美容業界のインフルエンサーマーケティングリーダーL’Oréal社(ロレアル)の戦略

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フランスに本社を構えるL’Oréal(ロレアル)は、美容業界を代表する老舗ブランドです。ロレアル社はブランドコミュニケーションやマーケティング戦略の一環として、早い時期からインフルエンサーマーケティングを含むデジタルマーケティングに取り組んできました。

現在、ロレアル社は150ヶ国でインフルエンサーマーケティングを展開し、リーチが可能なフォロワー数は総計2億5,000万人以上にも上ります。美容インフルエンサーと長期契約を結び、インフルエンサーマーケティングの予算のうち90%をインスタグラム上でのプロモーションに割り当てて、グローバルなインフルエンサーマーケティングを上手にコントロールしています。

今回は、美容業界のインフルエンサーマーケティングを牽引するロレアル社のインフルエンサーマーケティング戦略について、

・ロレアル社が美容インフルエンサーとタイアップする理由
・ロレアル社がインフルエンサーマーケティングで大切にしていること
・グローバルにインフルエンサーマーケティングを展開する方法
・インフルエンサーマーケティング詐欺を防ぐ方法

こちらの内容を紹介します。

目次

  1. ロレアル社が美容インフルエンサーとタイアップする理由
  2. ロレアル社がインフルエンサーマーケティングで大切にしてること
  3. グローバルにインフルエンサーマーケティングを展開する方法
  4. インフルエンサーマーケティング詐欺を防ぐ方法
  5. まとめ


  6. ロレアル社が美容インフルエンサーとタイアップする理由

    ロレアル社は、2016年9月に動画ブロガーとブロガーで構成された「ビューティ・スクワッド」というインフルエンサーマーケティングチームと長期契約を結び、プロモーションを展開し始めました。

    ビューティ・スクワッドのメンバーは、YouTubeに635万人の視聴者、インスタグラムに500万人のフォロワーという巨大なファン層を持っています。

    ビューティ・スクワッドのメンバーはいずれも美容業界では有名な人物で、ロレアル社が持つ「ヘアケア」「スキンケア」「メイクアップ」の分野の専門家でもあります。

    ロレアル社がインフルエンサーマーケティングを始めた背景

    ロレアルUKのゼネラルマネージャーであるAdrien Koskasさんは、英国のマーケティング雑誌およびWebサイト「Marketing Week」の取材に対して、インフルエンサーマーケティングを始めた背景について次のように話しました。

    Q. インフルエンサーマーケティングを始めた背景について教えてください。

    A. ロレアルにとってインフルエンサーを採用する動きはとても自然なことでした。なぜなら、消費者と企業が交流する方法は以前とはかなり変わっており、現在はソーシャルメディアで繋がることが多くなっているからです。

    当社はインフルエンサーと特別なパートナーシップを築きたいと考えており、企業について語り、新製品開発やハウツー、メイクのヒントといった上質なコンテンツを制作してもらうために彼らを起用しました。

    消費者はオンライン上でこういったコンテンツを探すので、インフルエンサーマーケティングを通じてコンテンツを供給する企業になりたいと考えました。

    起用したインフルエンサー達は根っからの美容マニアですからね。彼らは異なる企業の多くの製品をレビューしているので、とても健全な関係が築けます。彼らは製品を異なる方向から考えさせてくれるため、その声は企業にとって非常に重要です。

    Q. なぜインフルエンサーマーケティングが効果的だと考えたのですか?

    ロレアルは、セレブや『美容のご意見番』として世間に広く名前が知られている人物を起用したキャンペーンを展開する企業として有名でしたが、インフルエンサーは全く異なる価値を与えてくれます。インフルエンサーは消費者の代表なのです。

    インフルエンサーからは商品に対する『生きた声』を得ることができます。ビューティースクワットのメンバーは、ロレアル社が商品開発を行うラボを訪れるという役割も担っています。開発段階から消費者の代表であるインフルエンサーに関わってもらうことはブランドにとって非常に有益と言えます。また、インフルエンサーのブランドロイヤリティーを高めることにも繋がります。

    Koskasさんの話から、ロレアル社はインフルエンサーと「セレブ」の違いを理解し、積極的にマーケティング戦略に関わってもらっていることが分かります。

    ロレアル社とタイアップしたインフルエンサーたちは、商品に関する率直な意見をソーシャルメディアの投稿のキャプションで紹介しています。

    単なる「ブランドの広告塔」とは異なるインフルエンサーマーケティングの価値を理解し、積極的に自社のマーケティング戦略に関わってもらうとするロレアル社の姿勢は美容業界に大きな影響を与えています。



    ロレアル社がインフルエンサーマーケティングで大切にしてること

    Adrien Koskasさんは、英国のマーケティング雑誌およびWebサイトであるMarketing Weekの取材に対し、インフルエンサーマーケティングにおいてロレアル社が大切にしていることについて語りました。

    ◆長期契約

    「当社はコンテンツの投稿毎に支払いをする短期的なインフルエンサーとの契約関係は望んでいません。ロレアルUKの私がロレアルパリの広報担当者と仕事をするのと同じ関係です。

    インフルエンサーとのパートナーシップは長く継続中です。これまでかなりの期間、彼らと仕事をしてきましたが、この関係性をより表向きにしたいと考えました。インフルエンサーは当社に問題提起し、同じ目線で働くインタラクティブな関係だと考えています。

    長期的な人間関係を築くことで、お互いに信頼を得られます。たまにソーシャルメディアを見ていると「この企業、インフルエンサーにこんなことを強制するなんて」と思うことがあります。当社は、新製品の発売やイベントの度にインフルエンサーを次々と変えるような企業にはなりたくありません。」

    ブランドにとって大切なことは、インフルエンサーと長期契約を結び、ビジネスパートナーとしての関係性を築いていくことです。一度インフルエンサーと信頼関係ができると、長期に渡ってブランドをプロモーションしてくれるのでブランディング効果が非常に高くなります。

    ◆消費者が「インフルエンサー疲れ」を起こさないようにする

    「誠実さと信頼性のある関係と、インフルエンサーが企業や製品に心からの愛があることが、消費者に『インフルエンサー疲れ』を起こさせないと私は考えています。

    企業に雇われているだけで一回限りの仕事をしているようなインフルエンサーの場合、消費者は早々に立ち去ってしまいます。それとは異なる種類の関係を築けるかどうかは、イギリス最大の美容ブランドである当社次第です。インフルエンサーに関して言うと、『美容業界をより信頼できるものに変えたい』と考えている人が理想的です。」

    ロレアル社のように、インフルエンサーをブランドの広告塔として活用するのではなく、マーケティングチームの一員として迎え入れ、製品戦略から一緒に考えているブランドは数多くあります。それにより、インフルエンサーのブランドに対するロイヤリティーが高まり、コンテンツにもブランドに対する愛情が表れるようになります。結果的にインフルエンサーが発信するコンテンツは魅力的なものとなり、消費者が「インフルエンサー疲れ」を起こしにくくなるのです。

    ◆インフルエンサー自身が独立性を維持できるようにする

    「当社からはどのような点においても独占権は要求していません。編集やプロデュース、発言に関してもインフルエンサー達は完全に自由です。当社は発言や投稿、他企業を除名することに強制や圧力を与えていませんし、他企業に関するコメントも自由なので、彼らは編集上の自由な視点を保っています。」

    ロレアル社がインフルエンサーに独占権を要求せず、自由な発言を許している点も大きなポイントです。インフルエンサーマーケティングはインフルエンサーとフォロワーの信頼関係を活用したマーケティング手法なので、フォロワーが「インフルエンサーは常に本音で発言している」と感じられるようにすることは非常に大切です。

    美容業界のインフルエンサーマーケティングを牽引するロレアル社のインフルエンサーとの関わり方は、美容業界だけではなく他業種のインフルエンサーマーケティングにも多いに参考になります。



    グローバルにインフルエンサーマーケティングを展開する方法

    ロレアルグループは34にも及ぶ自社ブランドを150ヶ国で展開しています。全世界で総計2億5千万人にも及ぶ、文化も流行も異なるフォロワーに対して、ロレアル社はインフルエンサーマーケティングをどのように展開しているのでしょうか。

    米国インフルエンサーマーケティング「Traackr社」は、ロレアルグループのソーシャルメディアパフォーマンスディレクターであるMarc Duquesnoyさんに話を聞きました。

    Q. グローバルブランドのインフルエンサーマーケティングは容易ではないと思います。どのようにコントロールしているのですか?

    A. それぞれの役割は正確かつ実行可能な方法で割り当てられています。インターナショナルマーケティングディレクションチームは各ブランドのイメージを固め、各地域のマーケティングチームがフォローするべきガイドラインとルールを設定します。 また、同チームはグローバルに活躍するインフルエンサーのマネージメントも担当しています。

    一方、ブランドの目的と基準によっては、ブランド・インフルエンサー・インフルエンサーが持つフォロワーの三者の関係性を構築することをローカルチームに任せています。その例を2つ紹介します。

    ◆NYXによるコンテスト「Face Awards」

    メイクアップブランドNYXは、「Face Awards」と呼ばれるコンテストを開催しました。3年間に渡ってアマチュアとプロの両方が決められたテーマに沿ったメイクアップをYouTubeやインスタグラムに公開しています。審査はロレアル社の社員とローカルインフルエンサーが務め、その中から世界大会に進む候補者を決定します。

    ◆ ポップアップショップ「YSL(イヴ・サンローラン) Beauty Club」

    「YSL Beauty Club」は、世界中を回るオンラインブティックやポップアップのナイトクラブなどのポップアップショップイベントです。グローバルチームがイニシアティブを取り、イベントの舞台裏の様子などは主にローカルチームがインスタグラムに投稿します。

    このように、ロレアル社の「グローバルチーム」と「ローカルチーム」はコンスタントに連携を取っています。

    Q. 予算やブランドメッセージはどのようにコントロールしていますか?

    A. ロレアルには、各ブランドのイメージを厳格に定めて管理する文化はありません。ただし、創造性だけに任せて仕事をしている訳でもありません。各ブランドは仕事のやり方と、インフルエンサーマーケティングをサポートするためのコンテンツを明確にしています。

    一握りのグローバルブランドを除いて、各ブランドはローカルガバナンスを構築する努力を重ねています。ローカルチームは、自らが関わっているインフルエンサーについての細かい知識と、彼らが持つ特定のエリアにおける潜在的な影響力を活用する方法を開発しなければなりません。

    インフルエンサーの活動領域を把握することによって、インフルエンサーたちが同じエリアでバッティングすることを防ぎ、一部のフォロワーに対して複数のインフルエンサーが必要以上のメッセージを発信することを回避することができます。メッセージを発信し過ぎるとインパクトがなくなり、割り当てられた予算のコントロールも難しくなります。

    そんな時に役に立つのが Traackrなどのインフルエンサーマーケティングプラットフォームです。インフルエンサーマーケティングプラットフォームを活用すれば、ローカルチームのインフルエンサーマーケティングの状況を把握し、非常に魅力的なインフルエンサーのプロフィールを提供し、予算管理ができます。このようなマネージメントは必須です。インフルエンサーマーケティングプラットフォームを活用することによって活動を予測・管理し、各国のROIを測定することができます。



    インフルエンサーマーケティング詐欺を防ぐ方法

    インフルエンサーマーケティングの広がりと共に問題になっているのが、「いいね!」をお金で買ったり、botでフォロワー数を多く見せかけるなどの「インフルエンサー詐欺」と呼ばれる行為です。

    美容業界のインフルエンサーマーケティングを牽引しているロレアル社は、数多くのインフルエンサーとタイアップする上で問題が起きないように次のような手順でチェックを実施しています。

    Step 1: 「ニセモノ」を排除する

    まだ名前が知られていないインフルエンサーを見つけるには、オンライン上で美容業界のブランド名を挙げている人や、スキンケアの話をしている人を見つけるという方法があります。

    「そして、候補となるインフルエンサーが見つかったら最初のチェックを行います。」と、チーフデジタルオフィサーのCedric Dordainさんは話します。「その際に、怪しいインフルエンサーをピックアップしてくれるツールはとても役に立ちます。」

    怪しいインフルエンサーは比較的容易に見つけられます。「ある一定の時期にフォロワーが急激に増えている」「海外からのフォロワーが目立って多い」という2つのポイントはインフルエンサー詐欺でよく認められるケースです。

    最初のチェックで怪しいインフルエンサーのうちの80%は排除することができます。

    Step 2: ガイドに従う

    残り20%のインフルエンサーをチェックには、各ブランドのソーシャルメディア部門に用意されているインフルエンサーを選ぶためのルールブックを使います。

    ルールブックに沿ってチェックする内容は、「インフルエンサーがこれまでどのようなブランドと一緒に仕事をしてきたか」「その際にどのようなコンテンツを投稿したか」「コンテンツはどのような見た目か」などです。

    これらのチェックに加えて、候補として残っているインフルエンサーに対してサンプリングキャンペーンを実施します。サンプリングキャンペーンとは、インフルエンサーがソーシャルメディアのアカウントで自主的に商品を紹介してくれることを期待して商品サンプルを贈ることを意味します。

    ロレアル社は、契約を結ぶ前であっても、タイアップを考えているインフルエンサーに対しては契約後と同じレベルのコンテンツを求めます。

    Step 3: バックグラウンドチェック

    ロレアル社では、いかなる契約を結ぶ前にも第三者機関にインフルエンサーのバックグラウンドの調査を依頼します。

    Dordainさんは、「私たちはインフルエンサーのこれまでの活躍について、インスタグラムだけではなく、ウェブサイト、ブログなど、あらゆるメディアでどのような投稿をしてきたのかを知りたいのです。」

    「ブランドを守るために、ヌード写真など問題があるコンテンツが投稿されていないかどうかを慎重にチェックする必要があります。」

    このように、美容業界のインフルエンサーマーケティングリーダーは、インフルエンサーマーケティングプラットフォームや第三者機関をうまく活用してインフルエンサーマーケティングを実施しています。


    まとめ

    今回は、美容業界のインフルエンサーマーケティングを牽引するロレアル社のインフルエンサーマーケティング戦略を紹介しました。

    ロレアル社のインフルエンサーマーケティング戦略からは学ぶべきことがたくさんあります。特に、インフルエンサーとの関わり方とインフルエンサー詐欺を防ぐ方法はインフルエンサーマーケティングを展開しているブランドにとって非常に参考になります。

    グローバルに事業を展開しているブランドにとっては、ロレアル社が複数の国で行われているインフルエンサーマーケティングのマネージメント術は良い手本になるでしょう。

    参考:https://www.marketingweek.com/2016/09/16/loreal-on-why-other-brands-are-using-influencers-the-wrong-way/
    https://www.traackr.com/blog/how-loreal-scales-its-strategic-vision-of-influencer-marketing-around-the-world
    https://www.thedrum.com/news/2018/09/13/l-oreal-doing-background-checks-part-new-influencer-vetting-process
    http://www.blogs2017.buprojects.uk/charlottekegg/2018/01/09/loreal-beauty-squad/

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