ヘルスケア業界におけるインフルエンサーキャンペーン事例5選

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インフルエンサーマーケティングはファッションや美容など、華やかで写真映えする業界のマーケティング手法だと思われがちですが、ヘルスケア業界においても有効なマーケティング戦略として注目されています。Pew Research CenterおよびPwC Health Research社がヘルスケアに関する消費者行動について調べた結果、次のような事実が明らかになりました。

・体調不良になった時、アメリカの成人の35%が病状を把握するためにオンラインにアクセスしている
・2017年には、インターネットユーザーの16%が自分と同様の健康上の問題を抱える人を探すためにオンラインにアクセスしている
・ミレニアム世代の90%近くが、ソーシャルメディア上で見つけたヘルスケア関連の情報を信頼したり、健康を保つアクティビティを取り入れたりしている

このように、今日では多くの人々がオンラインやソーシャルメディア上で健康に関する情報収集を行っています。オンラインやソーシャルメディアはインフルエンサーマーケティングの得意分野なので、ヘルスケア業界においてインフルエンサーマーケティングが注目されているのも頷けます。今回は、ヘルスケア業界におけるインフルエンサーマーケティングの成功事例を5つご紹介します。

目次

  1. Bristol-Meyers Squibbs社の事例
  2. HealtheVoicesの事例
  3. Genentech社、Living Beyond Breast Cancer、ThirdLoveのコラボ事例
  4. HeadSpace社の事例
  5. Swedish Covenant Hospitalの事例
  6. まとめ


  7. Bristol-Meyers Squibbs社の事例

    最初に紹介するインフルエンサーマーケティング事例は、バファリンで知られるBristol-Meyers Squibbs社が3年に渡って実施したキャンペーンです。Bristol-Meyers Squibbs社は、抗生剤、抗腫瘍薬、免疫療法、HIV治療薬など幅広いジャンルの医薬品を扱っている製薬会社です。同社がガン免疫療法となる超大型新薬を発表した時、多くの人がその新薬の背景にあるガンの研究や薬の効力について無知でした。

    このことを踏まえ、Bristol-Meyers Squibbs社はガン免疫療法に対する世間の理解を深める
    ことを目的とした「Raise. Rise. Rise.」キャンペーンを3年に渡り実施。アメリカンフットボール選手のDak Prescott、テレビドラマ「Sister, Sister」で知られる人気女優のTia Mowry、人気ドラマ「モダン・ファミリー」の俳優Eric Stonestreetなど、自分や愛する人がガンになった経験を持つセレブたちとタイアップしたインフルエンサーマーケティングを展開しました。

    インフルエンサーたちは、YouTubeやインスタグラムといったソーシャルメディアプラットフォームを通じて、「ガンが自分や自分の愛する人たちの人生にどのような影響をもたらしたか」というストーリーを発信。またこのインフルエンサーマーケティングのキャンペーン名である「Raise. Rise. Rise.」の言葉を掲げた画像を投稿しようという働きかけ、キャンペーン終了までに100以上の画像がポストされました。



    HealtheVoicesの事例

    HealthVoicesは、健康をテーマとしたオンラインのコミュニティです。健康的な活動を支持する人々と患者が語り合えるネットワークとしてJohnson&Johnson社が立ち上げたもので、患者に対しよりよいサポートを提供することを目的として設立されました。現在では年に一度のカンファレンスも開かれており、健康支援者と患者が直接出会い直接意見を交換したり、特定の疾病のサポートを訴えたりできる場となっています。

    このコミュニティおよびカンファレンスは、深刻な診断を受け恐怖を感じている患者や、より深いレベルで患者のことを理解したいと考えている医療従事者にとって非常に有益なものです。そこでより多くの必要とする人がコミュニティを利用できるよう、インフルエンサーマーケティングを取り入れました。

    健康支援者でありスーパーママとして活躍するブロガーcrazycreolemamaは、インフルエンサーとして2018年のHealthVoicesカンファレンスに参加した1人です。パネルディスカッションでは司会者を担当し、ソーシャルメディアを通してHealthVoicesへの参加を促すコメントを添えたコンテンツを投稿。コミュニティがより広く認知されるよう働きかけました。

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    Genentech社、Living Beyond Breast Cancer、ThirdLoveのコラボ事例

    バイオベンチャー企業のGenentech社は、乳がん患者をサポートする非営利団体Living Beyond Breast Cancer、そして女性ブラジャーブランドのThirdLoveとコラボし、乳がんへの理解を深めるインフルエンサーマーケティングキャンペーン「Not One Type」を実施しました。

    Genentech社らは、このキャンペーンで「最高のブラジャーが人によってそれぞれ異なるように、乳がんも1人1人違う」というメッセージを発信。乳がんを克服した経験を持つテレビパーソナリティGiuliana Rancicをパートナーに迎え、乳がんについて正しい知識を持つことの重要性を訴えると共に、乳がんになっても自分らしく過ごせるとソーシャルメディアを通して応援しました。



    HeadSpace社の事例

    HeadSpace社は瞑想を専門とする英米のオンラインヘルスケア企業です。同社が提供する瞑想のアプリケーションは基本的には無料ですが、機能を追加した有料版も公開されています。HeadSpace社は2018年に、新しく開発した有料のアプリケーション「ファミリープラン」をプロモーションするために、複数のライフスタイルインフルエンサーとタイアップしてインフルエンサーマーケティングを実施しました。

    タイアップしたインフルエンサーたちは、それぞれ2つずつスポンサーコンテンツを投稿しました。そのうちの1つにはインフルエンサー単独の写真、もう1つにはインフルエンサーが家族と一緒に映った写真が使われました。長めのキャプションには個人的なストーリーが盛り込まれ、それぞれのインフルエンサーは買い物や料理に忙しくなるホリデーシーズンにHeadSpaceのアプリを活用した経験を共有しました。

    合計297万1,000人のオーディエンスにアプローチし、11万7,536件の「いいね!」と 2,170件のコメントを獲得し、エンゲージメント率は2.01%という結果になりました。



    Swedish Covenant Hospitalの事例

    インフルエンサーマーケティングは、必ずしも有名人を使う訳ではありません。Swedish Covent Hospitalが展開したインフルエンサーマーケティングは、盲点だった人材を活用したケースになります。

    シカゴにある総合病院Swedish Covent Hospitalの地域リレーションズチームは、学校、文化協会、信仰団体といった地元の団体とより親密な関係を築くことを求めていました。しかし、どこから手をつけていいか分からず途方に暮れていた時、総合病院のスタッフというリソースに目を止めたのです。

    総合病院には、医師、看護師、技師、医療事務員、清掃員など幅広い分野のスタッフが数多く働いています。そして彼らは、私生活において地元のさまざまな団体と交流しており、それはスタッフが病院と地元の団体をつなげる橋になりうるという意味も含んでいました。

    この事実を踏まえ、病院の地域リレーションズチームは地元の地域団体をターゲットとしたインフルエンサーマーケティング「地域アンバサダープログラム」を立ち上げました。病院グループに在籍するスタッフを対象に地域アンバサダーを募り、アンバサダーの地域団体の支援を実施。このターゲットを正確に把握したインフルエンサーマーケティングによって、Swedish Covent Healthグループの認知拡大へと繋げました。

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    まとめ

    今回は、ヘルスケア業界におけるインフルエンサーマーケティングの成功事例を5つ紹介しました。

    ヘルスケア業界のインフルエンサーマーケティングにはファッション業界やビューティー業界のような視覚的な華やかさはありません。しかし、「健康」というキーワードに強い興味を持つオーディエンスは多く、ヘルスケア業界がカバーするジャンルも、医薬品・フィットネス・心理学・疾病など非常に幅が広いという特徴があります。ヘルスケア業界のブランドはインフルエンサーマーケティングをうまく活用することによってビジネスを拡大させるチャンスを得ることができます。

    また、楽しむことが目的のファッション業界やビューティー業界とは異なり、健康に関する商品やサービスを提供するヘルスケア業界のオンラインマーケティングには「信頼」が欠かせません。ヘルスケア業界のブランドは、健康に関して深い専門知識を持ち、自らのフォロワーと信頼関係で結ばれているインフルエンサーとタイアップすることで、新たなオーディエンスだけではなく「信憑性」を獲得できるというメリットもあるのです。

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    参考:https://senseimarketing.com/5-examples-of-influencer-marketing-in-healthcare/
    https://www.notonetype.org/
    https://swedishcovenant.org/for-health-care-professionals/for-employees/become-a-community-ambassador
    https://www.curemelanoma.org/blog/article/join-the-ready-raise-rise-pic-your-power-challenge
    https://mediakix.com/blog/headspace-influencer-marketing-case-study-instagram/

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