。
反対に、ブランド認知度とエンゲージメントを促進するためのイベントがあれば積極的に活用しましょう。
ターゲットオーディエンスの行動パターンは?
コンテンツの投稿日時を決定する際は、オーディエンスの行動パターンを考慮します。例えば、米国では、週末に食料品をまとめ買いする文化がありますが、平日は価格が安くなる傾向があるため、節約志向の買い物客は、あえて平日にスーパーを訪れます。平日限定の割引クーポンコードを投稿すれば、節約志向の買い物客が強い興味を示すかもしれません。
また、若年層のユーザーは衝動的なオンライン購入をする傾向があります。自社のECサイトで最も購入が頻繁に行われる時間帯はいつでしょうか。ターゲットオーディエンスの行動パターンに沿ってコンテンツの投稿時間を決定すると、よりROIを高めることができます。
5.キャンペーンの結果を次に活かす
ブランドの商品や提供できる価値、ターゲットとするオーディエンスは競合他社と全く同じではないので、同業他社のインフルエンサーマーケティング事例と全く同じことをすれば必ずしもうまくいくとは限りません。
有名インフルエンサーとのタイアップでない限り、インフルエンサーマーケティングキャンペーンは、単発でいきなり大成功を収めることができる魔法ではありません。キャンペーンのデータを見ながら改善を重ねていくのが基本です。
デジタルマーケティングとソーシャルメディアは急速な進歩を続けており、特にオンラインキャンペーンの効果測定においては、数年前に比べてAI技術が格段に進歩しています。インフルエンサーマーケティングプラットフォームを使用すれば、キャンペーンのプロセスを管理し、効果を最大化するために必要なデータを取得するのに役立ちます。
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6. 広告とインフルエンサーマーケティングを併用する
インスタグラムでは2019年から、通常の広告サービスに加えて「ブランドコンテンツ広告」という新しい広告サービスが始まりました。ブランドコンテンツ広告とは、すでにインスタグラムに投稿されたコンテンツを広告コンテンツとして運用できるサービスです。
ブランドコンテンツ広告は、次のような目的で使用できます。
・ブランドの認知度アップ
・リーチ
・動画の再生数アップ
・コンバージョン
・トラフィック
・投稿のエンゲージメント
インフルエンサーマーケティングキャンペーンでインフルエンサーが作成したコンテンツの中からパフォーマンスが良かったものを選び、ブランドコンテンツ広告として運用すれば、効果的にスポンサードコンテンツを再利用できます。
さらに、ブランドコンテンツ広告は「コンテンツのエンゲージメント」という点で、ソーシャルメディアが提供する通常の広告サービスとは大きく異なります。
通常の広告サービスでは、キャンペーンが終了すると「いいね!」やコメントなどのすべてのエンゲージメントが失われます。一方、ブランドコンテンツ広告は、すでにインスタグラムに投稿されたコンテンツに広告が付いたものなので、広告期間が終了しても「いいね!」やコメントなどのエンゲージメントはオーガニック投稿に残ります。
ブランドコンテンツ広告の運用は効果的にスポンサードコンテンツを再利用できるだけではなく、インスタグラムアカウントのエンゲージメントを高め、結果的にROIの改善に繋がります。
7. 特別感のあるコンテンツを作成する
次のようなインフルエンサーマーケティング施策を実施するとオンラインで情報が拡散されやすくなり、ROIの改善が期待できます。
・商品企画の裏側を紹介するコンテンツ
・クーポンなどの特典があるコンテンツ
・ブランドのファンイベント
・インフルエンサーとの対面イベント
・コンテストやプレゼントなどの企画
コンテストやプレゼント企画のようなユーザー参加型イベントは、話題になりやすいインフルエンサーマーケティングキャンペーン手法の一つです。また、割引クーポンコードの配布はダイレクトに売上に繋げることができるだけではなく、インフルエンサーに固有のクーポンコードを付与することによって、コンテンツが売上に与えた効果を簡単に測定することができます。
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8. インフルエンサーと長期契約を結ぶ
優れたROIを達成して成功したインフルエンサーキャンペーンは、ほとんどの場合、長期間にわたって戦略的に計画され、インフルエンサーとブランド、そして、フォロワーの間に信頼関係が生まれています。
また、卸売店で商品を購入する場合と同じように、インフルエンサーと長期契約を結ぶことによって、まとまった数のスポンサードコンテンツの作成を依頼できるので、ブランドは初期費用を大幅に節約できます。多くのインフルエンサーは、複数のスポンサードコンテンツの投稿を割引価格でブランドに提案しています。
このように、インフルエンサーとの長期契約は、キャンペーンの費用を抑え、成果を最大限に高める上で非常に大きな意味を持ちます。
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まとめ
今回は、インフルエンサーマーケティングのROIを改善するためにやるべき8つのことを紹介しました。
インフルエンサーマーケティングを活用すれば、適切なオーディエンスにリーチして、最終的に売上を伸ばすためのチャンスが生まれます。インフルエンサーマーケティングのROIを改善するためには、ターゲットとなるオーディエンスの特性を理解し、オーディエンスの興味を惹くコンテンツを作成できるインフルエンサーを探すことが大切です。
すでにインフルエンサーが見つかっている場合は、今回紹介したポイントを戦略に組み込むことによってROIの改善が期待できるでしょう。これからインフルエンサーを探す段階のブランドは、インフルエンサーマーケティングプラットフォームを活用すれば、ジャンルやフォロワー数などで希望のインフルエンサーを簡単に絞り込むことができます。
参考:https://influencermarketinghub.com/improve-influencer-marketing-roi/
https://www.chiefmarketer.com/4-influencer-marketing-musts-to-improve-roi/