資生堂アメリカのインフルエンサーマーケティング事例

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老舗コスメブランドの資生堂は、アメリカ市場において若年層ユーザーの獲得とブランドイメージの刷新という大きな課題を抱えていました。

新しいカラーコスメコレクションを2018年8月に発売して以来、ミレニアル世代の間でブランドの認知度を高めるうえで、インフルエンサー戦略の重要性を認識してきました。

2019年にはすべてのブランド戦略にインフルエンサーマーケティングを組み込み、その後、インフルエンサーへの支出を米国で50%以上増やしています。また、同社はインフルエンサーマーケティングをベースに、美容に関するオンラインメディアやEコマースプラットフォームなど、さまざまな場所で話題作りに成功しています。

今回は、資生堂アメリカのインフルエンサーマーケティング事例と戦略を紹介します。

目次

  1. プレステージブランドの拡販にインフルエンサーマーケティングを活用
  2. カラーメイクで若年層の取り込みを図る
  3. スキンケアカテゴリのインフルエンサーマーケティング事例
  4. まとめ


  5. プレステージブランドの拡販にインフルエンサーマーケティングを活用

    資生堂ブランドにはいくつかのカテゴリが存在し、デパートや化粧品専門店などでカウンセリングを通じて販売されている高価格帯化粧品やフレグランスは「プレステージ」と呼ばれています。

    これまで、「スキンケアへの投資を惜しまないプレステージカテゴリのユーザーはインスタグラムで活躍するインフルエンサーからの情報収集は行っていない」という考え方から、ソーシャルメディアへの対応が遅れていました。しかし、購入までの道のりは長くなるものの、資生堂は長期的な顧客獲得を目標としてインフルエンサーマーケティング戦略の刷新に取り組みました。

    具体的には、不定期だったインフルエンサーとのタイアップを、フォロワー数の異なる複数のインフルエンサーとの定期的なパートナーシップを含む契約に切り替え、より戦略的なアプローチに置き替えました。インフルエンサー戦略の重要な要素の1つは一貫性だと考え、時間をかけて消費者との信頼関係を築くことが狙いです。

    資生堂アメリカの社長であるMelissa Sperauさんは、「グローバルなインフルエンサーのさまざまな層を組み合わせることで、製品の発売にハロー効果が生まれます。」と述べています。

    さらに資生堂は、通常の美容インフルエンサーの枠を超えて、ライフスタイルやフィットネスのインフルエンサーとタイアップし、より幅広いオーディエンスとの接点を持つことを計画しています。

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    カラーメイクで若年層の取り込みを図る

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    資生堂は2018年8月に新しいカラーコスメのラインナップを展開し、既存の商品を小売店とEコマースサイトから一掃しました。同社は、2018年のインフルエンサーへの投資は前年比で2倍になり、その大部分が今回のカラーコスメラインナップの再構築に向けられていると話しています。

    米国の市場調査会社「NPD Group」によると、2017年のプレステージ・ビューティーマーケットの最大のカテゴリはカラーコスメで、売上高は81億ドルだといいます。カラーコスメのユーザーは主にミレニアル世代を中心とした若年層ユーザーで、資生堂もその市場を狙っています。

    コスメ業界では、すでに多くのブランドが若年層に向けてインフルエンサーマーケティングを実施しています。ソフトウェアおよびデータインサイト会社「Launchmetrics」による最近のインフルエンサーレポートによると、美容ブランドの約80%がインフルエンサーマーケティングを実施し、それらのブランドのうち76%がミレニアル世代をターゲットにしているといいます。

    資生堂は、同社のスキンケアカテゴリの商品を購入する顧客が高齢化しているという課題を抱えていました。そこで、カラーメイクをきっかけに、25〜35歳の消費者をブランドに引き込むことを考えました。

    キャンペーンの内容

    資生堂は、女優のJamie Chungさん、ユーチューバーのAlissa Ashleyさん、ライフスタイルインフルエンサーのCHINAE ALEXANDERさんをはじめとした200人のマクロおよびマイクロインフルエンサーとタイアップしました。

    ライフスタイルインフルエンサーのALEXANDERさんは、資生堂のカラーコスメでメイクをした写真をインスタグラムに投稿し、「メイクの一番好きなところは、一瞬で違う自分に変身できることです。メイクは自分の嫌いなところを隠すためのものでも、必要だからするものでもありません。楽しむためのものです。」と述べました。

    女優のJamie ChungさんとライフスタイルインフルエンサーのALEXANDERさんは、過去に資生堂とタイアップした経験があります。Chungさんはインスタグラムに110万人のフォロワーを持ち、2018年1月にロサンゼルスで行われた資生堂のスキンケア発売イベントで1億730万件のインプレッションを獲得しています。

    一方、ALEXANDERさんはインスタグラムに15万5,000人のフォロワーを持ち、2018年11月の東京へのプレストリップ後に行われた資生堂スキンケアのインフィード製品レビューにおいて、2万件のインプレッションを獲得しました。

    資生堂がフォロワー数の全く異なる複数のインフルエンサーとタイアップしていることは、幅広いインフルエンサーとタイアップすることの重要性を表しています。資生堂の統合コミュニケーションのヴァイスプレジデントであるTiffani Carter-Thompsonさんは次のように述べました。

    「私たちはインフルエンサーのフォロワー数や人気だけを見ているのではありません。インフルエンサーは、私たちのブランドとメッセージにとって「本物」でなければなりません。」

    さらに同社は、市場調査と製品レビューのプラットフォーム「Influenster」や、グローバルマーケティングサービスおよびメディア企業「StyleHaul」、ソーシャルコマース企業「Curulate」と協力し、カラーコスメに関する話題を拡散してもらいました。

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    スキンケアカテゴリのインフルエンサーマーケティング事例

    資生堂は、2019年2月に、スキンケアカテゴリである「アルティミューン パワライジング コンセントレート」と「オーデマイン リバイタライジング エッセンス」のインフルエンサーマーケティングキャンペーンを実施しました。キャンペーンの目的は、18歳から34歳までの消費者層においてブランド認知度を高めることです。

    キャンペーンの内容

    キャンペーンでは、美容編集者からインフルエンサーに転向したKahlana Barfield Brownさんとタイアップしました。資生堂は、Barfield Brownさんと、デジタルライフスタイルサイトである「The Coveteur」を東京に招待し、インスタグラムとThe Coveteurのホームページ、さらには資生堂のホームページで使用するためのコンテンツを作成しました。

    Barfield Brownさんはインスタグラムに26万人のフォロワーを持ち、2020年1月に「勉強のために日本のShiseidoを訪れました。」とコンテンツを投稿しています。

    さらに、資生堂はグローバルマーケティングサービスおよびメディア会社である「Stylehaul」の協力を得てインフルエンサープログラムを立ち上げました。毎月10名〜12名の異なるインフルエンサーに依頼して、それぞれのソーシャルメディアアカウントにブランドに関するコンテンツを投稿してもらいます。

    Stylehaul社を通じてEコマースプラットフォームである「MikMak」とも提携し、インフルエンサーのコンテンツを活用したショッピングを体験できる場も提供しました。

    キャンペーンの結果

    ・The Coveteurによると、Barfield Brownさんを特集した記事に関する情報は5通のメールマガジンで幅広く拡散され、特集記事の平均ページビューは通常の2倍を記録

    ・インスタグラムでは動画とインスタグラムストーリーを活用したキャンペーンが実施され、スポンサードコンテンツは1万8,000件近くの「いいね!」と287件のコメントを獲得

    ・資生堂アメリカの公式ホームページへのクリック数は予想の2倍を記録

    ・動画の完了率は、ブランドのベンチマークを大きく上回る90%以上を記録

    さらに、細かい数値は明らかにされていないものの、セフォラやメイシーズといったコスメの小売店において、今回のキャンペーンでプロモーションされたスキンケア製品以外の資生堂のラインナップ全体に良い影響があったといいます。

    キャンペーンから学べること

    今回のキャンペーンは、インフルエンサーのBarfield Brownさん自身がターゲットオーディエンスの年齢層と一致しており、ブランドのメッセージがうまく伝わったことが成功の大きな要因と考えられます。

    Barfield Brownさんは次のように述べています。

    「私はこれまで、資生堂は「お母さん」の年齢をターゲットにしていると思っていました。しかし、資生堂はそんなブランドイメージをリフレッシュしてモダンになる方法を見つけるために取り組みを行ってきました。私のフォロワーは、私が発信するスポンサードコンテンツに強い興味を持っています。なぜなら、商品の良さをフォロワーがリアルに感じているからです。」

    米国では、「日本の美」に対する注目が高まっており、資生堂はそれをうまく活用して強力なインフルエンサーマーケティング戦略に繋げ、ライバルブランドとの差別化に成功しています。

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    まとめ

    今回は、資生堂アメリカのインフルエンサーマーケティング事例と戦略を紹介しました。

    コスメ業界は非常に競争が激しく、海外ブランドがシェアを獲得することは容易ではありません。資生堂はアメリカにおいて市場シェアを拡大するためにインフルエンサーとのタイアップキャンペーンを実施し、オンラインプラットフォームを活用して話題を作り出し、若年層ユーザーに効果的にアプローチしています。

    また、フォロワー数が多い有名インフルエンサーだけではなく、マクロインフルエンサーやマイクロインフルエンサーといった比較的フォロワー数が少ないインフルエンサーとのタイアップも戦略に組み込むことによって、より幅広いオーディエンスへのリーチを実現しています。

    資生堂は今後も、ブランドの顔として活躍してくれるインフルエンサーのチームと共に新たなインフルエンサーマーケティングキャンペーンを展開していくことでしょう。

    参考:https://www.glossy.co/beauty/shiseido-is-increasing-its-influencer-marketing-spend-by-50-percent-in-2019
    https://www.ion.co/why-beauty-brands-are-master-influencer-marketing-puppeteers
    https://www.glossy.co/new-face-of-beauty/shiseido-makes-big-bet-on-influencers-in-search-of-a-younger-customer
    https://www.voguebusiness.com/beauty/shiseido-comeback-plan-nars-drunk-elephant

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