Beats by Dre 社にとってインフルエンサーマーケティングとは?

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電子機器メーカーの「Beats By Dre 社」は、「Beats」というブランド名のスタイリッシュなヘッドフォンと、有名アスリートのスポンサーシップを行っていることでよく知られています。 Beats ブランドのヘッドフォンは、Bose など複数の大手競合他社が存在するアメリカの市場において、国内の約半分のワイヤレスヘッドフォンのシェアを獲得しています。

Beats By Dre 社は、クリエイティブな音楽と動画を用いたインフルエンサーマーケティングキャンペーンを度々実施し、毎回大きな話題を呼んでいます。

今回は Beats by Dre 社がインフルエンサーマーケティングにどのように取り組んでいるのか、そして、Beats by Dre 社が実施したインフルエンサーマーケティングの事例を2つご紹介します。

・Above The Noise キャンペーン
・The Game Starts Here キャンペーン

 

目次

    1. Beats by Dre 社とインフルエンサーマーケティング
    2. Above The Noise キャンペーン
    3. The Game Starts Here キャンペーン
    4. まとめ

Beats by Dre 社とインフルエンサーマーケティング

Beats by Dre 社は、世の中が変化するスピードについていく上で様々なインフルエンサーとタイアップすることが非常に重要だと考えています。

最高マーケティング責任者の Omar Johnson さんは、2015年に開催された米国の広告・マーケティング誌である「アドエイジ」が主催するデジタルカンファレンスで、インフルエンサーマーケティングについて次のように話しました。

「私たちにとって「カルチャー」とは、スポーツ、音楽、ファッション、アート、そしてエンターテイメントです。主に16歳~24歳の年齢層で構成されている私たちのターゲットオーディエンスは、それらのカルチャーに大きな関心と情熱を持っています。」

Beats by Dre 社は、バスケットボールプレイヤーの LeBron James さん、歌手の Nicki Minaj さんなどの有名人とのタイアップで知られていますが、これから有名になる可能性があるインフルエンサーとも定期的にタイアップしています。

Beats by Dre 社のマーケティング戦略において、インフルエンサーとのタイアップは重要な役割を果たしています。 Omar Johnson さんは、「私たちは消費者リサーチをあまり行いません。」と話しました。 「私たちはインフルエンサーと共に多くの時間を過ごし、彼らは私たちのブランドとのタイアップに注力してくれています。私たちのインフルエンサーは、若手のアスリート、アーティスト、ブロガーなど様々です。彼らの声を聴き、タイアップする方法を見つけています。」

Beats by Dre 社のインフルエンサーとの関わり方は、これまで企業が行ってきた「ブランドアンバサダー」とは異なります。単に商品をプロモーションしてもらうだけでなく、インフルエンサーのグループから商品についてのフィードバックをもらっています。

Omar Johnson さんは次のように話しました。 「インフルエンサーからの意見は様々です。私たちの商品に欠けているもの、商品に期待すること、マーケティングの方法、マーケティングを行う上で伝えるべきメッセージ、他のブランドの好きではない部分など、とても貴重な意見ばかりです。私たちはインフルエンサーの声を全て聞いています。」

このプロセスはあまり体系化されておらず、様々な意見が上がってくることで混沌とした状態になるのではないか、という懸念もありますが、複数のインフルエンサーから同じ意見が上がってきた場合、ブランドがそれを聴くことができるのは非常に大きなメリットになります。

「これはとても自然なプロセスで、平等です。フィードバックの水準はありません。私たちは意見を全て聴いています。不思議な事を言っていると思われるかもしれませんが、インフルエンサーから上がった意見と同じような意見が他の場所から上がってくる可能性は高いのです。」

以上が、2015年に開催されたデジタルカンファレンスで Omar Johnson さんが語った内容です。

Beats by Dre 社にとってインフルエンサーは単なる「ブランドアンバサダー」ではなく、マーケティングチームの一員と言えます。 商品のネガティブチェックからプロモーションまでの一連のマーケティング活動に携わり、ブランドを盛り上げてくれるインフルエンサーとのタイアップは、今後も Beats by Dre 社のマーケティング戦略の核であり続けるでしょう。

次に、Beats by Dre 社が行ったインフルエンサーマーケティングの事例を2つご紹介します。

Above The Noise キャンペーン

多くの人々がストレスや不安、緊張を抱えて生きる現代に、Beats by Dre 社はある重要なメッセージを投げかけました。

「noise(騒音)の上にたどり着いた時、初めて自分にとって本当に大切な事に向き合えるようになる」

「Above The Noise」は Beats By Dre 社が行ったキャンペーンの一つです。 「Above The Noise(騒音の上)」というテーマのもと、騒音をかき消す「ノイズキャンセリング」という機能を持ったヘッドフォンを、「騒音 = ケガなどの様々な困難」と戦うトップアスリートとタイアップしてプロモーションしました。

Above The Noise キャンペーンの一環として、Beats By Dre 社は、2018年の平昌オリンピックの前後に7人のインフルエンサーとタイアップしました。タイアップした全てのアスリートが2018年平昌オリンピックに出場しています。 それぞれのインフルエンサーが1~4つのコンテンツを Instagram に投稿しました。 投稿したコンテンツには #AboveTheNoise のハッシュタグが付けられました。

2018年平昌オリンピックに出場したアメリカのアスリートの中で最も有名な人物の1人と言えるスキーヤーの Lindsey Vonn さんは、Beats By Dre 社とタイアップした2つのコンテンツを投稿しました。 コンテンツでは、大きなケガを乗り越えて練習に打ち込んでいる Lindsey Vonn さんの姿が、洗練された音楽と映像で見事に表現されています。 動画の中で Lindsey Vonn さんは Beats ブランドのヘッドフォンを着用しています。

Lindsey Vonn さんが Instagram に投稿した動画はこれまでに20万回以上再生されています。

この動画により、Beats By Dre 社は Beats ブランドのヘッドフォンを Lindsey Vonn さんが日々のトレーニングを実施する上で重要なものだという位置づけを効果的に行い、キャンペーンで統一されたハッシュタグである #Above The Noise を、Lindsey Vonn さんが「noise(騒音)= 困難」を一心不乱に乗り越えていく姿勢と関連づけました。

冬季オリンピックの選手の中で最も認められている人物のうちの1人である Lindsey Vonn さんとのタイアップにより、Beats By Dre 社は Lindsey Vonn さんの「クールな面」を捉え、自社のヘッドフォンをトップアスリートが愛用する商品として印象付けました。

困難を乗り越えようとするアスリートの姿勢は、日々の生活で様々な「noise(騒音)」に直面しているオーディエンスの心を掴み、Beats ブランドを効果的にプロモーションすることに成功しました。

The Game Starts Here キャンペーン

アメリカでラグビーは比較的「ニッチ」なスポーツと言われています。Beats by Dre 社は、あえて「ニッチ」と呼ばれるラグビーのワールドカップでインフルエンサーマーケティングを展開しました。

Beats by Dre 社の最高マーケティング責任者である Omar Johnson さんは、ラグビーワールドカップに焦点を当てたキャンペーンを実施することによって、ラグビーを世界的に知名度のある「カルチャー」にしたいと考えました。

「The Game Starts Here」と名付けられたこの動画キャンペーンで、Beats by Dre 社は、ラグビーワールドカップに出場したイギリス、ニュージーランド、フランスのスター選手とタイアップしました。

動画に登場する29歳の Chris Robshaw さんは、イギリスのナショナルチームのキャプテンです。彼はチームのリーダーとして様々な困難に直面します。国内の試合では連勝を重ねていましたが、ワールドカップで勝ったのは2003年が最後でした。

Chris Robshaw さんがイギリスのラグビーチームのキャプテンとしての責任と、周囲からのプレッシャーと戦う姿が表現された3分間の動画はまるで映画のように美しい仕上がりになっています。 この動画は The Game Starts Here キャンペーンで制作された3本のうちの1本で、これまでに765万回以上再生されています。

220万人のラグビーファンを抱える Instagram のページにも、ラグビーのスター選手たちが Beats by Dre 社のヘッドフォンを着用した写真と、キャンペーンで制作された3本の動画のショートバージョンが公開されました。

Omar Johnson さんは、「ラグビーは Beats by Dre 社に新しいオーディエンスとの接点を与えてくれた」と話しました。

「ラグビーについて知ることは Beats by Dre 社にとって素晴らしい経験となりました。そして、ラグビーに関われば関わるほど、私たちはラグビーのために何かをしなければならないと感じました。」

「私たちはサッカーワールドカップでも広告キャンペーンを実施して結果も出しましたが、サッカーは多くのブランドが参入しているので、私たちもその中で広告キャンペーンを展開した数多くのブランドの一つに過ぎませんでした。その点、ラグビーではより目立つ存在になることができます。」

「ラグビーとタイアップすることで、ラグビーファンと選手たちのユニークな物語を伝え、ラグビーを幅広く知ってもらうチャンスを作り出すことができました。そして、ラグビーファンが、私たち Beats by Dre 社が偽りのない声を届けていると感じ、Beats ブランドのヘッドフォンを使ってみようと思ってもらえることができたら、私たちは全く新しい客層へリーチできたことになります。Beats ブランドとラグビーが共に話題になれば、私にとってこの上ない喜びです。」

まとめ

Beats by Dre 社のインフルエンサーとのタイアップは、商品やブランドをプロモーションするだけの従来の「ブランドアンバサダー」とは全く異なります。 インフルエンサーをマーケティングチームの一員として受け入れ、一消費者でもある彼らの声を聴くことで効果的かつ魅力的なマーケティングキャンペーンを展開することに成功しています。

また、今回は Beats by Dre 社が行ったキャンペーンの事例を2つ紹介しました。

・Above The Noise キャンペーン

困難に向き合うトップアスリートとタイアップし、クールな音楽と動画を用いて Beats ブランドのノイズキャンセリングヘッドフォンをプロモーションしました。

・The Game Starts Here キャンペーン

アメリカでは比較的ニッチと言われているラグビーのワールドカップでキャンペーンを展開し、ラグビーファンという新たなオーディエンス層へのリーチに成功しました。

Beats by Dre 社のマーケティング戦略からは、ターゲットとしているオーディエンス層と親和性が高い音楽やスポーツ、アートなどの「カルチャー」そのものを盛り上げていこうという姿勢が伝わってきます。それが結果的に商品の売上に繋がる新しい形の Win-Win と言えるでしょう。

Beats by Dre 社のマーケティング戦略において、インフルエンサーはブランドが伝えたいメッセージをコンテンツという形で分かりやすくオーディエンスに伝える重要な役割を果たしています。

 

参考:https://www.warc.com/newsandopinion/news/influencers_are_key_for_beats_by_dre/35188 https://www.marketingweek.com/2015/09/18/rugby-is-niche-but-we-can-bridge-it-into-broader-culture-says-beats-marketing-boss/ http://www.eartotheground.org/casestudy/Above The Noise/ https://www.thedrum.com/creative-works/project/johnxhannes-beats-dre-above-the-noise http://mediakix.com/2018/03/olympics-advertising-instagram-influencers-athletes/ http://lighthouseinsights.in/beats-by-dre-The Game Starts Here.html/

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