かつて、ソーシャルメディアでフォロワーが少数しかいない人々とビジネスパートナーシップを結ぶことは、多くのマーケティング担当者やPRのエキスパートにとって逆効果と考えられてきました。
しかし現在では、100万人のフォロワーを持つ有名インフルエンサーと仕事ができる資金力を持ちながら、1万人しかフォロワーを持たない「マイクロインフルエンサー」と呼ばれる人々とタイアップしてコンテンツ制作を行う大手ブランドが増えてきているのです。マイクロインフルエンサーマーケティングは、今日の最も効果的なデジタルPRおよびマーケティング戦略の1つです。
「マイクロインフルエンサー」は正確には定義されていない曖昧な存在ですが、ソーシャルメディアのフォロワーが1万人から5万人のインフルエンサーがマイクロインフルエンサーと呼ばれています。メガインフルエンサーやマクロインフルエンサーと呼ばれる比較的規模の大きいインフルエンサーは50万人から100万人以上のフォロワーを擁しており、マイクロインフルエンサーはそういった有名人よりもはるかにフォロワーが少ないにも関わらず注目を集めています。
今回は、マイクロインフルエンサーとタイアップするメリットとデメリットと共に、創造性を刺激するマイクロインフルエンサーマーケティングキャンペーンの成功事例を5つ紹介します。
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目次
- Audibleの事例
- バナナ・リパブリックの事例
- ダニエル・ウェリントンの事例
- Glossier社の事例
- Tom’s of Maine社の事例
- マイクロインフルエンサーとタイアップするメリットとデメリット
- まとめ
Audibleの事例
Amazonのオーディオブックおよびポッドキャスト部門である「Audible」は、マイクロインフルエンサーを含むあらゆる規模の人々とインフルエンサーマーケティングキャンペーンを展開しています。
タイアップしたマイクロインフルエンサーの1人である写真家のJesse Driftwoodさん(@jessedriftwood)は、Audibleのサービスを利用して自分の写真を投稿しました。Jesse Driftwoodさんはキャプションで、Audibleを使用してビジネス管理と生産性について学ぶ方法を説明しました。
Driftwoodさんのフォロワーは当時10万人ほどでしたが、Audibleのインフルエンサーマーケティングチームは彼のファンが特に熱心でロイヤリティが高いことを認識していたため、タイアップを決定しています。
Audibleが協力したインフルエンサーマーケティング企業「Travel Mindset社」の社長は「Jesse Driftwoodさんのシンプルな体験談により、フォロワーは本物の友人から提案を受けているかのように感じられます。これこそがマイクロインフルエンサーとタイアップする醍醐味です。」と語りました。
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バナナ・リパブリックの事例
日本でも有名なアパレルブランド「バナナ・リパブリック」は、過去にさまざまなシーンでブランドの衣服を着こなした写真をインスタグラムに投稿しているマイクロインフルエンサーを選定し、タイアップしました。
バナナ・リパブリックのインフルエンサーマーケティングキャンペーンで投稿されたコンテンツには、ブランドの一般的なハッシュタグである「#itsbanana」が含まれていました。また、タイアップしたマイクロインフルエンサーは、#brmovesyou、#brmakeitmatter、#brholidayなどの季節限定ハッシュタグや、インフルエンサーマーケティングキャンペーン専用ハッシュタグも投稿に追加しています。
センスの良さで知られるファッションマイクロインフルエンサーやライフスタイルマイクロインフルエンサーとタイアップして影響力を高めることで、バナナ・リパブリックはターゲットを絞ったオーディエンスへのリーチに成功しました。
ダニエル・ウェリントンの事例
スウェーデンの時計ブランド「ダニエル・ウェリントン」は、他のPR戦略よりもインフルエンサーマーケティングを重視しています。実際に、ダニエル・ウェリントンは従来のウェブ広告や宣伝活動をすでに中止しています。
最近、ダニエル・ウェリントンがインスタグラムで行ったマイクロインフルエンサーマーケティングキャンペーンでは、ファッションやライフスタイルに興味のあるインスタグラムユーザーだけでなく、幅広いオーディエンスにリーチしました。例えば、ペット好きの人々にリーチするために、キャットマイクロインフルエンサーである「Scuba and Shadow」ともタイアップしています。
ダニエル・ウェリントンとタイアップしたマイクロインフルエンサーは、新規顧客を惹き付けるために、アカウント固有の割引クーポンコードを投稿に含めました。スタイルの異なる複数のマイクロインフルエンサーとタイアップすることにより、ダニエル・ウェリントンは、時計やファッションに興味がある人以外にも幅広い消費者グループにリーチすることに成功しています。
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Glossier社の事例
2014年に設立されたスキンケアブランド「Glossier」が急成長した主な要因はインフルエンサーマーケティングにあります。Glossierはインフルエンサーを選択する際、フォロワー数よりもエンゲージメント率を優先するマイクロインフルエンサーマーケティング戦略を活用しています。
その一例として、ミシガン大学で美術を専攻している学生で、約8,500人のインスタグラムフォロワーがいるCecilia Gorgonさんとタイアップしたインフルエンサーマーケティング事例を紹介します。
Cecilia Gorgonさんは、Glossierブランドの保湿剤の写真を投稿し、「過去数日間試してみて、とても潤いが持続するのを実感しました」とフォロワーに勧めています。また、彼女は自己紹介欄に「Into the Gloss」という記事のリンクを貼って、Glossier製品を積極的にレビューしました。
Glossierのインフルエンサーマーケティングプログラムには、マイクロインフルエンサーが多く参加しています。 Glossierは、13人のインフルエンサーにニューヨークへ行ってもらい、48時間滞在してもらうという「インフルエンサートラベル企画」も実施しました。
そのニューヨーク旅行参加者の1人であるYouTubeブロガーのAmy Serranoさんは、4万7,000人のYouTubeチャンネル登録者数を誇っています。Amy Serranoさんはビデオログで、ニューヨークでの小旅行を記録し、4つの旅行コンテンツをインスタグラムに投稿することで、多数のコメントとエンゲージメントを集めました。
また、Glossierは最近、より影響力のある15人のGlossierファンが独自のネットワークに製品の割引やその他のインセンティブを提供できるようにする紹介プログラムを導入しました。
このプログラムは 、金銭的成果よりもソーシャルメディアでの認知度向上に重点を置いている、とGlossierのCEOは語っています。「選ばれたGlossierファンは、Glossierのブランドアンバサダーのような役割を果たしています。彼女たちは紹介プログラムに参加することで、新規フォロワーを獲得できる上に、Glossierにとっても見込み顧客となるフォロワーが増えることは大きな成果となります。」
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Tom’s of Maine社の事例
「Tom’s of Maine社」は、天然成分のみを使用したパーソナルケア製品のブランドです。インフルエンサーマーケティングを開始するにあたってTom’s of Maine社は、500人から5,000人のフォロワーがいるソーシャルメディアインフルエンサーとタイアップすることを決定しました。
Tom’s of Maine社と協力したインフルエンサーマーケティングコンサルタントであるShane Barkerさんは、Tom’s of Maine社のオーディエンスを関連性のあるトピックに引き込むことができる人材を探すことに注力しました。
その結果、選定されたマイクロインフルエンサー1,000人は、ソーシャルメディアでそれぞれ6,000件を超えるエンゲージメントを獲得し、フィードバック、レビュー、調査を通じて顧客の意見を得ることに成功しています。
Shane Barkerさんは「インフルエンサーマーケティングで常に膨大なリーチを得る必要がないことを明確に示している例が今回のインフルエンサーマーケティング事例です。ブランドに関連するジャンルのマイクロインフルエンサーやミッドティアインフルエンサーの強力なネットワークは、ターゲットオーディエンスのエンゲージメントに目覚ましい効果をもたらします。」とTom’s of Maine社のマイクロインフルエンサーマーケティングを評価しています。
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マイクロインフルエンサーとタイアップするメリットとデメリット
マイクロインフルエンサーとタイアップするメリット
さまざまな研究により、マイクロインフルエンサーがセレブやマクロインフルエンサーよりも高いエンゲージメント率を獲得することが証明されています。実際に、最近の調査では、エンゲージメントはフォロワーの数に反比例することが示唆されています。数十万人、数百万人のフォロワーを持つインフルエンサーは、オンライン上でファンと交流することが少なかったり、ファンと交流することをエージェントに制限されていることがあるため、フォロワーが多いほどエンゲージメントが低くなる傾向があります。
一般的にインフルエンサーは自分の専門ジャンルに精通しており、フォロワーはインフルエンサーが推奨した商品やサービスに信頼を置いています。特に、フォロワーが少ないマイクロインフルエンサーはフォロワーとの結びつきが強いため、信頼関係はより強固なものになります。さらに、マイクロインフルエンサーとは手頃な価格でタイアップ契約を結ぶことが可能であり、ブランドが無料サンプルを贈るだけで、製品について言及したりレビューしてくれるマイクロインフルエンサーも存在します。
マイクロインフルエンサーとタイアップするデメリット
マイクロインフルエンサーとタイアップするデメリットとして、広く世間に名前が知られているメガインフルエンサーに比べて、ブランドに適したマイクロインフルエンサーを見つけ出すのに時間がかかるという点があります。しかしインフルエンサーマーケティング企業と協力したり、「ソーシャルメディアモニタリングサービス」を利用すれば、既に自社ブランドの製品について好意的な言及を投稿しているソーシャルメディアユーザーを見つけ、エンゲージメント率を分析し、コンテンツを長期にわたってモニタリングすることが可能です。
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まとめ
今回は、マイクロインフルエンサーマーケティングを行った有名ブランドの事例を紹介しました。
比較的フォロワーが少ないマイクロインフルエンサーとのタイアップは、大手ブランドだけでなく中小企業にとっても優れたインフルエンサーマーケティング戦略です。今回紹介した事例には、マイクロインフルエンサーマーケティングキャンペーンを成功させるためのアイデアが詰まっています。
インフルエンサーマーケティング事業者や広告に関する専門家の多くは、短期契約や一回限りの取引ではなく、マイクロインフルエンサーとの長期的な関係を構築することをブランドに推奨しています。また専門家は、ブランドのインフルエンサーマーケティングプログラムの有効性を評価するにあたって、ソーシャルメディア測定を積極的に行うことを促しています。
参考:https://glean.info/4-examples-effective-micro-influencer-campaigns/
https://qz.com/847460/glossier-girls-emily-weiss-on-how-glossiers-customers-became-its-most-powerful-sales-force/