ブランド同士のコラボレーションは自社にはないアイディアや人脈をシェアでき、より効果的なキャンペーンを展開できるかもしれない。今回は米国の食品ブランド2社が協同インフルエンサーキャンペーンで大きな成功を収めた事例を紹介する。
目次
協同キャンペーン「レッドカーペットは準備OK」とは?
多くのブランドが食料品業界に参入し、またデジタルマーケティングも高度化する一方で市場は混迷を極めている。こうした状況を鑑み、米国でパウチ入りフローズンドリンクを販売する「Daily’s Cocktail社」は広告代理店のRinck Advertisingに戦略を委ねることにした。 Daily’s Cocktail社の要望は21〜54歳の女性をターゲットとし、テレビ番組など従来のコマーシャル、またブロガーを利用したインフルエンサーマーケティングで商品の認知度を高めることだ。
これに対し、Rinck Advertaisingはアボカドディップを手がける「Wholly Guacamole社」との協同キャンペーンを提案した。第85回アカデミーアワード(オスカー賞)にあわせ、Red Carpet Ready(レッドカーペットは準備OK)と名付けられたこの計画は、ブロガーが多様なデジタルチャンネルにアクセスできることに着目し、彼女たちをインフルエンサーとして活用するものだった。企画を打診した150人のブロガーのうち大半の125人が了承するという、非常に良い滑り出しとなっている。
各ブロガーにはキャンペーンに必要となる以下のものが送られた。
-
-
- Wholly Guacamoleの多様な商品
- Daily’s Cocktailの商品購入用ギフトカード(アルコールを使用した食品は郵送できないため)
- パーティー用スナック
- その他両ブランドのプロモーショングッズ
- 巻いたレッドカーペット
-
実施にあたりブログビートと名付けられた専門チームがキャンペーンをわかりやすく、またクリーンなものにするための綱領をまとめている。そのなかで、2社のアイディアをもとに、次のようにキャンペーンは実施されることとなった。
キャンペーン概要
-
-
- ブロガーたちは友人を招き、2社の製品を楽しみながらオスカー賞にノミネートされた映画の鑑賞パーティーを開く。
- ブロガーたちは映画よりも Red Carpet Readyキャンペーンに関するレビューを優先して投稿する。その際できるだけ両ブランドの製品について触れる。
- 投稿には各商品とともにパーティーの様子を写した画像を載せる。
- ブロガーたちは Red Carpet Readyについての画像付きコメントをFacebookやTwitter、Pinterestでシェアしながら、Pinterest上の Red Carpet Readyページを盛り上げる。
- 可能であれば、ブログ上でブロガーたちと同様のRed Carpet Ready パーティーパッケージが一人のユーザーに当たるキャンペーンを開く。
- コンテンツを各SNSにアップする際は#RedCarpetReadyというハッシュタグを使用する。
- オスカー賞当日は両社がホスト役となってTwitter上でブロガーたちを特別ゲストに招いたパーティを開き、ユーザー参加型でセレブの衣装やトークについてコメントを寄せ合う。(ブランド自身もこのようにSNS上で会話に加わることで、ユーザーたちから親しみを得ることが目的)
- SNS上で「ガールズナイトにはどの@dailyscocktailsのドリンクがオススメか #Oscars nominee #JenniferLawrence」というタグをつけた質問を拡散し、もっとも良い回答をしたユーザーに両ブランドの特別パッケージを送る。(このようにタグ付け投稿を広く拡散すれば注目を得やすく、バズを起こしやすい。)
-
キャンペーンの成果:ROIは786%
このキャンペーンは大成功だったと両ブランドの担当者が認めている。ブロガーたちをインフルエンサーとして起用することで、これまでにない高い認知度を効率的に得ることができた。Daily’s Cocktail社はブログコンテンツへの費用から得られた利益として、786%のROIがあったという。この数字にはソーシャル上でのエンゲージメントは含まれていない。
他にも以下のような成果が報告されている。
-
-
- ブロガーたちの投稿は非常に質が高く、様々なソーシャルメディアチャンネルでシェアされた。
- ブログに関するレビューは4,700万件に上った。
- ブロガーたちが各ブログ上で開催したRed Carpet Ready パーティーパッケージをめぐるキャンペーンには15,000人のエントリーがあった。
- オスカー賞当日のTwitterパーティには1,300人のユーザーが参加し、タイムラインには1,400万件の投稿が寄せられた。
- キャンペーン期間中にDaily’s Cocktail社のTwitterフォロワー数は35%増加した。
- 両社は以前より高いSEOを得られるようになった。
- 協同キャンペーンによってコストを削減できたばかりでなく、両ブランド間の新たな協力関係を築くことができた。
-
インフルエンサーの選定基準
今回のキャンペーンの成功は適切なブロガーたちを選定できたところも大きい。その多くはRinckとWholly Guacamole社が以前にもタイアップしたことがあるインフルエンサーだった。その他については、米国インフルエンサーマーケティング事業者GroupHighを通じて、コンテクストやリーチ数をもとに選び出したという。
Rinnk社は適切なブロガーを選ぶ際の基準を以下のように整理している。
-
-
- 興味関心分野やライフスタイル、レビュー作成方法がスポンサーブランドに合っていること。
- 画像を使って視覚に訴えつつ、質の高いブログを作成していること。
- ブログの月間閲覧者数が15,000以上であること(実際には今回のキャンペーンに参加したブロガーたちの月間閲覧者数は平均20,000人だった)
- FacebookやTwitterに5,000〜10,000人のフォロワーがいること。
- ブログ以外のSNSでも能力が発揮できるとアピールしていること。
-
さらに、今回のキャンペーンに選定された125人のブロガーとは別に、Rinck社は質の高いコンテンツを提供するものの、「影響力が比較的小さいブロガー」ともタイアップをしていた。インフルエンサーマーケティングは長期継続的な関係性がベースとなるため、有望なインフルエンサーは早い段階から抱え込んでおいたほうが良いという方針を取っていたためだった。
インフルエンサーとのタイアップに向けたヒント
今回の2ブランドの協同キャンペーンの戦略に加え、ブロガーとタイアップする際のポイントをRinck社は以下のようにまとめている。
-
-
- 選定基準を設け、キャンペーンの打診前によく吟味する。
- ブロガーたちはコンテンツ作成やソーシャル上でのコミュニケーションに多大な時間を費やしているということに敬意を払う。
- ブロガーたちのメンションには大きな価値があることを忘れず、フェアな態度で報酬をおくる。
- ブランドの理念や方針はオープンにし、簡単にダウンロードできるようにしておく。
- 協同することでキャンペーンに付加価値を与えられるようなイベントがないかリサーチする。
- コミュニケーションの機会を欠かさない−これがブロガーたちのブランドへの評価を左右するポイントとなる。
- 自社サイトやSNS上の自社アカウントのなかでも、ブロガーたちのコンテンツをシェアする。
- ユーモアを忘れない。
-
米国の食料品ブランド2社がブロガーたちとインフエンサーマーケティングでタイアップすることで相乗効果的に高いROIを達成した事例を見てきた。食料品に限らず、その他の業界内の協同キャンペーンや他業種間協力など、幅広い応用が期待できる。
参考:Convince & Convert “Co-Campaigning: Two is Better Than One”
http://www.convinceandconvert.com/social-media-case-studies/the-value-of-co-campaigning-two-is-better-than-one/