プジョーはフランスで生まれた世界最古の量産自動車メーカーです。革新的な技術と設計によって自動車業界の歴史に名を刻んできたプジョーは、最先端のマーケティング手法を取り入れている自動車ブランドとしても有名です。
近年はインフルエンサーマーケティングに取り組み、これまでアプローチが難しかった若年層へのリーチを成功させています。
今回は、インフルエンサーマーケティングプラットフォーム「Influo」のインタビューで、プジョーの360°マーケティング・コミュニケーションマネージャーであるDidier Bloklandさんが語った内容を交えて、プジョーのインフルエンサーマーケティング戦略と事例を紹介します。
目次
2019年のブリュッセル・モーターショーにおけるインフルエンサーマーケティング事例
プジョーは、2019年のブリュッセル・モーターショーで、インフルエンサーマーケティングプラットフォーム「Influo」を活用したインフルエンサーマーケティングキャンペーンを実施しました。
世界的に知名度があり、ファンも多い自動車ブランドであるプジョーがなぜインフルエンサーマーケティングに乗り出したのでしょうか。プジョーのDidier BloklandさんはInfluoのインタビューで、インフルエンサーマーケティングを実施する目的について次のように話しました。
Bloklandさん:
ブリュッセル・モーターショーの際に、これまでの広告チャネルを通じてリーチする消費者とは異なるターゲット層にリーチしたいと考えました。
より自然な方法で18〜24歳の若年層にアプローチし、プジョーブランドのイメージを変えることが目的でした。具体的には、プジョーというブランドと、デザインやテクノロジーを結びつけることを若年層の消費者に求めていました。
若年層はまだ車の購入を考えていないため、プジョーに対するブランドイメージを変えるのが最も簡単な消費者層と言えます。ブリュッセル・モーターショーは、新しい「e-Legendコンセプトカー」を発表するのに最適な機会でした。
プジョー・ベルギー・ルクセンブルグは、2019年のブリュッセル・モーターショー以前にもインフルエンサーマーケティングを実施していました。
Bloklandさん:
「プジョー508」を発売する際に5人のインフルエンサーとタイアップしたキャンペーンを実施しました。そのプロジェクトが成功したので、今回はもっと規模を大きくしたいと考え、モーターショーではより多くのインフルエンサーとタイアップしました。具体的には、さまざまなタイプのオーディエンスを持つマクロインフルエンサーとマイクロインフルエンサーとのタイアップです。
インフルエンサーマーケティングキャンペーンの規模が大きくなってくると、インフルエンサーとのやり取りや管理に手間がかかるようになり、インフルエンサーマーケティングプラットフォームを活用することになりました。
インスタグラムで目にするインフルエンサーに自分たちで連絡することもできますが、クオリティの保証がありません。Influoのようなインフルエンサーマーケティングプラットフォームを活用することで、評判が良く、オーディエンスから信頼されているプロのインフルエンサーとタイアップすることができます。
マクロインフルエンサーとマイクロインフルエンサー
プジョーは、ブリュッセル・モーターショーのインフルエンサーマーケティングキャンペーンで二つの異なるアプローチを行いました。一つは、10万人以上のフォロワーを持つ「マクロインフルエンサー」にプレミアムな体験をコンテンツ化してもらう方法です。
もう一つは、フォロワーが10万人以下の「マイクロインフルエンサー」と呼ばれるインフルエンサーにプレゼントが当たるコンテストを開催し、自身の体験を語る「ストーリーテリング」を中心としたコンテンツを投稿してもらうことで、より幅広い層へのアプローチを目指しました。その目的について、Bloklandさんは次のように話しました。
Bloklandさん:
マクロインフルエンサーとマイクロインフルエンサーの両方とタイアップしたのは、プジョーにとってどのタイプのインフルエンサーが最適で、可能性を見出すことができるのかを実験したいと考えたからです。
具体的には、オーディエンスとの信頼関係があり、ブランドとも長期的な関係を築けるインフルエンサーを探していました。キャンペーンごとに異なるインフルエンサーではなく、長期的にタイアップできるインフルエンサーが理想的です。
インフルエンサーはオンライン上のプロファイルに基づいて選定しますが、インフルエンサーがブランドに合っているかどうかは、プロジェクトが終了するまで分かりません。キャンペーンがどのような結果になるかを前もって知ることは難しいのです。
ブランドに最適なインフルエンサーを見つける一番良い方法は、試行錯誤をすることだと思います。インフルエンサーとタイアップしてキャンペーンを実施し、彼らの感性でコンテンツを作成してもらいます。そして、キャンペーンが終了した後に結果を評価し、その後もタイアップを続けるかどうかを判断します。
おすすめ記事:マイクロインフルエンサーの活用術
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ブリュッセル・モーターショーにおけるキャンペーンの内容と結果
キャンペーンのゴール:
インフルエンサーを通じて車を所有していない若年層にアプローチする
作成されたコンテンツ:
19件のインスタグラム投稿
19件のインスタグラムストーリー投稿
1件のフェイスブック投稿
19件のその他のコンテンツ
キャンペーンの結果:
インプレッション – 127万件
エンゲージメント数 – 6万500件
エンゲージメント率 – 12.99%
今回のインフルエンサーマーケティングキャンペーンでは、一般的なエンゲージメント率の平均を遥かに上回る12.99%を達成し、エンゲージメント単価(CPE)は0.07ユーロという結果になりました。Bloklandさんは、キャンペーンの結果を次のように評価しています。
Bloklandさん:
このキャンペーンでは次の4つの目標を達成したいと考えていました。そして、目標以上の成果を成し遂げました。
・圧倒的に質の高いコンテンツを制作する
・プジョーの現在および今後のイノベーションの特徴についてのストーリーを伝える
・キャンペーンのハッシュタグをメンションしてもらう
・プレゼントが当たるコンテストを開催する
これまでとは異なるプジョーブランドをソーシャルメディアで印象付け、100万人以上の人々にリーチしました。インフルエンサーはプジョーについての話題を作り出し、予想よりもはるかに高いエンゲージメント率をもたらしました。今後は、インフルエンサーを起用したテレビCMなども検討しています。
また、今回のキャンペーンには多くのインフルエンサーが関わっていましたが、インフルエンサーマーケティングプラットフォームを活用することで負担を増やすことなくキャンペーン全体を管理することができました。
インフルエンサーとのすべてのやり取りからキャンペーンの進捗状況のフォローアップ、インフルエンサーがあらかじめ決められた時間にコンテンツを投稿するところまで、すべてのプロセスが専門的に処理されていました。
インフルエンサーマーケティングを実施しているブランドへのアドバイス
Bloklandさんはプジョーがインフルエンサーマーケティングに取り組んだ経験を基に、インフルエンサーマーケティングを実施しているブランドに対して次のようにアドバイスしています。
Bloklandさん:
私が過小評価したことの一つは、インフルエンサーマーケティングは想像以上に時間がかかるということです。タイアップしたインフルエンサーについて理解を深め、インフルエンサーにもブランドについて説明することで最良の結果が得られますが、そのための時間をきちんと確保しておくことが大切です。
私たちの場合は、インフルエンサーを工場のツアーに招待して自動車の製造方法を説明することや、モーターショーを個人的に案内するなどしてインフルエンサーとの繋がりを深めました。
おすすめ記事:【2019年版】究極のインフルエンサーマーケティングマニュアル
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- https://lmnd.jp/blog/ultimate-influencer-marketing-manual-2019
イギリス市場におけるインフルエンサーマーケティング事例
プジョーはイギリス市場において、ツイッターを活用したインフルエンサーマーケティングキャンペーンにも取り組んでいます。プジョーは、PRエージェンシーの「33seconds」とコラボレーションし、新型の「プジョー208」の発売に合わせて208台の車が当たるキャンペーンを実施しました。
キャンペーンでは、ある秘密の場所に車が隠され、ハッシュタグをツイートして手がかりとなる動画を視聴することで車を追跡できる仕組みを作りました。プジョーはインフルエンサーのBen Phillipsさんとタイアップし、インスタグラムの公式アカウントでも「#208Unleashed」のタグを付けてBen Phillipsさんが出演する動画を投稿しました。
プジョーの担当者は、「マーベルが同様の手法で新しいアベンジャーズ映画の予告編を視聴できるようにしていました。今回のキャンペーンは、若年層をターゲットにする絶好のチャンスだと思いました。」と話しています。キャンペーンには6,000件を超える応募があり、1,700万人以上が参加しました。
主に「中年男性向けのテレビ広告」に焦点を当てているブランドが多い自動車業界の中で、プジョーはデジタルプラットフォームに着目し、従来の広告媒体ではリーチできなかった若年層の間で確実にプジョーの名前を広めています。
おすすめ記事:自動車業界のインフルエンサーマーケティング事例【タイヤメーカーMichelin(ミシュラン)】
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2018年のクリスマスシーズンに実施したインフルエンサーマーケティング事例
もう一つ、プジョーが実施したインフルエンサーマーケティング事例を紹介します。プジョーは、ブランド認知度の向上とイメージを強化するために、2018年のクリスマスシーズンに合わせてインフルエンサーマーケティングキャンペーンを実施しました。
インフルエンサーによるストーリーテリング(体験を語ること)を通じて、プジョーを単なる「自動車」ではなく、「プジョーがあるライフスタイル」をより身近に感じられるようにしました。
ライフスタイルインフルエンサーでインスタグラムに5万4,000人のフォロワーを持つ@yourlbbさんは、家族とクリスマスディナーに出かけて家に帰る途中の車内の様子をコンテンツとして投稿し、フォロワーからは「メリークリスマス!」「素敵な写真」など、ポジティブなコメントが多く寄せられました。キャプションでは車の機能などについては全く触れられず、@yourlbbさんはあくまでも自分の体験を伝えることに徹しています。
インフルエンサーは日頃から自分のライフスタイルをコンテンツとして投稿しています。その中に自然な形でプロモーションしたい商品やサービスを馴染ませることによって、フォロワーがインフルエンサーのライフスタイルを疑似体験し、商品やサービスに興味を持ってもらうことができます。
おすすめ記事:自動車業界を変えつつある7人の女性インフルエンサー
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まとめ
今回は、プジョーのインフルエンサーマーケティング事例を、社員へのインタビューを交えて紹介しました。
プジョーのように世界的に知名度の高いブランドはすでにブランディングに成功しているケースが多く、ブランド名を聞いただけでユーザーのイメージが浮かぶ人も多いでしょう。しかし、ブランディングに成功しているということは、裏を返せばターゲットユーザー以外へのアプローチが難しいということにもなります。
新たに開拓したい年齢層などが決まっている場合は、そのターゲット層をフォロワーに持つインフルエンサーとのタイアップが効果的です。イメージがしっかりと固まっているブランドこそ、これまでのブランドイメージとは異なるインフルエンサーとタイアップすることによって新たな顧客層の開拓が一気に進むかもしれません。
参考:https://fuse-communication.com/work-case/peugeot-influencer-campaign-2018/
https://33seconds.co/blog/our-uk-first-peugeot-social-media-campaign-reaches-17-million-people