現在、Instagram で「お掃除インフルエンサー」が新しいトレンドになっています。
人気のお掃除インフルエンサーは数千人以上のフォロワーを抱え、きれいに整頓された自宅や、オーブンを掃除している様子を Instagram にアップしています。ファッションインフルエンサーが流行の着こなしやメイクの方法をアップするのと同じように、お掃除インフルエンサーはお気に入りの掃除道具を紹介し、具体的な使い方をフォロワーに説明しています。
アメリカでは片付けコンサルタントの近藤麻理恵さんの片付けメソッドが人気で、「片付けをする」を意味する「konmari」という動詞が新たに生まれる程のブームになっています。家の掃除や整理整頓は、心の健康にもつながります。お掃除インフルエンサーは、家を清潔に保つための様々な情報を発信してフォロワーの日々の生活をサポートしています。
今回は、Instagram で活躍する3名のお掃除インフルエンサーを紹介します。
・Sophie Hinchcliffe さん (@mrshinchhome)
・Lynsey Crombie (@lynsey_queenofclean) さん
・Melissa Maker さん (@cleanmyspace)
目次
- Sophie Hinchcliffe さん (@mrshinchhome)
- Lynsey Crombie (@lynsey_queenofclean) さん
- Melissa Maker さん (@cleanmyspace)
- お掃除インフルエンサーが議論を呼ぶ?
- まとめ
Sophie Hinchcliffe さん (@mrshinchhome)
Sophie Hinchcliffe さんは、Instagram に120万人のフォロワーを抱える最大規模のお掃除インフルエンサーです。Hinchcliffe さんの名前から「hinching」という言葉が生まれ、フォロワーは hinching を「掃除する」という意味の言葉として使います。
そして、日用品を買いに行くことを「hinch hauls」と呼び、彼女のフォロワーは、新しく購入した掃除用具や、掃除が終わってきれいに整った自分たちの家の様子を #hincharmy というハッシュタグを付けて Instagram に投稿しています。Sophie Hinchcliffe さんのファンの一人は、美しく整えられた自宅のキッチンカウンターに掃除用具が置かれている写真を投稿し、キャプションに「hinching は病みつきになります。」 と書き込みました。
フォロワーは、自分の憧れのライフスタイルを実現しているインフルエンサーを探し出して Instagram でフォローしています。掃除や整理整頓という日常生活に密着した情報を発信し、きれいに整えられた家で楽しく生活しているお掃除インフルエンサーのライフスタイルは、フォロワーにとって身近で真似しやすいのが魅力と言えます。
Lynsey Crombie (@lynsey_queenofclean) さん
トレンドフォーキャスター(トレンドを予測する仕事をする人)でデザイナーの Geraldine Wharry さんは、人々の健康への関心の高まりがお掃除インフルエンサーの流行に繋がっているのではないかと考えています。
人気のお掃除インフルエンサーである Lynsey Crombie さんも、Geraldine Wharry さんの意見に賛成しています。「人々は掃除が好きではありません。でも、インフルエンサーがその常識を変えつつあります。私たちは、掃除は楽しいものだということを伝えようとしています。きれいな場所は「幸せな場所」です。家をきれいに保つことは精神衛生上、とても大切なことです。」
イギリスのピーターバラに住み、3人の子供を育てる Lynsey Crombie さんは、イギリスのお掃除番組「Obsessive Compulsive Cleaners」の出演者でした。この TV 番組は、掃除の達人が視聴者の汚れた家を掃除しに行くというものでした。この番組をきっかけに、Lynsey Crombie さんの名前が知れ渡りました。
彼女は、「私は当時、雑誌を発行していました。その時に TV 番組から連絡をもらい、雑誌の広告を出すことを提案されました。その後の流れは皆さんが知っている通りです。私はお掃除隊の一員になるためのオーディションを受けました。 私は自分のことを「お掃除マニア」だとは思っていませんでしたが、このチャンスを生かそうと思いました。」と話しました。
TV 番組を通じて新しくできた友人が彼女のためにエプロンを作り、そこに書かれていた「The Queen of Clean(掃除の女王)」という言葉が彼女のニックネームとして定着しました。
Lynsey Crombie さんは現在、自らが立ち上げた清掃会社を経営し、通販番組にも出演していますが、多くの時間を Instagram へのコンテンツ投稿に充てています。彼女は午前7時までに、多い日で50個程度の Instagram ストーリーを投稿しています。そして、フォロワーから毎日届く800個程度の質問にできる限り回答しています。Lynsey Crombie さんは、「私は「お掃除の教祖」のようですね。」と笑います。
彼女は元々、自分の子供が Instagram にアカウントを開設したのをきっかけに、気まぐれで彼女自身の Instagram アカウントを作りました。彼女は、「Instagram は今では重要なビジネスのツールですが、始めたのはほんの些細なきっかけからです。これはもう運命ですね。」と言います。Lynsey Crombie さんの初めてのスポンサーコンテンツのインセンティブは500ポンド(約72000円 / 1ポンド144円計算)でした。現在では、インセンティブは1コンテンツにつき1000ポンド(約144000円)になっています。
「私が初めてブランドとのタイアップを獲得した時、私も主人もそれを信じることができませんでした。」と語る Lynsey Crombie さんは、元々は「掃除が好きな普通の女性」でした。そんな彼女が TV 番組をきっかけに有名になり、Instagram でインフルエンサーとして成功している姿に勇気づけられているフォロワーは多いでしょう。
Melissa Maker さん (@cleanmyspace)
カナダ人のお掃除インフルエンサーである Melissa Maker さんは、29歳の時に初めて YouTube に「お掃除動画」をアップしました。 動画には時々、ご主人の Chad さんも登場します。彼女はすでにトロントを拠点とした清掃会社を経営していて、彼女の会社と同じ名前の「Clean My Space」という YouTube チャンネルを、会社をプロモーションするのに活用できると考えました。
掃除の楽しさを人々に伝えたい、と考えているお掃除インフルエンサーの Lynsey Crombie さんとは対照的に、Melissa Maker さんは自身が「大の掃除嫌い」であることを認めています。彼女は、「私は片付けができない子供だったので、私の母は未だに私が掃除に関する仕事をしていることが信じられないようです。」と話しました。
Melissa Maker さんは当時勤めていた銀行を辞め、信頼できる会社が少ない清掃業界の現状に可能性を見出し、自ら会社を立ち上げました。「私は、水着やアクセサリーのデザイナーなど、何か楽しいことをしたいと思っていました。でも、何の因果か分かりませんが私は掃除に関わる仕事をすることになりました。」
それから7年が経ち、彼女の YouTube チャンネルの登録者数は100万人以上、Instagram のフォロワー数は7万人を超えています。その他にも本の出版やオリジナルの掃除グッツの販売などを行い、幅広く活躍しています。
インフルエンサーは自分の好きなことについての情報を発信するのが一般的ですが、Melissa Maker さんのように掃除が嫌いだからこそ発信できる情報もあります。彼女は YouTube や Instagram を通してフォロワーに役立つ情報を発信してインフルエンサーとしての地位を築き、自身のビジネスに上手く繋げています。
お掃除インフルエンサーが議論を呼ぶ?
お掃除インフルエンサーの活躍がトレンドになっている一方、自らが家を掃除する様子を撮影し、掃除のすばらしさを伝えている彼女たちのコンテンツが議論を呼んでいます。
イギリスの無料日刊紙「Metro」のジャーナリストである Rebecca Reid さんは、お掃除インフルエンサーについて次のような記事を書きました。「世界では、男性よりも女性の方が家事をする時間が長くなる傾向がありますが、そのほとんどが無給です。掃除、子供の世話、料理は金銭を生み出さず、それが当たり前のようになっているのです。そして、家事が女性の仕事であると思われています。彼女たち(お掃除インフルエンサー)がコンテンツを投稿し、それを多くのフォロワーが目にすることを、私はあまり良く思っていません。まるで1950年代のようです。」
経済協力開発機構のデータによると、女性が料理や掃除などの「無給の労働」に費やす時間は1日平均4.5時間で、男性が家事をする時間はその半分です。
お掃除インフルエンサーの Lynsey Crombie さんは、家事は夫婦で分担するべきものだと考えていますが、「家事はつまらないもので、Instagram 上で称賛されるべきではない」という Rebecca Reid さんの意見には疑問を持っています。
Lynsey Crombie さんは「Good Morning Britain」というイギリスの TV 番組で、Rebecca Reid さんとこのトピックについて議論を交わしました。Lynsey Crombie さんは、「私たちの活躍は女性を勇気づけています。お掃除インフルエンサーは会社を経営するモダンで成功した女性であり、家族のために家を清潔に保っています。」と話しました。
Lynsey Crombie さんの家庭では、ご主人が家の外と車をメンテナンスし、子供たちは自分のベットルームを清掃するなど、家事を分担しています。「家事はマルチタスクですが、家族と協力して分担できます。1950年代は、それを女性がすべて一人で行っていました。」
お掃除インフルエンサーの Melissa Maker さんは、家事と女性の結びつきに気づき、特に彼女の YouTube チャンネルに登録している男性の割合は全体の25%であることが分かってからは、「自分のオーディエンスは女性である」という前提が男性を遠ざけてしまっているのではないかと考えました。
「そのことに気づいてからは、動画の中で「妻」や「彼女」の代わりに、「配偶者」や「パートナー」という言葉を使うことを心掛けています。私と主人は、年齢、性別、経済状況に関わらず、すべての人に私たちのコンテンツを楽しんでもらい、何かを学んでもらいたいと考えています。」
お掃除インフルエンサーの仕事は掃除の仕方を伝えるだけではありません。家族と共に家事に取り組むコンテンツを投稿することで、多くのフォロワーに家事に対する新しい価値観も共有しています。
まとめ
今回は、Instagram で活躍する3名のお掃除インフルエンサーを紹介しました。彼女たちは元々、普通の女性でしたが、今では家族との日常生活を楽しみながらビジネスで大成功しています。そして、掃除や整理整頓を通して、家事に対する世間の考え方にも影響を与えています。
インフルエンサーは時代の流れを反映しています。心身ともに健康的な毎日を過ごしたいと多くの人が願っている今、お掃除インフルエンサーの活躍の舞台は益々広がっていくでしょう。
参考:https://broadly.vice.com/en_us/article/8xpkeg/top-instagram-cleaning-influencers-interview