ハーゲンダッツは、米国の大手食品会社であるゼネラル・ミルズが所有するアイスクリームブランドです。
ハーゲンダッツはオンラインを中心としたインフルエンサーマーケティングキャンペーンと、サンプリングや対面イベントなどのオフライン戦略をうまく組み合わせて、話題作りと売上の向上を実現しています。
今回は、そんなハーゲンダッツのインフルエンサーマーケティング事例を紹介します。
目次
1. ニューヨークに焦点を当てたローカルインフルエンサーマーケティング事例
ハーゲンダッツは、ニューヨーク在住のオーディエンスに焦点を当てた「ハーゲンダッツオープンコンテナ」と呼ばれるインフルエンサーマーケティングキャンペーンを実施しました。エリアを絞ったインフルエンサーマーケティングキャンペーンを実施する際のポイントは2つあります。
1つは、地元に住んでいるインフルエンサーとタイアップすることです。ターゲットとなるエリアに住んでいるインフルエンサーが作成したコンテンツは、必然的に地元住民の生活に関連するものになります。
キャンペーンでは実際に、ニューヨークのにぎやかな通りや有名なブラウンストーンの階段、地元の人であれば識別できる屋上からの風景など、ニューヨークらしいコンテンツが多数作成されました。
そして2つ目は、オーディエンスの属性を確認することです。多くの人に名前を知られている有名なインフルエンサーのフォロワーは居住地もさまざまです。
ニューヨークの人口は、米国全体の約6%にすぎません。エリアを絞ったインフルエンサーマーケティングキャンペーンでは、ターゲットとなるエリアに住んでいるインフルエンサーの中でも地元密着型で活動し、そのエリアに住むオーディエンスをフォロワーに持つインフルエンサーとタイアップする必要があります。
今回のキャンペーンは、コンテンツがターゲット層に確実に到達するように、いくつかの異なる戦略の組み合わせによって実施されました。ソーシャルメディアだけではなく、地元密着型の情報サイトやモバイルチャネルなどを通じて、コンテンツが適切なオーディエンスに適切なタイミングで到達しました。
また、インフルエンサーマーケティングプラットフォームのシステムを活用し、ニューヨーク周辺のオンラインオーディエンスを郵便番号で分割しました。そして、ハーゲンダッツを販売しているウォルグリーンなどの小売店の近くに居住し、商品を購入する可能性が平均を上回っている人々をターゲットにすることによって戦略を強化しました。
ハーゲンダッツオープンコンテナキャンペーンでは、コンテンツの作成と同時にサンプリングイベントが開催され、無料で受け取ったアイスクリームの試食品の写真をインスタグラムでシェアするよう参加者に呼び掛けました。
プレゼント企画やコンテストといったオーディエンス参加型キャンペーンは、効果的にターゲット層の興味を惹くことができる手法です。今回のキャンペーンでは、対面でのイベントをキャンペーンに組み込むことによって消費者をオンラインに呼び込み、話題を広げることに成功しました。
キャンペーンの結果、目標の1,000万インプレッションを大きく上回る1,430万インプレッションを獲得し、インフルエンサーが作成した魅力的なコンテンツは2万7,400件を超えるソーシャルエンゲージメントを達成しました。さらに、キャンペーンの対象エリアに位置する小売店「ウォルグリーン」とハーゲンダッツに関する口コミが148%に上昇しました。
今回の事例は、ソーシャルメディアを通じてキャンペーンの話題を拡散し、サンプリングによって直接的に売上を伸ばしたコンビネーション戦略が成功した好例と言えるでしょう。
おすすめ記事:インフルエンサーマーケティングをグローバル化させるローカルインフルエンサー
-
- https://lmnd.jp/blog/local-influencers-globalize-influencer-marketing
2.プロテニスプレイヤーとのインフルエンサーマーケティング事例
ハーゲンダッツは、ロンドンのウィンブルドンで開催されるテニスの四大国際大会の一つである「ウィンブルドン選手権」の公式スポンサーです。
ハーゲンダッツのマーケティングリーダーであるArjoon Boseさんによると、同社は2017年7月に史上最も多い販売数を記録しました。翌2018年には、新記録を樹立するためにプロテニスプレイヤーとして活躍するインフルエンサーとタイアップして、「チャンピオンvsチャレンジャー」と呼ばれるインフルエンサーマーケティングキャンペーンを実施しました。
ハーゲンダッツで人気がある「ストロベリーアンドクリーム」のフレーバーを「チャンピョン」に設定し、プロテニスプレイヤーのGrigor Dimitrovさんが気に入っているフレーバーである「クッキーアンドクリーム」を「チャレンジャー」として、オーディエンスにどちらのチームをサポートするか表明してもらいました。
Dimitrovさんのようなビッグネームプレイヤーだけではなく、インスタグラムで活躍するマイクロインフルエンサーもキャンペーンでタイアップしました。
ハーゲンダッツのBoseさんは、「私たちはインフルエンサーを起用したコマーシャルから、彼らと協力して非常に熱心なファン層を確保するソーシャルモデルに移行しました。インフルエンサーはミレニアル世代に愛され、個性が強く、ファン層は調和しています。」と述べました。
また、ウィンブルドンには観覧用の当日券があり、当日券を求める人々の行列は「キュー」と呼ばれています。前日からテント泊をして列に並ぶファンも多く、その様子はウィンブルドンの伝統になっています。ハーゲンダッツは、「キュー」を対象としたサンプリングを実施し、ブランドエンゲージメントを促進しました。
ハーゲンダッツはこちらの事例でも、ソーシャルメディアを活用したインフルエンサーマーケティングと、サンプリングという直接的なマーケティング手法を組み合わせることによって効果的にキャンペーンを展開しました。
おすすめ記事:ユニクロの海外におけるオンライン戦略とインフルエンサーマーケティング事例
-
- https://lmnd.jp/blog/influencer-marketing-case-study-fashion-uniqlo
3. 異業種によるコラボレーションインフルエンサーマーケティング事例
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受けて、ハーゲンダッツは2020年に、家庭でハーゲンダッツを楽しもうと呼び掛けるためのキャンペーンを英国で実施しました。そして、キャンペーンの一環として、Amazon Prime Now、英国で話題の体験型映画「シークレットシネマ」とコラボレーションしたユニークな企画を展開しました。
「シークレットシネマ」は、当日会場に行くまで上映内容は秘密という新しい映画体験を提供しているロンドンの企業です。映画の上映会場は使われていない倉庫や公園などさまざまで、参加者はコスチュームを指定されることもあり、雰囲気たっぷりの会場で映画の世界に浸ることができます。
コラボレーションキャンペーンは8週間にわたって実施され、シークレットシネマが過去の作品を毎週金曜日の午後7時30分から上映しました。その際に、映画のイメージに合ったハーゲンダッツのフレーバーが選定されました。
例えば、キャンペーンが始まった最初の週には「グランドブダペストホテル」という映画がリリースされましたが、映画に登場するパステルピンクのホテルの色合いに合わせて、ハーゲンダッツのストロベリーチーズケーキのフレーバーがピックアップされました。
キャンペーンではインフルエンサーによるコンテンツ作成も行われ、インスタグラムとTikTokで合わせて24名のインフルエンサーが参加しました。選択した映画とそれに対応するフレーバーに合わせて、クリエイター主導のコンテンツが毎週制作されました。
シークレットソファの視聴者には毎週ニュースレターが送信され、ニュースレターを読むことによって、その週の映画とアクセス方法が分かる仕組みになっていました。事前上映のストーリーも配信され、キーキャラクターに扮装して振り付けのダンスを学ぶなど、映画に「参加」して楽しむことを視聴者に勧めました。
さらに、シークレットソファのニュースレターの受信者は、Amazon Prime Nowでハーゲンダッツを割引価格で購入するための秘密のウィークリーコードも受け取りました。それに加えて、ハーゲンダッツとシークレットシネマは毎週、アイスクリームのプレゼント企画も実施しました。
8週間のキャンペーンで、コンテンツのビュー数は300万回を超え、インフルエンサーのコンテンツは業界のベンチマークのほぼ3倍のエンゲージメントをもたらし、インスタグラムにおける英国のハーゲンダッツのキャンペーンエンゲージメントとしては過去最高を達成しました。
インフルエンサーマーケティングに加えて、テレビでの3週間にわたるプロモーション効果もあり、Amazon Prime Nowでのハーゲンダッツの週毎の販売数がキャンペーン前の約2倍になりました。
コロナウイルスの感染拡大を受けて多くの人が自粛生活を強いられているという状況で、家で過ごす時間を少しでも楽しくしようというブランドの意図が、人々の感情と見事にマッチしました。
おすすめ記事:メイクアップブランドとアメコミがコラボしたハロウィーンのインフルエンサーマーケティング事例
-
- https://lmnd.jp/blog/halloween-influencer-marketing-case-study-with-beauty-influencers
まとめ
今回は、ハーゲンダッツによるインフルエンサーマーケティング事例を紹介しました。
ハーゲンダッツは、画期的なアイデアによってさまざまなインフルエンサーマーケティングキャンペーンを展開していますが、その裏でキャンペーンを支えているのがインフルエンサーマーケティングプラットフォームやエージェンシーです。
外部のプロの力を借りることによって、これまでにない方法で新たなオーディエンスとのタッチポイントが切り開けるかもしれません。
参考:https://blog.carusele.com/nyc-influencer-marketing-success-with-h%C3%A4agen-dazs
https://www.thedrum.com/news/2018/07/10/h-agen-dazs-shaking-up-its-influencer-marketing-strategy-smash-wimbledon-sales
https://marketinggazette.co.uk/2020/08/15/haagen-dazs-and-secret-cinema-collaborate-for-multi-platform-campaign/
http://www.netimperative.com/2020/08/05/haagen-dazs-runs-influencer-campaign-haagindoors-for-secret-sofa/
https://blog.generalmills.com/2020/05/from-cinemas-to-sofas-with-haagen-dazs/
https://www.b2bmarketing.net/en/resources/blog/lets-talk-ice-cream-brand-attachment-vs-brand-loyalty
https://shortyawards.com/9th/haagen-dazs-hdopencontainer