今日のマーケティング業界はオンラインが中心となり、以前よりも早いスピードで変化しています。例えば、少し前まで主流だったバナー広告はソフトウェアによってブロックされるなど、10年前と同じ戦略はすでに通用しません。広告をブロックするソフトウェアのユーザー数は全世界で1億9800万人に上ると言われています。
マーケターは定期的にマーケティング戦略を見直し、ネイティブ広告(他のコンテンツとなじむように制作されたインターネット上の広告)など、より効果的なプロモーションの方法とチャネルを見極める必要があります。
ネイティブ広告で今最もトレンドになっている手法の一つがインフルエンサーマーケティングですが、インフルエンサーマーケティングにも数多くの失敗例が存在します。流行のマーケティング手法を取り入れることは必要ですが、良い結果を得るためには綿密に戦略を立てることが大切です。
今回は、インフルエンサーマーケティングの失敗事例3選と失敗の原因、そして、インフルエンサーマーケティングの失敗を防ぐ10の方法について前編と後編に分けて説明します。
おすすめ記事:インフルエンサーマーケティングの失敗事例3選【後編】
目次
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前編
- 失敗事例1: インフルエンサーマーケティングのルールを破った音楽フェス
- 失敗事例2: 当選者が分からないキャンペーン企画
- 失敗事例3: 契約に従わなかった有名インフルエンサー
- まとめ
- インフルエンサーマーケティングの失敗を防ぐ10の方法
- インフルエンサーマーケティングの失敗事例から学べること
- まとめ
後編
失敗事例1: インフルエンサーマーケティングのルールを破った音楽フェス
Fyre Festival は、インフルエンサーマーケティングの「失敗事例」として有名な音楽フェスです。Fyre Festival は、2017年にバハマ諸島で開催される予定で、世界的にも類を見ない豪華な音楽フェスになる予定でした。多額の費用をかけて400名を超えるインフルエンサーが起用され、それぞれのインフルエンサーは、YouTube や Instagram でのプロモーション、VIP ゲストとしてのフェスへの招待、バハマ諸島でのプロモーションビデオの撮影など、様々な依頼を受けました。
FTC(Federal Trade Commission = 連邦取引委員会)はインフルエンサーマーケティングを実施する際のガイドラインを設けていて、インフルエンサーと企業はそれに従う義務があります。しかし、今回の事例では、インフルエンサーと企業が FTC のガイドラインについての知識を持たないままプロモーションを実施してしまいました。
インフルエンサーはFyre Festival 側からインセンティブを受け取ってプロモーションを実施したにも関わらずスポンサーシップを開示せず、Fyre Festival に参加しているフリをしてフォロワーにチケットの購入を促しました。
プライベートジェットが手配され、豪華な食事と別荘が用意されると宣伝されていた Fyre Festival のチケットは即完売しましたが、会場に用意されていたのは別荘ではなくテントで、食事はチーズのサンドイッチという悲惨な状況でした。
結局 Fyre Festival はキャンセルされ、主催者が詐欺罪で逮捕されるという事態にまで発展しました。
失敗の原因は?
Fyre Festival では大勢の有名インフルエンサーを起用して話題を作り出し、インフルエンサーマーケティングのパワーを示す良い事例となるはずでした。しかし、結果的にはインフルエンサーの責任について考えさせられる厳しい教訓になってしまいました。
信用性が重要なインフルエンサーマーケティングにおいて、ガイドラインに沿ったプロモーションを実施することは基本と言えます。ガイドラインを無視した結果、企業とインフルエンサーはどちらもオーディエンスからの信用を失ってしまいます。
オーディエンスに広告を拒否されることを恐れてスポンサーシップの開示を躊躇する企業もありますが、近年、インフルエンサーマーケティングにおいてスポンサーシップの開示は一般的になりつつあります。詳しくはこちらの記事をご覧ください。
おすすめ記事:インフルエンサースポンサーシップの開示が企業にもたらすメリットとは?
失敗事例2: 当選者が分からないキャンペーン企画
アメリカの格安航空会社「ジェットブルー」は、搭乗料が1年間無料になる権利が当たるキャンペーンを実施しました。
ジェットブルーは話題作りのために、キャンペーンのウェブサイトからダウンロードした会社のロゴとキャプション、キャンペーンのハッシュタグを投稿することを Instagram ユーザーに求めました。
さらに、ジェットブルーはキャンペーンを盛り上げるために、トラベルやファッションを中心とした複数のインフルエンサーとタイアップしました。ところが、インフルエンサーが投稿したスポンサーコンテンツにはキャンペーンの詳細が書かれていませんでした。その結果、混乱したオーディエンスから非難のコメントが投稿されました。
ジェットブルーはキャンペーンの終了を Instagram の公式アカウントで発表しましたが、当選者を公式に発表することはありませんでした。これにより、インフルエンサーの Instagram アカウントだけではなく、ジェットブルーの公式アカウントにも抗議のコメントがたくさん寄せられました。
失敗の原因は?
ジェットブルーとタイアップしたインフルエンサーは、キャンペーンの情報を公開しなかったことによって非難されてしまいました。
インフルエンサーマーケティングを実施する上で、信用性は非常に大切です。プレゼントが当たるキャンペーンを展開することは一般的なマーケティング戦略ですが、Call To Action(行動喚起)が目的であれば、ユーザーを混乱させないようなシンプルなガイダンスが必要です。
信用性を欠いた今回のキャンペーンは、ジェットブルーのブランド名に傷を付ける結果となってしまいました。
失敗事例3: 契約に従わなかった有名インフルエンサー
俳優の Luka Sabbat さんは Instagram に170万人のフォロワーを持つ有名インフルエンサーです。Luka Sabbat さんは2018年の後半に、スナップチャットを運営する「Snap Inc.」とタイアップしたキャンペーンを実施しました。
Snap Inc. は、Luka Sabbat さんにカメラが搭載されたサングラスをプロモーションしてもらいました。Luka Sabbat さんは、6万ドル(約660万円 / 1ドル110円計算)の契約金で、パリとミラノのファッションウィーク中に、1つの Instagram 投稿と、3つの Instagram ストーリーを投稿することを承諾しました。
Luka Sabbat さんは Instagram にコンテンツを投稿しましたが、Instagram ストーリーの投稿は1件のみで、さらに、サングラスの着用を忘れるという失敗をしてしまいました。
Snap Inc. によると、Luka Sabbat さんは自身の失敗を認めていますが、インセンティブの返金は拒否しているということです。 Snap Inc. は今回の件について、「法的手段は取っていない」と認めています。アメリカのブログサイト「TechCrunch」は、今回の件で Snap Inc. が訴訟を起こした場合、同社は9万ドル(約990万円 / 1ドル110円計算)以上の費用を負担することになると報じています。
失敗の原因は?
Luka Sabbat さんは今回の件について、Snap Inc. との契約に従わなかったことを認めています。インフルエンサーが企業との契約に従わずに訴訟に発展しそうになったケースはこれが初めてではありません。
インフルエンサーと企業は、契約内容に問題がないかどうか、プロモーションを実施する前にしっかりと確認する必要があります。それを怠ると、今回の事例のようにどちらにも得のない結果になってしまいます。
まとめ
今回は、インフルエンサーマーケティングの失敗事例3選と、失敗の原因について説明しました。多くのインフルエンサーマーケティングの失敗は、綿密な計画と事前の調査によって防止することができるのです。後編では、インフルエンサーの失敗を防ぐ10の方法について説明します。
おすすめ記事:インフルエンサーマーケティングの失敗事例3選【後編】
参考:http://mediakix.com/2019/04/influencer-marketing-fails/#gs.d9qbdt
https://nativeadvertisinginstitute.com/blog/avoid-failure-influencer-marketing/
https://thetab.com/uk/2019/01/17/fyre-festival-instagram-models-89928
https://www.spectacles.com/
https://cblr.columbia.edu/influencers-under-fyre-the-case-for-greater-enforcement-of-ftc-endorsement-guidelines-against-social-media-influencers/
https://uclawreview.org/2019/03/25/fyre-festival-aftermath-new-rules-for-influencers/