ディズニーランドは世界で最も有名なテーマパークでしょう。「ディズニーほどの知名度があれば、今さらブランド認知度を高めるためのマーケティング活動なんて必要ないだろう」と思う人がいるかもしれませんが、10年も経てばメインとなる顧客層の大部分が新しい世代に入れ替わります。有名ブランドが長い間知名度を保ち続けることができるのは、日々の地道なマーケティング活動の成果と言えるでしょう。
ディズニーは、インフルエンサーマーケティングを実施しているブランドの一つとして知られています。マーケティングや広告のための予算を豊富に持つディズニーのような大手企業もインフルエンサーマーケティングの効果に注目し、積極的にマーケティング戦略に取り入れています
今回は、ディズニーが手掛けたインフルエンサーマーケティングキャンペーン事例と、そこから学べるインフルエンサーマーケティングのポイントを紹介します。
目次
- ディズニーランドパリのインフルエンサーマーケティング事例
- Z世代をターゲットにしたインフルエンサーマーケティング事例
- ディズニーファンのママたちによるインフルエンサーマーケティング事例
- ディズニーのインフルエンサーマーケティングから学べること
- まとめ
ディズニーランドパリのインフルエンサーマーケティング事例
ディズニーランドパリはヨーロッパで唯一のディズニーランドで、毎年1,500万人以上が訪れます。ディズニーランドパリのマーケティングチームは、新しいアトラクションショーである「ミッキーアンドザマジシャン」を発表する際に、インフルエンサーマーケティングキャンペーンを実施しました。
「ミッキーアンドザマジシャン」の立ち上げはディズニーランドパリのコアマーケティング戦略の1つで、ショーが一般公開前に最大の露出を得るためのプロモーションとして、インフルエンサーにショーを体験してもらい、その内容をコンテンツとして発信してもらいました。
キャンペーンを実施するにあたってディズニーランドパリと協力したインフルエンサーマーケティング支援会社は、ディズニーに対して次のような提案を行いました。
・オーディエンスに対するディズニーのビジョンを明確化
・ショーの発表を最も効果的に宣伝できるインフルエンサーを特定
・潜在的な顧客を引き付ける可能性が最も高いインフルエンサーのリストの提供
キャンペーンの内容
ディズニーは、多くのインフルエンサーを伝統的な報道メディア関係者とともにショーに招待しました。インフルエンサーマーケティング支援会社がオンラインアクティビティを測定するための専用プラットフォームを提供したことによって、インフルエンサーが投稿したすべてのコンテンツがトラッキングされ、「いいね!」の数・コメント・シェア数といったエンゲージメントの指標となる数値が自動的に登録されました。
また、すべての調査結果を分析し、ディズニーランドパリ向けに調整されたレポートも作成されました。このレポートによって、ディズニーランドパリはキャンペーンの結果を客観的に評価することが可能になり、報道機関・インフルエンサー・オーディエンスによるコンテンツの中で「最も影響力が低いコンテンツ」も特定することができました。
ディズニーランドパリのマーケティングチームは今回のインフルエンサーマーケティングキャンペーン後に、「ショーに使用されたハッシュタグ、キーワード、写真、コメントの比率により、本当に求められているコンテンツを理解することができました。」と話しました。
キャンペーンの結果
コンテンツのパフォーマンスを分析した結果、生成されたエンゲージメント全体のうち40%以上が、インフルエンサーマーケティング支援会社が特定した4名のインフルエンサーからのものであり、インフルエンサーが、ディズニーランドパリと新しいオーディエンスの橋渡し役になったことが分かりました。
ディズニーランドパリのマーケティングチームは、今回のインフルエンサーマーケティングキャンペーンについて次のように話しました。
「これまで名前も知らなかったインフルエンサーが、南フランスとヨーロッパの大勢のオーディエンスを惹き付け、エンゲージメントさせたことに驚きました。これは私たちマーケティングチームの目標でしたが、以前はインフルエンサーマーケティングによるエンゲージメント率の向上を優先していなかったので、今回の結果には非常に感心しています。」
インフルエンサーマーケティングキャンペーンを実施する際には、オーディエンスの共感を呼ぶことが重要です。オーディエンスのことを誰よりも知っているインフルエンサーにコンテンツの作成を任せることによって、エンゲージメントの高いキャンペーン展開が期待できます。
Z世代をターゲットにしたインフルエンサーマーケティング事例
ウォルト・ディズニー社は、9歳から13歳をターゲットにしたYouTube動画のインフルエンサーマーケティングを実施しました。目的は、自社のYouTubeチャンネルの登録者を増やすことでした。
インフルエンサーマーケティングキャンペーンでは、10代の若者の間で名前が知られているAlana Smithさん、Brighton Zeunerさんなどの有名スケートボーダーとタイアップしました。
ウォルト・ディズニー社は、動画を制作する前に10代の若者を対象にして、動画のコンセプト、ストーリー、クリエイティブスタイルなどのオンライン調査を実施しました。このように、コンテンツの受容性について事前に調査を行うことでキャンペーンの失敗を防ぐことができます。
タイアップしたインフルエンサーは、ディズニーリゾートで最高の一日を過ごし、それがYouTube動画になりました。それぞれのインフルエンサーは、パーク内のお気に入りの場所で写真を取り、 「伝説のスケートボードアーティスト」と言われるMike Carnevaleさんが、写真を基にそれぞれのインフルエンサーのためにオリジナルのスケートボードをデザインしました。
YouTubeの動画は22万6,000回以上再生され、さらに話題を拡散させるために、ディズニーのインスタグラムページにも投稿されました。
インフルエンサーの一人であるAlana Smithさんは、ディズニーの人気アトラクション「タワー・オブ・テラー」がデザインされたスケートボードを、「#Sweepstakes」のタグを付けてインスタグラム上でコメントをしたオーディエンスの中から抽選でプレゼントするとキャプションでコメントしました。
コメント欄には、スケートボードが大好きなZ世代や、Alana Smithさんのファンからたくさんのコメントが寄せられ、2,400件以上の「いいね!」が付きました。
Z世代は、有名タレントやモデルなどの「セレブ」よりも、ユーチューバーやインスタグラムで活躍するインフルエンサーを身近に感じています。
「テレビを見ない」「広告を嫌う」など、従来の消費者とは異なる特徴を持ったZ世代をターゲットとしたマーケティングには、インフルエンサーの存在が必要不可欠です。
今回のインフルエンサーマーケティング事例では、Z世代と親和性の高いスケートボードというカテゴリに注目し、そのカテゴリで人気のあるインフルエンサーとタイアップしたことが成功の理由と言えます。
ディズニーファンのママたちによるインフルエンサーマーケティング事例
Wendy Wrightさんは2人の子供を育てる母親で、ブロガーとして活躍しているインフルエンサーです。飼育している2匹の猫に「ミッキー」「ミニー」と名前を付けるほど大のディズニーファンで、ブログにはディズニーランドを楽しむためのアドバイスや、ディズニーをテーマにしたパーティーを開くためのヒント、ディズニー映画のレビューといった、ディズニー関連の話題が数多く掲載されています。
そんなWrightさんのディズニーに対する熱い思いがウォルト・ディズニー社の目に留まり、Wrightさんは、ディズニーが手掛ける約1,300人の「ディズニー・ソーシャルメディア・ママ」のグループに招待されました。「ディズニー・ソーシャルメディア・ママ」は、子供を育てている両親の熱意と影響力をマーケティング活動に組み込むためのディズニーの取り組みの一部です。
この取り組みに参加したインフルエンサーは、報酬の代わりに、大幅に割引されたウォルトディズニーワールドへの4日間の家族旅行を含む特典を受け取りました。
ウォルト・ディズニー社は、参加したインフルエンサーにコンテンツの投稿を求めることはしませんでした。それでも、2015年5月に開催されたソーシャルメディア・ママ・イベントでは、2万8,500件のツイート、4,900件のインスタグラム投稿、88件のブログが投稿され、ディズニーのキャラクターに会う子供たちの様子が数多く投稿されました。
ディズニーが「ディズニー・ソーシャルメディア・ママ」をどのように選ぶかは公開されておらず、その秘密の公式は、オンラインで憶測を呼んでいます。「ディズニー・ソーシャルメディア・ママ」に選ばれる方法について書かれたあるブログ投稿は1,600回もシェアされました。
ディズニーランドへの家族旅行を計画するのは、多くの場合「母親」です。そして、「ママインフルエンサー」は、オンラインで大きな存在感と影響力を持ち、子育て世代の旅行や娯楽の計画に影響を与える能力を持っています。
ディズニーのインフルエンサーマーケティングから学べること
ディズニーは、インフルエンサーマーケティングにおいて次のようなポイントをおさえていると言えるでしょう。
1.ディズニーのファンであるインフルエンサーとタイアップする
2.ブランディングとビジュアルを使用してストーリーを伝える
3.テーマパークの体験が実際にどのようなものかをソーシャルメディアで宣伝してもらう
4.ターゲット市場を把握する
「ディズニー・ソーシャルメディア・ママ」のように、元からディズニーのファンであるインフルエンサーとタイアップすることによって、ディズニーの魅力が存分に反映されたコンテンツを作成してもらうことができます。また、ディズニーファンであるインフルエンサーのフォロワーには、数多くのディズニーファンが含まれています。
また、コンテンツを作成する上で、3番目の「テーマパークの体験が実際にどのようなものかをソーシャルメディアで宣伝してもらう」というのは非常に重要なポイントです。なぜならば、テーマパーク関連で最も人気のあるコンテンツは、施設でのリアルな体験談だからです。
例えば、ディズニーランドには、正しくない場所に置かれたベビーカーを集める従業員がいます。ベビーカーを担当する従業員たちは、ジェットコースターや他の乗り物を出た後、所有者が簡単に見つけられる場所にベビーカーをきちんと配置しておきます。このような体験談がソーシャルメディアでシェアされることによって、「やっぱりディズニーランドは素晴らしい!」というブランディングに繋がるのです。
まとめ
今回は、ディズニーから学ぶインフルエンサーマーケティングのポイントとキャンペーン事例を紹介しました。
インフルエンサーマーケティングは、ターゲットとなるオーディエンスをフォロワーに持つインフルエンサーとタイアップすることが成功への近道です。ディズニーのインフルエンサーマーケティング事例は、その法則に則って、時にはインフルエンサーマーケティング支援会社など外部の協力を得て良い結果を残してきました。
テーマパークは幅広い世代をターゲットにできる特殊なカテゴリですが、インフルエンサーマーケティングキャンペーンを実施する際は、より具体的にターゲットを絞り、ターゲットにリーチできるようなインフルエンサーを探すことが重要です。
おすすめ記事:人気テーマパークによるインフルエンサーマーケティングキャンペーン事例3選
参考:https://www.augure.com/content/casestudies/disneyland-paris/
https://crowdriff.com/resources/blog/how-to-market-a-theme-park
https://www.reuters.com/article/us-disney-moms-insight-idUSKBN0OV0DX20150615
https://www.debaird.net/blendededunet/walt-disney-world-gen-z-social-media-content-influencer-youth-marketing-derek-e-baird.html