ファッション・時計業界のインフルエンサーマーケティング【Daniel Wellingtonの戦略】

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ソーシャルメディアマーケティング会社の「Socialbakers社」によると、時計ブランドのDaniel Wellingtonは、2018年にインフルエンサーからのメンションが最も多かったブランドで、7,200人のインフルエンサーから2万件ものメンションを獲得しました。

Daniel Wellingtonはインスタグラムでのプロモーションのパイオニアとして、インフルエンサーマーケティングを中心に施策を展開しています。無名ブランドだったDaniel Wellingtonが世界中の有名人に愛されるブランドへと成長するまでの道のりは、どのようなものだったのでしょうか。

今回は、Daniel Wellingtonがインフルエンサーマーケティングを始めるまでの経緯と、Daniel Wellingtonのインフルエンサーマーケティング戦略について詳しく解説します。

目次

  1. Daniel Wellingtonブランドの始まり
  2. Daniel Wellingtonのインフルエンサーマーケティング戦略
  3. Daniel Wellingtonのインフルエンサーマーケティング戦略から学べる5つのこと
  4. まとめ


  5. Daniel Wellingtonブランドの始まり

    スウェーデンの高校を卒業したばかりのFilip Tysanderさんは、2011年にオーストラリアへ向かうバックパッカー旅行をしていました。Daniel Wellingtonブランドは、その旅行中にTysanderさんが一人のイギリス人男性に出会ったことから始まりました。

    Tysanderさんは、Daniel Wellingtonさんというイギリス人男性が身に着けていたロレックスのビンテージ腕時計に魅了されました。その腕時計には、一般的な皮や金属のベルトではなく、布製のベルトが使われていました。

    クラシックなビンテージの時計とナイロン製のベルトという異色のコンビネーションにインスピレーションを得たTysanderさんは、自ら時計ブランドを立ち上げ、「Daniel Wellington」と名づけました。

    その後、Daniel Wellingtonはヨーロッパの中でも「急成長を遂げたブランド」と呼ばれるようになり、2014年の終わりまでに100万本を超える腕時計の販売に成功しています。その裏には、インフルエンサーマーケティングを中心としたDaniel Wellingtonの強力なブランディング戦略がありました。

    限られたマーケティング予算

    スタートアップ企業だったDaniel Wellingtonには、無論のことマーケティングにかける膨大な予算はなく、テレビ広告や有名雑誌でのプロモーションに資金を投じることを躊躇していました。

    Tysanderさんは限られた予算の中で実行可能な宣伝方法を考えた末、ソーシャルメディアを活用したマーケティング戦略に集中することにしました。

    Tysanderさんは、数あるソーシャルメディアプラットフォームの中でも、早い段階からインスタグラムに着目していました。視覚に訴えるソーシャルメディアとして一番魅力的だったのがインスタグラムだったからです。そして、カジュアルなナイロン製のベルトが付いたDaniel Wellingtonの時計は、ソーシャルメディアのメインユーザーである若年層に最もマッチするということも知っていました。

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    Daniel Wellingtonのインフルエンサーマーケティング戦略

    家族や身近な友人をフォロワーにすることから始めたDaniel Wellingtonのインスタグラムアカウントには、現在420万人のフォロワーがいます。Tysanderさんはインスタグラムがどのように機能しているかを学び、一般的な有名人ではなく、ソーシャルメディアで活躍するインフルエンサーのプロモーション力に着目しました。

    当時はまだ、「インフルエンサー」という名称自体が世の中に浸透していませんでしたが、そのような時代から、Tysanderさんは次のようなインフルエンサーマーケティング戦略を実施していました。

    小規模インフルエンサーの活用

    ロレックスやSwatchなどの競合ブランドとは対照的に、Daniel Wellingtonは有名人を起用したテレビや雑誌広告に予算を投じることはせず、インスタグラムを中心としたソーシャルメディア上でのプロモーションを続けることでブランド認知度を拡大していきました。

    Tysanderさんはインフルエンサーの影響力の強さに早い段階から気づいており、とりわけ、フォロワー数が少ないインフルエンサーはフォロワーとの信頼関係が強いと考えました。

    Daniel Wellingtonにとって、ソーシャルメディアは単に商品をプロモーションするだけの場ではありませんでした。インフルエンサーやそのフォロワーとコミュニケーションを取り、商品についてのフィードバックをもらい、繋がりを深めていきました。こうして、「Daniel Wellington」というブランド名は、小規模インフルエンサーの活躍によってインターネット上にどんどん広がっていきました。

    キャンペーンコードの配布

    Tysanderさんは、ブランドを創業したばかりでマーケティング予算が限られている時代に、時計のサンプルをインフルエンサーに無料で配布してインスタグラムでプロモーションしてもらうことを思いつきました。その際に、インフルエンサーマーケティングキャンペーンの効果を測定するために、固有の割引クーポンコードを各インフルエンサーに割り当ててコンテンツのキャプションに載せてもらうことも忘れませんでした。

    この当時Tysanderさんがアプローチしたインフルエンサーの多くは、喜んでDaniel Wellingtonの時計を着用したクリエイティブなコンテンツを投稿しました。このインスタグラムインフルエンサーマーケティングにより、従来のテレビや雑誌広告よりも遥かに安いコストでブランドの露出を増やす事に成功しました。

    トレンドを作り出す立場のインフルエンサーが実際にDaniel Wellingtonブランドの時計を身に着けているコンテンツは、ソーシャルメディアユーザーに大きな影響を与えました。

    クリエイティブコントロールをインフルエンサーに委ねる

    Daniel Wellingtonとタイアップしているインフルエンサー達は、実にさまざまなテイストのコンテンツを普段からインスタグラムに投稿しています。

    クリエイティブコントロールをインフルエンサーに任せることによって、商品のさまざまな魅力が引き出されます。また、自分のフォロワーがどのようなコンテンツを好むのかを一番よく知っているのはインフルエンサー自身です。フォロワーの好みに合わせたコンテンツをタイアップしたインフルエンサーに自由に制作してもらうことによって、ブランドは、より幅広いオーディエンス層に対して効果的にアプローチすることができます。

    ターゲットを絞ったハッシュタグ

    インフルエンサーがDaniel Wellingtonの時計に関するコンテンツを投稿する際は、#danielwellingtonというブランドハッシュタグを使っています。創業時からDaniel Wellingtonとタイアップしていたインフルエンサーだけでなく、他のインフルエンサーやソーシャルメディアユーザーも徐々にコンテンツやコメントに#danielwellingtonのハッシュタグを使うようになっていきました。

    #danielwellingtonのハッシュタグは、これまでに180万件のコンテンツで使用されています。ハッシュタグが使われた回数はインフルエンサーマーケティングにおいて重要なパフォーマンス指標で、どのようなビジネスにも応用できます。

    また、ブランドハッシュタグだけではなく、インフルエンサーマーケティングキャンペーンを実施する際は、キャンペーン固有のハッシュタグを設けることによって効果測定が容易になります。

    UGC(ユーザー生成コンテンツ)の活用

    Daniel Wellingtonは、これまでに複数の写真コンテストを開催してきました。プレゼント企画やコンテストなどのユーザー参加型イベントは、オーディエンスからの反応が良くなる傾向があります。インフルエンサーマーケティングと合わせてUGCを積極的に活用することで、効果的に話題を作り出すことができます。

    Daniel Wellingtonが主催する写真コンテストの一つである “Pick of the day” では、#DWPickoftheDayのハッシュタグを付けて、Daniel Wellingtonの時計を身に着けた写真をインスタグラムに投稿するようにオーディエンスに呼びかけました。

    優秀な写真はDaniel Wellingtonの公式アカウントで紹介され、その投稿者にはDaniel Wellingtonの時計がプレゼントされます。このコンテストでは#DWPickoftheDayというコンテストのハッシュタグが、5万4,000件以上のコンテンツに使用されました。

    このように、Daniel Wellingtonはさまざまなインフルエンサーマーケティング施策を打ち出してきました。インフルエンサーとタイアップしながらUGCを活用することによってオーディエンスをインスパイアし、「よりクリエイティブなコンテンツを作ってブランドと関わりを持ちたい」と思わせたことが成功に繋がっています。

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    Daniel Wellingtonのインフルエンサーマーケティング戦略から学べる5つのこと

    1. 潜在顧客がいる場所を知る

    Daniel Wellingtonは、カジュアルさと上品さのバランスが良く、ファッション性の高いブランドです。Daniel Wellingtonが、流行に敏感な若年ターゲット層にアプローチするにあたって、ソーシャルメディアが最も適切なプラットフォームでした。

    ブランドの特徴を理解し、ブランドの受容性が高い潜在顧客がどこにいるのかを見極め、彼らに効率的にアプローチするためにはどのような手法を取れば良いのかを考えた結果、Daniel Wellingtonはインスタグラムでのインフルエンサーマーケティングという選択をしました。

    2. ブランドのイメージを支持してくれるインフルエンサーを選択する

    多くのブランドは、業界で有名なインフルエンサーとのタイアップを望みますが、Daniel Wellingtonは知名度がそれほど高くないインフルエンサーと数多くタイアップしてきました。世間での知名度よりも、ブランドに合うインフルエンサーを優先したことが現在のDaniel Wellingtonの成功に繋がっています。

    インフルエンサーマーケティングは、適切なインフルエンサーとタイアップしなければ失敗に終わります。

    例えば、自動車メーカーのボルボは、2015年にファッションのエキスパートで、モデル・ブロガーでもあるChriselle Limさんとタイアップして、ボルボがデザインした車の洗浄液をプロモーションするインフルエンサーマーケティングキャンペーンを実施しました。

    Limさんはインスタグラムに100万人を超えるフォロワーがいる有名インフルエンサーですが、彼女は、ライフスタイルや旅行・ファッション・美容などに関するコンテンツを投稿することで知られていたため、車の洗浄液のプロモーションは彼女のフォロワーにとって違和感がありました。

    ボルボがLimさんに商品の宣伝の話を持ちかけたことは明らかで、一部のフォロワーは怒りを露わにし、キャンペーンは失敗に終わりました。騒動の後、Limさんはボルボとのパートナーシップについて自らのフォロワーに説明しなければなりませんでした。

    Daniel Wellingtonのインフルエンサーマーケティングでは、ブランドと、ブランドのストーリーに合ったインフルエンサーが慎重に選定されています。ボルボの事例のように、知名度だけで有名インフルエンサーにプロモーションを依頼すると失敗の元になります。

    3. ソーシャルメディアユーザーと良い関係を築く

    Daniel Wellingtonのソーシャルメディアチームは、インフルエンサーと、そのフォロワーとの関係性を構築することに多くの時間を使っています。Daniel Wellingtonのこういった努力は、ブランドとインフルエンサー双方に利益をもたらしています。

    良い関係性を築くためのマネージメントにはお金と時間がかかります。たとえインフルエンサーが無料でブランドのプロモーションを行ってくれたとしても、インフルエンサーは自らのフォロワーとの関係構築に相当な手間と時間をかけているため、そういう意味では、インフルエンサーマーケティングは「安くて簡単な施策」ではありません。

    ブランド側は、インフルエンサーの影響力は日々の努力の積み重ねによって作られているということをしっかりと認識した上で、インフルエンサー・ソーシャルメディアユーザー・ブランドの三者で信頼関係を築く努力をする必要があります。

    4. 自由度の高いコンテンツ

    個々のインフルエンサーのセンスが光るコンテンツは、時にユーモアに溢れ、時にアーティスティックです。Daniel Wellingtonのインフルエンサーコンテンツは高い自由度を保ちながらも、「ブランドの魅力をオーディエンスに伝える」という共通の目標もしっかりと達成できています。

    ブランドは、クリエイティブ面での自由をインフルエンサーに与えつつ、ブランドのコミュニケーション戦略のコントロールを失わないようにすることが大切です。

    5. 目に見える評価指標

    多くのブランドは、「インフルエンサーマーケティングの成果を評価するのは難しい」と考えています。一方、Daniel Wellingtonは、各タイアップインフルエンサーが固有の割引コードを持っているため、どのインフルエンサーのフォロワーがブランドの顧客になったかが一目瞭然です。目に見える評価指標を設けることは、インフルエンサーマーケティングキャンペーンの成功度を測る上でとても大切です。

    このように、Daniel Wellingtonのインフルエンサーマーケティングは非常に戦略的です。しかも、その戦略は奇をてらったものではなく、今日では「インフルエンサーマーケティングの基本」と呼ばれているものばかりです。

    Daniel Wellingtonは、インフルエンサーマーケティングの成功法則が確立されるずっと以前からこれらの戦略を取り入れていることから、「インフルエンサーマーケティング界を牽引するブランド」と呼ばれています。

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    まとめ

    今回は、Daniel Wellingtonがインフルエンサーマーケティングを始めるまでの経緯と、基本的なインフルエンサーマーケティング戦略について詳しく解説しました。

    Daniel Wellingtonは、インフルエンサーマーケティングが世間に広まるずっと前からインフルエンサーの影響力の強さに着目し、Daniel Wellingtonブランドのメインターゲットである若年層が集まるソーシャルメディアを活用してインフルエンサーマーケティングキャンペーンを実施してきました。

    Daniel Wellingtonのインフルエンサーマーケティング戦略は、現在では「インフルエンサーマーケティングの基本」と言われているようなベーシックな内容で構成されています。インフルエンサーマーケティングに関するノウハウが世に出回る前からその成功法則を確立し、インフルエンサーマーケティングキャンペーンを続けてきたことがDaniel Wellingtonの人気に繋がったと言えます。

    効果的なインフルエンサーマーケティングを実施するためには、適切なインフルエンサーを通じて、ブランドの魅力をターゲットオーディエンスに伝えることが大切です。

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    参考:https://econsultancy.com/why-influencer-marketing-is-still-a-winning-strategy-for-daniel-wellington/
    https://pmyb.co.uk/daniel-wellington-turned-15000-220-million-within-4-years-influencers/
    https://digitalvalueblogblog.wordpress.com/2017/11/02/learning-from-the-best-why-daniel-wellington-wins-the-influencer-marketing-game/
    https://www.planoly.com/blog/portfolio/daniel-wellington-instagram/

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