ファッションブランドがインフルエンサーと長期契約を結ぶべき5つの理由

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インフルエンサーマーケティングは、短期間のタイアップでも成果を挙げることが可能なマーケティング手法です。新しい初夏コレクションのプロモーションに合わせて複数のインフルエンサーとタイアップし、プロモーションの終了と共にインフルエンサーとの関係も解消する、といったことが可能なので、その点に魅力を感じるブランドも少なくありません。

しかし、特にファッションブランド界におけるインフルエンサーマーケティングを大きなビジョンで捉えた時、インフルエンサーとは長期的な関係を持続するほうがより効果的であることが指摘されています。

今回は、ファッションブランドがインフルエンサーと長期的なパートナーシップを形成することのメリットについてご紹介しましょう。

 

目次

    1. ブランドの「スター・チーム」が組める
    2. インフルエンサーのオリジナルファッションを強調できる
    3. フォロワーにブランドとインフルエンサーの絆をアピールできる
    4. 手間と時間を節約できる
    5. コスト削減につながる
    6. まとめ

1. ブランドの「スター・チーム」が組める

化粧品ブランドのL’Oréal Parisは、インフルエンサーと長期タイアップするメリットを重視し、いち早く実行に移したブランドです。同社はこれまで長期タイアップしてきたイギリスのビューティーインフルエンサー5人を、ブランドの「美のスター・チーム」に改めて任命したことを公式に発表し、大きな話題となりました。計550万人のフォロワーを持つ彼女たちは、ブランドの新製品の宣伝や、ファッションウィークなどのイベントへ参加した時の様子などを、エキサイティングで魅力的なコンテンツとして発信。ブランドの認知拡大と購買促進に意欲的に取り組んでおり、ブランドの顔として活躍しています。

イギリスのL’Oréal ParisジェネラルマネージャーであるAdrien Koskas氏は、インフルエンサーと長期的にタイアップすることについて以下のように述べています。

「我々は、インフルエンサーたちと『1回限りの関係』は望んでいません。長いスパンでの『人として真の関係性』を築くことで、ブランドとインフルエンサーが一方通行ではなく、互いに学びよい影響を与え合える関係を求めています。そしてこの『健全で誠実な関係』こそが、オーディエンスを飽きさせないポイントでもあるのです。

今日のオーディエンスは、ブランドに買収された感のあるインフルエンサーからは離れて行ってしまいます。インフルエンサーの背後に人々を惹きつけるようなストーリー性がなかったり、ただ1回だけのやっつけ仕事だったりするケースです。だからこそ我々は、インフルエンサーとタイアップすることについてもっと誠意を持って取り組みたいのです。」

なお、L’Oréal Parisのスター・チームはいずれも膨大なフォロワーを持つインフルエンサーでしたが、自社ブランドのスター・チームを作るのに必ずしもメガインフルエンサーを採用する必要はありません。10万人単位のフォロワーを持つインフルエンサー2、3人を採用するのでも充分効果があり、予算オーバーすることなく長期タイアップのメリットを享受することができます。

2. インフルエンサーのオリジナルファッションを強調できる

ファッション業界は、アイテムひとつの見せ方にしてもそのバリエーションは無限にあります。スペイン発のファストファッションとして知られるZARAのチュニックを例えに挙げてみましょう。スキニージーンズにウェスタンブーツでボーイッシュにコーディネートする人もいれば、フェミニンなスカートと合わせる人もいます。ショートパンツとサンダルでバケーション・スタイルを楽しむ人もいるでしょう。

人には人の数だけ好みのスタイルがあります。複数のインフルエンサーと長期に渡ってタイアップすることは、ブランドのアイテムを活かしたインフルエンサーたちのオリジナルファッションのラインナップをオーディエンスにアピールすることにつながります。ただアイテム単品をプロモーションするよりも、そのアイテムでどのようなトータルコーディネートが楽しめるのかイメージしやすいですし、同じインフルエンサーがシーズンやイベントによって異なるスタイルを発信することで、フォロワーのブランドへの興味をますます掻き立てられます。

当然インフルエンサーごとにファッションスタイルは異なりますので、ブランドの魅力をより多くオーディエンスに提示するためには、1人よりも複数のインフルエンサーと長期タイアップする方がおすすめです。

3. フォロワーにブランドとインフルエンサーの絆をアピールできる

古い言い伝えに、「結婚するということは、パートナーだけでなく、パートナーの家族や友人、知人とも結婚するようなものだ」というものがあります。この考え方は、インフルエンサーマーケティングにおいても当てはまります。

ファッションインフルエンサーとタイアップし長期契約を結ぶということは、彼女たちのフォロワーとも直接的につながることを意味します。言い換えれば、1人のインフルエンサーとの関係を打ち切り別のインフルエンサーと新たにタイアップすれば、それまでとは異なる全く新しいフォロワーたちにブランドを紹介し、また一から関係を作っていかなければなりません。

キャンペーンごとにインフルエンサーとタイアップしキャンペーン終了とともに関係を解消する関係性と、同じインフルエンサーと長くタイアップする関係性は、短期間でどんどんデートする相手を変えていくタイプの人と、夫婦とを比較することにも似ています。前者は、さまざまな人とタイアップすることで多様性のメリットを享受できる一方、関係性に対する責任の欠如という問題があります。この点、後者は時間をかけて絆を構築していくことで深い信頼関係を築くことができます。

またインフルエンサーと長期タイアップにより深い信頼関係を築いていくことは、フォロワーにブランドとインフルエンサーの深い絆をアピールすることができます。これはつまり、フォロワー、ひいてはターゲットであるオーディエンスとも深い信頼関係を築いていくこととイコールなのです。

4. 手間と時間を節約できる

前の項目でも少し触れましたが、キャンペーンの度に新しいインフルエンサーとタイアップするということは、その都度一から関係を作り直すことになります。ブランドのコンセプトやガイドライン、システム、目標などをインフルエンサーひとりひとりに説明していく必要があるほか、ブランド側もインフルエンサー自身のことについて一から知ってゆかねばなりません。

同じインフルエンサーと長期契約を結んでいる場合、これらの説明に費やす手間と時間を大幅に削減できます。そしてその分、本当にブランドがフォーカスすべきこと、すなわちいかにオーディエンスの心を捉えられるかということに手間と時間をかけられます。

例えば、転職率の高い会社と低い会社を比較してみましょう。転職率の高い会社は常に新入社員を採用しなければならず、会社の仕組みや仕事の内容をまだ全く理解していない新入社員たちに対して、その都度オリエンテーションや研修を行って教えていかなくてはなりません。しかし、社員が長く定着する会社ならオリエンテーションや研修を繰り返す必要がなく、それどころかその会社で積み上げてきた長年の経験と実績を元により質の高いアウトプットが期待できます。双方の会社を比較した時、どちらの会社の方がよりよい成果が上げやすいかは明らかでしょう。

5. コスト削減につながる

新しいインフルエンサーと契約を結ぶ場合、そこには必ず報酬に関するネゴシエーションがあります。時には、以前のキャンペーンの時よりもいい条件で契約が成立するケースもありますが、いつもという訳にはいきません。

ファッション業界は、数ある業界の中でも特に競争の激しい分野です。その中で他のブランドに差をつけるような高いROIを達成するためには、コストに対して最高のマーケティングパフォーマンスを行うことが重要です。そしてそのカギは、マーケティングに必要なコストを正確に予測することにあります。

コストに見合うインフルエンサーを見つけるのは、簡単ではありません。新たなインフルエンサーと契約を結んだところ、経費がかさんで最終的にびっくりするようなコストに膨れ上がってしまった、というケースもあり得るわけです。長期タイアップしているインフルエンサーならそのような心配もなく、余計な経費がかかる可能性も少ないでしょう。また過去のキャンペーンでどれくらいコストがかかったか分かっているため、新たなキャンペーンを打ち上げる際により正確な予算を組むことができます。

まとめ

競争の激しいファッション業界においてインフルエンサーマーケティングを成功させるには、オーディエンスが「これは信頼できる」と判断するようなコンテンツを発信することが重要です。そのためには、インフルエンサーとブランドが単に契約やお金でつながっているのではなく、信頼と絆でつながっていることをアピールする必要があります。

キャンペーンごとにインフルエンサーが変わるよりも、同じインフルエンサーが複数のキャンペーンを通して長期的に活動する方がインフルエンサーの説得力も増しますし、インフルエンサー自身のブランドへのロイヤリティも高まります。他にもインフルエンサーのオリジナルファッションのラインナップをブランドの名前でアピールできる、手間や時間、コストを削減できるなど、インフルエンサーとの長期タイアップには多くのメリットがあります。インフルエンサーとの関係性を今一度考える上で、ぜひ参考にしてみてください。

 

参考:https://www.tapinfluence.com/fashion-brands-think-long-term-influencer-marketing/
https://www.marketingweek.com/2016/09/16/loreal-on-why-other-brands-are-using-influencers-the-wrong-way/

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