カリフォルニア州コスタメサに拠点を持つアパレルメーカー「VANS」は、年間118億ドルの売上がある人気のブランドです。VANSの歴史はスケートボーダー用のシューズ開発から始まり、スケートボードが人気を集めると、VANSの名前も次第に有名になっていきました。
VANSは、創立当初からプロスケートボーダーと協力してブランドの歴史を作り上げてきました。「特定のジャンルで強い影響力を持つ人物と協力する」という手法は、まさに現代のインフルエンサーマーケティングの考え方と同じです。
今回は、そんなVANSのソーシャルメディア戦略とインフルエンサーマーケティング事例を紹介します。
目次
- VANSのインフルエンサーマーケティング成功方程式
- VANSの次なるソーシャルメディア戦略
- 「VANS Made for the Maker」インフルエンサーマーケティングキャンペーン
- 「VANS UltraRange」インフルエンサーマーケティングキャンペーン
- まとめ
VANSのインフルエンサーマーケティング成功方程式
「インフルエンサー」というオンライン上の有名人が登場する前は、プロ野球やサッカー選手、俳優といった、世間に幅広く名の知られた有名人を広告に起用するのが一般的でした。当時、まだ小さな会社だったVANSにとって、これらの「超有名人」とのコラボレーションは現実的ではありませんでした。
スケートボードは当時まだニッチなスポーツでしたが、VANSはスケートボーダーのためのシューズを開発することに力を注ぎました。そして、スケートボード界の新興スター製品とタイアップし、商品開発から広告まであらゆる面で協力しました。
インフルエンサーに商品についての意見を聞くだけではなく、商品開発の段階からマーケティングチームに加わってもらうことによって、インフルエンサーとの信頼関係が生まれます。
「ニッチな分野で強い影響力を持つ人にブランドや商品をプロモーションしてもらう」という考え方は、まさに現代のインフルエンサーマーケティングと同じ手法です。
VANSは、スケートボーダーとタイアップすることによって、「スケートボード = VANS」というイメージを確固たるものにしました。もし、VANSが世間に幅広く名前が知られている有名人を起用した広告を展開していたら、ブランドの未来は全く違うものになっていたでしょう。
インフルエンサーマーケティングは長期的に行うことによって成果を発揮しますが、マーケターの中にはインフルエンサーを広告チャネルの一つとして認識している人々も多く、インフルエンサーと単発契約を結んでいるブランドも数多くあるのが現状です。
インフルエンサーと長期契約を結ぶメリットについてはこちらの記事にまとめてあります。
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VANSの次なるソーシャルメディア戦略
VANSは、2018年1月に、自社で初めてのグローバル・エグゼクティブ・クリエイティブディレクターであるErwin Federizoさんを採用しました。Federizoさんは、ソーシャルメディアにおけるVANSの一貫性の向上に焦点を当てています。
VANSは、2017年2月15日から2018年2月15日までの間に、VANSがメンションされたソーシャルメディアコンテンツを分析し、そのうちの74%が米国からのものであることが明らかになりました。3%を占める英国は次に大きな市場であり、続いて、ブラジル、メキシコ、インドネシアといった新興市場が1%の割合を占めることが分かりました。
今日、VANSブランドは幅広い方面から高く評価されていますが、Federizoさんは、新興市場に参入するためには、ブランドの「社会的声を強化する必要がある」と考えています。そして、新興市場でVANSのフォロワーを増やす方法を見つけることが「TODOリスト」の一番上にあると述べました。
VANSにとって、アジア、特に中国はブランドが成長するための大きな機会と言えます。WeChatは、VANSの中国最大のソーシャルネットワークであり、VANSが存在してきた10年のほとんどの間、VANSのマーケティングにおける定番のプラットフォームになっています。
「VANSはアプリでのコンテンツ公開で大きな成功を収めている」と、VANSのグローバル統合マーケティング担当ヴァイスプレジデントであるNick Streetさんは述べています。
VANSは、WeChatでのライブストリーミング動画のエンゲージメントが、他の市場の他のソーシャルネットワークに投稿された動画よりも高いと見ています。ただし、WeChatでのVANSのコンテンツの約70%はグローバルチームからのものであるため、「地元のマーケティングチームが発信するコンテンツほどローカライズされていない」とStreetさんは考えています。
欧米市場とは文化的に大きな違いがある中国のような市場でグローバルな一貫性を維持することは、ブランドのコンセプトを理解するための鍵となりますが、ローカル戦略を犠牲にするべきではありません。
VANSのグローバルマーケティングチームは、厳選されたコンテンツをブランドの全体的なテーマとアイデンティティにリンクさせ続けることを重視する必要があります。 Streetさんは、次のように話しています。
「実際には、より多くの中国にいるフォロワーが、WeChatで活躍する私達のインフルエンサーやその仲間のファンからブランドについてもっと多くのことを聞かせて欲しいと思っています。」
VANSはこれまで、独自のクリエイティブなアイデアを考え出し、プロジェクトごとにエージェンシーと協力してきました。今後、VANSがインフルエンサーマーケティングを含んだソーシャルメディア戦略をローカライズさせるにあたって、現地のエージェンシーやインフルエンサーの協力は増々重要になっていくでしょう。
「VANS Made for the Maker」インフルエンサーマーケティングキャンペーン
ここからは、VANSによるインフルエンサーマーケティング事例を紹介していきます。
VANSの「Made for the Makersシリーズ」は、アーティストやカメラマン、タトゥーアーティストなど、新しい何かを生み出す「Markers(作り手)」のアクティブな生活に最適なシューズというコンセプトで開発されました。
このシューズコレクションは、情熱と創造性によって生計を立てている人々からインスピレーションを得ています。VANSは、Made for the Makersシリーズが、スタイリッシュで快適で、用途が広いシューズであることをアピールするために、インフルエンサーマーケティングキャンペーンを実施しました。
キャンペーンでは、バイクのライダー、美容師、日本の起業家、ライター、俳優、ジャマイカのポップアップレストランのオーナーなど、複数のインフルエンサーとのタイアップが行われ、それぞれのインフルエンサーが創作活動でVANSのシューズを着用しました。
「VANS UltraRange」インフルエンサーマーケティングキャンペーン
「Vans UltraRange」は、アクションスポーツとカルチャーが融合し、これまでにない機能性と快適性を備えたシリーズです。
VANS UltraRangeキャンペーンでは、ニューヨークやドバイに拠点を持つプロモーション会社「Because」の協力の元、ドバイで活躍するエネルギッシュでアクティブな地元のマイクロインフルエンサーとタイアップしました。キャンペーンでは、ドバイにあるアルクドラ砂漠をインフルエンサーが冒険しました。
制作された動画はブランドの個性に合わせてペースを上げてカットされ、エネルギッシュなサウンドトラック、パチパチと音を立てるキャンプファイヤー、砂漠の暑さ、夕暮れに至るまでのすべてのアクションを捉え、ダイナミックな仕上がりになりました。動画をより多くの人に見てもらうために、タイアップしたインフルエンサーは、それぞれのインスタグラムアカウントで動画を紹介しました。
まとめ
今回は、VANSのソーシャルメディア戦略とインフルエンサーマーケティング事例を紹介しました。
スケートボードシューズとして始まったVANSブランドは、今や世界中に幅広く名前が知られていますが、今後は新興市場を中心としたローカライズ戦略がVANSにとって重要な課題となります。
その課題を克服するために、インフルエンサーマーケティングプラットフォームを含む地元のエージェンシーや、その地域で活躍するインフルエンサーの協力は欠かせないものになるでしょう。
参考:https://www.entrepreneur.com/article/355106
https://www.becausexm.com/work/vans-made-for-the-makers-influencer-content-campaign
https://www.vansjapan.com/
https://www.becausexm.com/work/vans-ultrarange-influencer-campaign
https://digiday.com/media/inside-vans-social-media-strategy/