米国のファッションインフルエンサーが動かす金額と有用性とは?

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Instagramのユーザーは世界的に拡大しており、日本でもインスタグラマーと呼ばれるSNS上のスターがメディアに取り上げられるようになっている。とりわけファッション分野でのニーズは高まる一方だ。

これまでのようなTVタレントやモデルとは違い、ルックスとファッションセンスにとどまらず、ビジネスの才覚と話題作りにも長けた彼、彼女らはファッションインフルエンサーとして新しいビジネスモデルを展開してきた。新たなソーシャルマーケティング手法としてブランドからの注目も高まるなか、そのニーズに応えるべくインフルエンサーマーケティングの専門事業者も多数立ち上がり、業界の盛り上げに一役買っている。

特に、グローバルな影響力を持つインフルエンサーが集まる米国では、Instagramやブログを通して多数のファッショニスタがファッションやライフスタイル、スキャンダルを発信し、大きな経済効果をうみだしてきた。その動きにはトレンドに敏感なソーシャルユーザーだけでなく、今や著名なビジネススクールまでもが目をみはる状況だ。ファッションインフルエンサーが率いる新たなソーシャルビジネスを活用し、ブランドが自社の利益に結びつけていくにあたり、ファッションインフルエンサーが実際に動かしている金額を知っておくことは重要なポイントとなる。

今回は米国の事例を取り上げながら、ファッションインフルエンサーが生み出す利益を紹介する。

目次

    1. ハーバード・ビジネススクールも注目するファッションインフルエンサーのビジネスモデル
    2. ファッションインフルエンサーの収入とコスト
    3. ファッションインフルエンサーは高額なギャラと引き換えにエンゲージメントをもたらす
    4. 比較的安価で柔軟なファッション・マイクロインフルエンサーを活用する
    5. マイクロインフルエンサー、ナツァラディンさんにはInstagramに23万7千のフォロワーがいる
    6. インフルエンサーマーケティング事業社がブロガーとブランド両者にもたらす利点
    7. ビジネス感覚に長けたファッショニスタの参入で混迷するファッション業界

ハーバード・ビジネススクールも注目するファッションインフルエンサーのビジネスモデル

インフルエンサー、またはファッションインフルエンサーの定義や実態とは曖昧なものだ。たとえば「冒険家」や「オピニオン・リーダー」のように、明確な意味づけよりも人々がファッションインフルエンサーをそう呼ぶことによって世間に認知されてゆくという非論理的な側面もある。 しかし、いまやファッションインフルエンサーたちがソーシャルメディアの成功者としてビジネスを成立させ、多額の報酬を獲得しているのは現実なのである。

例えばファッションブロガーのキアラ・フェラーニさんは2009年にブログ『The Blonde Salad』を立ちあげるや否や、コアなファッション中毒の人々やブランドから注目されるようになった。驚くことに、トレンドを率いる彼女のこうした動きに関しては「ハーバード・ビジネススクール」までが関心を寄せ、昨年発表されたケーススタディーにまとめている。

研究によると、フェラーニさんは当初、ブログに貼り付けたバナー広告から収入を得ていたが、ブログ上で自身が発信するコンテンツ自体が利益を生み出すことに気付くまで、長くはかからなかったという。スポンサーブランドの商品をブログに取り上げ、ファンベースの売り上げの何割かを報酬として受け取るというスタイルでも十分な収入が得られるようになったからだ。

ファンの増加と並行して報酬は上がり、今やフェラーニさんは、 ・イベントをオーガナイズすれば5万ドルの利益 ・シューズブランドでは自身のシリーズを持っている ・イヴ・サンローランの香水Black Opiumのプロモーションに起用される ・14人のスタッフを雇用し、7百万ドルを獲得している というファッションインフルエンサー界のスターとして大きな活躍を見せている。

ファッションインフルエンサーの収入とコスト

ブランドがソーシャル上でインフルエンサーマーケティングに基づくキャンペーンを行う際、インフルエンサーたちの動きはすべて追加料金にしたがって決定される。例えば乗用車を買う場合を考えてみれば、セダンの基本購入価格が2万ドルだったとしてもレザーシートやサンルーフのオプションをつければ値段が一気に倍に跳ね上がるのと同じである。

インフルエンサーマーケティング事業社「Fohr Card」のCEOであるナード氏は、「普通、ブランドはインフルエンサーらにブログ、Instagram上で自社の商品についてシンプルに言及するのではなく、幾つかのタグをつけて投稿することを望む。また、ユーザーたちのエンゲージメントが高い月曜の朝に投稿するのか、人々がまどろんでいる日曜の午後にするかなど、投稿スタイルやタイミングもすべて事前に決定し、報酬料金を算出しておくことになっている。」と、説明している。

とはいえ、支払われた報酬金額がそのままインフルエンサーの利益になるわけではない。ソーシャルメディアのファッショニスタたちは、投稿画像の撮影費用といった諸経費を自己負担しているからだ。

例えばアリエル・カーナスさんのブログ『Something Navy』の撮影は、ファッションフォトグラファーのアレキサンドラ・ウルフ氏が担当しているし、撮影にあたっては照明やメイク、ヘアスタイリストも必要になってくる。

たった1枚の画像であっても丸一日、時には二日かけ、5千ドルの費用がかかっていたりするのである。同じくファッションブロガーのリーンドラ・メディーンさんの『Man Repeller』についても、2016年6月に同ブログのデジタルディレクターであるケイト・バーネット氏が「Man Repellerはどうやって金を生み出しているか(How Man Repeller Makes Money)」という記事をアップしている。これは話題性ある彼女たちのブログの内情をあれこれ詮索しようとするメディアの要求に応えた記事だが、そのなかでバーネットは「かわいらしく仕上がっている私たちのブログも、編集努力の賜物だ。それは一般的な広告運営と同じである。」と述べている。 メディーンさん自身がブログの経営事情を語ることはなかったが、その年間売上高は100万ドルは下らないだろうと推測されている。

ファッションインフルエンサーは高額なギャラと引き換えにエンゲージメントをもたらす

では、こうした高額な報酬を支払った結果として、ブランドは何を手に入れられるのだろうか。それはなんと言ってもソーシャル上のアクセス数である。とりわけソーシャルメディアの使用頻度が高く、またファッションに対する支出が高いミレニアル世代の若者たちからエンゲージメントを引き出すことが期待されている。

インフルエンサーとして利益をあげるファッションブロガーにとって、Instagramはビジネスツールであり、投稿は広告だ。しかし、ブログを通して彼女たちに親しみを持ち、「リアルな女性たち」と認識する多くのユーザーにとっては、ファッションブロガーの投稿は信ぴょう性の高い口コミという威力を持つのである。

「効果的なブログ投稿を作成することについては、さまざまな側面がある。」と語るのは最も影響力のあるインフルエンサーの一人であり、Instagramに150万人のフォロワーを抱えるスタイルブログ『We Wore What』のダニエル・バーンステイン氏だ。 「とりわけ注意を払わなければならないのは、信頼できる記事かどうかということ。記事は読者との信頼を作るものだから、私自身が良いと思えない商品を紹介することはできない。」という。

インフルエンサーキャスティング事業社「Socialyte」の共同出資者レベッカ・アレキサンダー氏は、「インフルエンサーは自身が管理するソーシャルメディアの各チャンネルを通して、数百、数千、そしてなかには数百万の消費者にリーチする。フォロワーたちは彼女たちのライフスタイルに憧れ、彼女らが食べるものを食べ、彼女らが身につけるものを身につけたいと望んでいる。つまり、オーディエンスたちがファッションや美容、旅行などについて考えをめぐらす時、その意思決定に大きなインパクトを与えるのである。」と語ってる。

ファッションインフルエンサーはミレニアル世代にとってリアリティ番組のスターであり、数10億ドルに相当する商品がその発信を通して売れているという。

比較的安価で柔軟なファッション・マイクロインフルエンサーを活用する

数回の投稿で6ケタの報酬を手に入れるトップランクのブロガーがいる一方で、そういったインフルエンサーをソーシャルマーケティングに活用しようとするブランドのすべてがインフレ的なギャラに対応できるわけではない。フォロワー数の多いインフルエンサーに対する高額な報酬料金が生み出すROIに懐疑的なマーケターも少なくないのだ。 

それよりも、ファンのロイヤリティの高さを重視し、インフルエンサーの有用性は「フォロワーたちが商品購入サイトへのリンクをどれほどクリックしているかだ」とするブランドは少なくない。このため、比較的安価なギャラで済む、フォロワー数15〜50万ほどのマイクロインフルエンサーと呼ばれるような人々でも、ソーシャル上での知名度を活かして十分な生活費を捻出している場合がある。

アレキサンダー氏によると、「マイクロインフルエンサーは熱意があり、ブランドのビジョンにも柔軟な姿勢を示す上、ブランドが求めるニッチなオーディエンスにもリーチしてくれる」という。

マイクロインフルエンサー、ヘイディ・ナツァラディンはInstagramに23万7千のフォロワーがいる

ヘイディ・ナツァラディンさんは年収40万ドルの投資家を2009年に辞めたが、それと引き換えに現在のライフスタイルを手に入れた。数多くの一流ファッションブランドとコラボレーションを行う彼女は、「各キャンペーンに対する報酬の平均は3千ドルだが、時には非常に大きな数字になることもある。」と語る。

キャンペーンは、シンプルなブログ投稿からソーシャル上の各チャンネルを通じた発信、またイベントでの露出など多岐に渡るという。彼女への報酬は必ずしも金銭で支払われるわけではない。最近とある有名ファッションレーベルが彼女をミラノへ招待したが、その際、飛行機での席はファーストクラス、現地ではレーベルのトップスタイリストとともにショッピングで服を選び、デザイナーズブランドの衣類でいっぱいになったスーツケースをひいて帰路についたという。この待遇に、ナツァラディンさんはミラノでの旅がいかに充実していたかを伝える熱意あるブログ記事を投稿し、またInstagramも数回に渡って旅行の様子をアップした。

彼女にオファーを申し込むのはファッションブランドだけではない。ロサンゼルス国際空港もターミナルのアップグレードに伴うプロモーションで彼女を起用し、ラグジュアリーなラウンジやカフェなどを褒めちぎる内容の記事をブログやInstagramで投稿してもらっている。

インフルエンサーマーケティング事業社がブロガーとブランド両者にもたらす利点

ビッグネームのインフルエンサーであればあるほどスタッフを抱えているのは当然で、この他インフルエンサーマーケティングの専門事業社といったエージェントを介してブランドとのビジネスを行っている場合が多い。

「駆け出しのブロガーたちは、もし今どうしても必要でなくても、なるべく早めにエージェントと手を結んだ方がいい。」とナツァラディンさんはいう。「ブランドにとって、間に入って金銭の話をするエージェントがいた方がやりやすい。また、ブランドは自分たちが起用しようとするブロガーについてよく調べており、あれこれ要求も多いので交渉役がいた方がブロガーにとっても便利だ。」

これ以外にも、ソーシャルに不慣れなブランドにとって、インフルエンサーの真価を見極めるのは難しいものだ。オンラインで目にする情報の信ぴょう性を見極めるためにも、ソーシャルメディアマーケティングに精通した専門事業社は手助けとなるだろう。

「ゴースト・フォロワーを抱えるアカウントは人々が思う以上に多い。」と語るのは、ブランドのインフルエンサーキャンペーンをサポートするPR会社Brandsway CreativeのCEOであるケリー・ブレイディ氏だ。 「例えば5万のフォロワーがいて実際に商品の取引を生み出しているアカウントがある一方で、フォロワーは百万なのになんの活動もしていないアカウントがある。」インフルエンサーだと認識されている人々の中には、金でフォロワー数を増やし、水増しした数字を記載しているゴーストフォロワー使いである場合もあるのだ。

ビジネス感覚に長けたファッショニスタの参入で混迷するファッション業界

ファッショニスタの影響力に期待し、SNSを活用してマーケティングの幅を広げようと画策するなかで、 ・インフルエンサーとの関係性 ・不確定要素の強いソーシャルユーザーの行動 ・新しいインフルエンサーマーケティングの手法 こっらを前に戸惑うブランドも少なくない。

インターネット上で売り出し中のコスメブランド「Winky Lux」の共同出資者、ナタリー・マッキー氏もソーシャルが発達する以前のような広告手法を続けていくことに疑問を持ち、ビューティ・スターを起用したインフルエンサーキャンペーンの効果に期待する一人だ。「インフルエンサーマーケティングが隆盛する今の状況は、カリフォルニアにゴールドラッシュが押し寄せた時代に例えることができる。どこを掘るのがあたりでハズレかわからない、ギャンブルのようだから。ただ、現代ではツルハシとショベルといった道具はiPhoneやInstagramアカウントなどのツールへと変化しているが。」と彼女は語る。

さらにマッキー氏は、「ブランドはインフルエンサーに接触するとき、彼女たちに直接連絡することもあればエージェントにメールすることもある。なかには一度もブランドとビジネスを行ったことがないような、中身のないエージェンシーもある。こうしたことが、いま一体誰とビジネスを行えば良いのか混乱を起こしているのだ。」とも説明した。

5千ドルから10万ドルまで、様々な額の報酬を「Winky Lux」に要求してきたインフルエンサーもいたようだ。事業のスタートアップとして誰にマーケティング予算をかけるか、マッキー氏らは投資に値するインフルエンサーを見極めるため頭を悩ませてきた。それは科学よりもアートセンスが問われる問題だと感じるという。

ソーシャルメディアを利用して多様なアカウントがマーケティングに参戦する混乱状況を受けて、米国連邦取引委員会は商品の宣伝と捉えられるInstagram記事ついて、報酬が発生しているかどうかを明記するよう呼びかけている。しかし権限上の問題で、違反しているソーシャル上の投稿やアカウントを取り締まることはできず、ケース・バイ・ケースで対応しているのが現状だ。実際、「#sponsored content(スポンサーの依頼による記事)」などとご丁寧にハッシュタグをつけて投稿しているインスタグラマーなど、見たことははないだろう。

また、2013年にはNew York Timesのファッション評論家スージー・メンケス氏がソーシャルメディアを騒がすインフルエンサーについて苦言を呈している。一般の人々にとっては現実離れした、虚飾と散財に溢れたインフルエンサーたちの影響力を批判してのものだ。メンケス氏のような見方とは逆に、インフルエンサーの登場は一部の者が牛耳り、閉鎖的だったファッション業界に変革をもたらしたと賞賛を贈る意見もある。

ともあれ、若さと美貌を活かしてファンを獲得し、世の中で活躍したいと考える若い女性はいつの時代にも大勢いる。彼女たちにとって、以前はモデルや女優、タレントが目標だったが、スターへの道のりには煩雑でおびただしい数のオーディアションや長い待機時間、無能なマネージャーなど、たくさんの障害があった。しかし現代ではInstagramのアカウントやブログを作成するインターネット環境があれば、自分の能力を最大限に活かして世に出ることができる。インフルエンサーとしてユーザーたちに認められれば、ハリウッドに集まる従来のセレブリティと同じく、人々からの羨望と大金を手に入れられるのだ。

こうした状況どう受け取るかはそれぞれだが、ハッシュタグとともに世界中に発信されるファッションインフルエンサーらのビジネスの勢いは衰える様子がない。ファッションインフルエンサーたちとどう付き合っていくかによって、ブランドの未来は大きく変わるだろう。

インフルエンサーマーケティングはインフルエンサーとブランドの出会いから始まる

これまで述べてきたように、ソーシャルメディアの発達と加速度的に変化するオンラインコミュティの分布を前に、ブランドが新しいマーケティングに乗り出そうとしつつも戸惑う一方で、インフルエンサーも自身にふさわしいブランドを探し求めている。ブランドはインフルエンサーのブログ記事やInstagram投稿を通じてオーディエンスにリーチすることによってはじめて認知度を上げ、商品購入に結びつけることができるわけだが、ブランドが発信したい自社イメージとインフルエンサーを取り巻くコミュニティのジャンルが異なっていれば、双方にとって不幸な出会いでしかなかったことになる。

例えばオートクチュールのハイブランドがファストファッションを求める若者や、ストリートカルチャーを愛するミレニアル世代にリーチしたとしても、ほとんど利益に結びつくことはないだろう。こうしたマッチングの失敗はソーシャルを介した「口コミマーケティング」の信ぴょう性を揺るがし、インフルエンサーとブランド両者にとって信頼を失う危機となる。

オーディエンスは報酬目当てにどんな商品の広告塔にもなるファッショニスタや、ソーシャル上での認知度を金で買えると思っているブランドに対し、驚くほど敏感である。失望はフォロワー数の減少として如実に表れるだろう。このためファッションインフルエンサーは自身にふさわしいブランドを選別する必要があるのだ。また、ファッション業界の混乱状況を整理し、こうした不幸な出会いを回避するためにも、インフルエンサーマーケティング専門事業社を活用することはブランドを有利にする。

フォロワー数の多いインフルエンサーほど経済効果が期待され、一般的に高額の報酬が必要となるが、比較的安価で柔軟なマイクロインフルエンサーであっても、ロイヤリティの高いニッチなファンから大きなエンゲージメントを引き出すことがある。 また、高額なギャラを要求するビッグネームのインフルエンサーは、 ・スタッフに人件費を払わなくてはならない ・ギャラのすべてがそのまま利益になるわけではない ・一枚の投稿画像に一日、二日といった時間を費やしている といった点も忘れてはならない

インフルエンサーマーケティングの活用を考えるブランド、または独学のメソッドによって実行してきたが芳しい成果が得られなかったマーケターは今回紹介したことを心に留めながら、インフルエンサーマーケティングにかけるコストとROIのバランスを考えることが重要である。

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参考:Marie Claire “It Girl Inc.: How Much Money Social Media’s Biggest Style Stars Really Make” http://www.marieclaire.com/fashion/news/a22091/business-of-style-stars/

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