多くの企業が次々とインフルエンサーとタイアップする昨今、インフルエンサーマーケティングにおける競争はこれまで以上に苛烈になりつつあります。その競争を生き残るためには、ただフォロワーの多いインフルエンサーを起用するだけでは足りず、よりハイレベルな戦略が求められています。
2018年におけるインフルエンサーマーケティングのキーワードは「信頼性」でした。インフルエンサーの知名度よりも、フォロワーが本物と感じられる信ぴょう性の高いコンテンツが重要視されたのです。そして2019年、インフルエンサーマーケティングのトレンドはさらに一歩進み、「クリエイティビティ」を求める時代へと変化しています。今回は、展開される各ブランドのクリエイティブな試みと、クリエイティビティを高める5つの方法についてご紹介します。
目次
オーディエンスが求める物とは
数あるマーケティング戦略の中でも比較的歴史の浅いインフルエンサーマーケティングですが、インフルエンサーを起用したブランドが次々と目覚ましい成果を上げたことで、時代にマッチした有効な手法として今や世界中で受け入れられています。ブランド間における競争も激しくなり、「よりクリエイティブで洗練されたコンテンツ」が求められるようになりました。そのためには、ブランドとインフルエンサーの関係性が柔軟かつクリエイティブであること、そして「人に影響を与えること」とはどういうことなのかを今一度考える必要があります。
情報があふれている現代、オーディエンスは日々目にするありきたりな宣伝や広告に飽きてしまっています。その点、インフルエンサーマーケティングでは誰をフォローし、どんな内容を信頼するか、誰に影響をうけるのかをオーディエンス自ら選択することができます。だからこそ、インフルエンサーを起用したキャンペーンや発信するコンテンツがマーケティング戦略として大きな効果を発揮しているのです。
ブランドとインフルエンサーが協力して商品を作り上げる時代
今やインフルエンサーは、ただブランドのコレクションを宣伝する存在でも、スポンサーパートナーシップとして名前を連ねるだけの存在でもありません。2019年、そして2020年は、インフルエンサーがブランドのマーケティングシナリオをリライトし、ブランドともっと深く関わる時代となりつつあります。さらには、インフルエンサーがブランドのコレクション開発にまで関わるケースも出てきました。
2019年2月、ハイストリート・ファッションブランドのMarks & Spencer社は、イギリスで初めてインフルエンサーがデザインしたフットウェアをリリースしました。同社はファッション界のデジタルマーケティングをリードするブランドとして知られており、インスタグラムの投稿から商品が購入できる、ブランドのコレクションを動画でプレビューできるといった戦略を積極的に取り入れてきました。今回の企画では、7人のファッションインフルエンサーとパートナーシップを結び、夏の新作コレクションを制作。発表されるやいなや大きな話題となり、インフルエンサーの存在の大きさを改めて世間に知らせるきっかけとなりました。
ストーリーの重要性
インフルエンサーマーケティングは、適切なインフルエンサーを選び、タイアップするだけが全てではありません。ソーシャルメディアプラットフォームを舞台に紡がれる彼らのストーリーこそが、インフルエンサーマーケティング成功のカギともいえるのです。
夏コレクションを発表したMarks & Spencer社のケースでも、デザイナーとなったインフルエンサーたちが商品開発におけるストーリーをインスタグラムに投稿するキャンペーンを実施しました。投稿されたコンテンツには、商品の販売も価格表示もなく、画像と共にそれぞれのストーリー、情熱、そしてブランドと自分が手掛けた商品への愛が語られました。この「インフルエンサーたちの真のストーリー」を発信する手段は、マーケティングにおいて非常に有効であることが分かっています。彼らひとりひとりのストーリーがオーディエンスの心を動かし、より大きなインフルエンスを巻き起こすための第一歩として効果を発揮するのです。
事業体として活躍するインフルエンサーたち
コスメティックブランドのGlossier社は、ブランドのファンである一般女性をインフルエンサーとして起用することで、急速な成長を遂げた企業です。タイアップしたインフルエンサーたちは商品の特徴やレビューをコンテンツに掲載するだけでなく、「紹介制度」を通じ事業主としての立場も与えられました。具体的にはインフルエンサーたちの持つネットワークを利用し、より影響力のあるフォロワーやファンに対して商品のディスカウントやインセンティブを提示することで、ブランドと商品の認知拡大を推進したのです。
Glossier社のようなマーケティング戦略を行う場合、重要なのはインフルエンサーたちと戦略のあらすじを共に考え共有することです。ブランドとしての知識をベースに、キャンペーンで何を達成すべきなのかを常に念頭に入れてインフルエンサーと協力することで、目標達成のための方法を構築し、大きな影響力へとつなげることができます。
クリエイティビティを高める5つの方法
以上の実例からも見て取れるように、ブランドにはこれまで以上に創造的で開放的、かつ革新的なアプローチが求められています。イギリスのデジタルマーケティングエージェントであるRockmill社も取り組んでいる「クリエイティビティを高める5つの方法」をぜひチェックしてみてください。
方法1.インフルエンサーと共同でプロデュースする
ブランドで決定したマーケティング戦略をインフルエンサーに一方的に指示するのではなく、戦略を立てる段階からインフルエンサーを巻き込みましょう。彼らの目線を取り入れることでより多角的に戦略を考えることができ、クリエイティブなアプローチを行える可能性が高まります。
方法2.信頼し合えるパートナーシップを形成する
インフルエンサーと長期的で透明性の高い、信頼し合えるパートナーシップを作り上げることも重要です。ブランドとインフルエンサーのより良い関係性は、オーディエンスにも伝わります。支配的だったり独裁的なアプローチは、インフルエンサーが発信するメッセージやコンテンツの魅力を曇らせ、ひいてはオーディエンスを失うことにもつながります。ブランドの目的を実現させるうえでも、インフルエンサーと信頼し合えるパートナーシップを形成しましょう。
方法3.「オーディエンス・ファースト」で考える
インフルエンサーが投稿するだけで、マーケティングが成功する時代はすでに終わりました。オーディエンスに対して何を買うべきか、なぜ買うべきかと一方的に押し付けるアプローチは、今の時代にマッチしていません。それよりもオーディエンス自身を巻き込み、彼らの声を反映させましょう。ブランドのメッセージをオーディエンスと共に発信し、彼らのユニークな表現方法を尊重しましょう。
方法4.オーディエンスへの理解を示す
ブランドがオーディエンスの声に耳を傾けている、彼らを理解しているということを示しましょう。「オーディエンスが何を考え何を求めているのか、自分たちは理解している」という姿勢を見せなければ、彼らもブランドに理解を示すことはありません。幸い、ブランドがターゲットであるオーディエンスと触れ合い、彼らの要求を知る機会は多々あります。オーディエンスへの理解を示すことは、シンプルですが、とても影響力のあるアプローチです。
方法5.オーディエンスが求めるものを発信する
戦略を考える上で、まずオーディエンスがそっぽを向くような「地雷ポイント」を知り、アプローチ方法から取り除きましょう。そしてターゲットがが今夢中になっていトレンドを把握し、その流れを戦略に反映させます。彼らが何を考えているのか、何を欲しているのか。それを見極めることが重要です。
まとめ
ソーシャルメディアプラットフォームを利用したインフルエンサーマーケティングは、数あるマーケティング戦略の中でも「クリエイティビティ」を実現しやすい手法と言えるでしょう。2019年以降、インフルエンサーはますます活躍の場を広げ、宣伝のみならずブランド商品の開発、さらには独自のブランドを生み出すようになっていくことが予想されます。クリエイティビティを高めるためには、ブランドの視点に加え、インフルエンサーの視点、そしてオーディエンスの視点を融合させ、ひとつの目標に向けて共同で進めることがますます重要になっていくことでしょう。
参考:https://www.thedrum.com/opinion/2019/03/12/why-marketers-need-get-more-creative-with-influencer-marketing
https://www.campaignlive.co.uk/article/creative-future-influencers-look-m-ss-shoe-campaign/1524504
https://qz.com/847460/glossier-girls-emily-weiss-on-how-glossiers-customers-became-its-most-powerful-sales-force/