インスタグラムやYouTubeなどのソーシャルメディア上では、数多くのトラベルインフルエンサーが活躍しています。トラベルインフルエンサーは絵画のように美しい旅先の画像や動画を提供するだけでなく、旅行に関心があるオーディエンスに向けて、おすすめのウェブサイトや滞在先などの実用的な情報を配信しています。
現在、ホテル・旅行業界に属する多くのブランドが、旅行に関心があるオーディエンスと繋がりを作るためにインフルエンサーマーケティングを展開しています。
世界30か国で91の高級ホテルとリゾートを展開するザ・リッツ・カールトンもインフルエンサーマーケティングに取り組んでいるホテルブランドの一つです。今回は、ホテル・旅行業界がインフルエンサーマーケティングを実施するメリットを交えて、ザ・リッツ・カールトンのインフルエンサーマーケティング事例を紹介します。
目次
インスタグラムで旅行先を決める消費者
視覚に訴えるインスタグラムのコンテンツはホテル・旅行業界と非常に相性が良く、多くのトラベルインフルエンサーがインスタグラムで活躍しています。Googleのデータによると、インスタグラムには月間8億人以上のアクティブユーザーが存在し、旅行に関心がある人々のうち、少なくとも40%がソーシャルメディアから得た情報を基に次の旅行先を決定していると考えられています。
また、インターコンチネンタルホテルズグループの分析によると、オンライン予約の大部分がソーシャルメディアを経由しているといいます。このように、ホテル・旅行業界のブランドにとってソーシャルメディア上でのマーケティング施策は必須と言える状況です。
インフルエンサーマーケティングは主にソーシャルメディア上で展開されるため、ホテル・旅行業界はインフルエンサーマーケティングに取り組むことによって新規顧客を獲得するチャンスを得ることができます。
ホテル・旅行業界で活躍するインフルエンサーは、世界中を旅しながら魅力的な写真や動画を撮影し、ソーシャルメディアなどのオンラインプラットフォームにコンテンツを投稿しています。コンテンツには通常、ブランドやホテル名、キャンペーン固有のハッシュタグなどが付けられ、ユーザーはハッシュタグを活用することによって特定のホテルやロケーションに関する情報を簡単に集めることができます。
また、ホテル・旅行業界のインフルエンサーマーケティングキャンペーンでは、多くの場合、コンテンツから外部の予約システムに直接アクセスできるような仕組みを構築し、インフルエンサーに固有の割引コードが割り当てられます。
消費者が旅行先を検討する際にソーシャルメディアにアクセスし、ソーシャルメディア上でホテルを決定、そのまま割引価格で予約を完了させるという流れを確立させることで、非常に効率の良いキャンペーンを展開することができます。
ホテル・旅行業界では、スターウッドリゾート、マリオット、ヒルトン、ザ・リッツ・カールトンなどが積極的にインフルエンサーマーケティングキャンペーンを展開しています。また、ソーシャルメディアは若年層ユーザーが多いので、インフルエンサーマーケティングは高級ホテルにとって、ブランドを身近に感じてもらい、未来のロイヤルカスタマーを育成するための手法でもあります。
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ザ・リッツ・カールトンとトラベルインフルエンサー
ザ・リッツ・カールトンは、ザ・リッツ・カールトンに宿泊することを旅行の目的にする人がいるほど、旅行者にとっては憧れのホテルです。ザ・リッツ・カールトンは世界的に知名度の高いブランドであるにも関わらず、フォロワー数を問わずにさまざまなインフルエンサーとタイアップを実施し、豪華な旅行に興味があるオーディエンスとの繋がりを作っています。
スポンサードコンテンツの一例として、トロントを拠点に活動する写真家でありマイクロインフルエンサーのChris Aznarさん(@christopheraznar)は、仕事の休憩場所としてザ・リッツ・カールトンでの滞在経験を投稿しました。
また、バリを拠点に活動するマクロインフルエンサーのJACK MORRISさん(@doyoutravel)は、海に向かう赤ちゃんウミガメの心温まる写真を撮影しました。この写真は、マダガスカルに位置するザ・リッツ・カールトンの浜辺で撮影されたものです。
これらのコンテンツはいずれもインフルエンサー個人のインスタグラムアカウントに投稿されたものですが、ザ・リッツ・カールトンの公式インスタグラムにも、インフルエンサーが作成したコンテンツが数多く投稿されています。
許可を取った上で一般ユーザーが作成したコンテンツを再投稿するという方法もありますが、一般ユーザーのコンテンツはクオリティにばらつきがあり、コメントなどの内容もブランド側でコントロールできないというデメリットがあります。インフルエンサーと長期的にタイアップすれば、ブランドの公式アカウントやウェブサイトなどで再利用できる質の高いコンテンツを継続的に作成してもらうことができます。
ユーザーが作成したコンテンツ(UGC)とインフルエンサーマーケティングを合わせてバイラルを生み出す方法についてはこちらの記事で紹介していますので併せてご覧ください。
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ザ・リッツ・カールトン・バーレーンのインフルエンサーマーケティング事例
ザ・リッツ・カールトンのインフルエンサーマーケティング事例として、ザ・リッツ・カールトン・バーレーンが実施したタイアップキャンペーンを紹介します。
ザ・リッツ・カールトン・バーレーンは、ロンドンに拠点を置くPRエージェンシー「Fox Communications」と協力し、ザ・リッツ・カールトン・バーレーンとバーレーン王国への観光についてのPRを2年間行った後、インフルエンサーマーケティングキャンペーンを実施しました。インフルエンサーマーケティングの目的は、ザ・リッツ・カールトン・バーレーンを幅広いソーシャルメディアのユーザーにプロモーションすることでした。
タイアップするインフルエンサーは、コンテンツの質やフォロワー数、エンゲージメントを考慮した上で慎重に選定されました。そして2018年10月に、バーレーンのザ・リッツ・カールトンへのインフルエンサーグループのプレス旅行が開催されました。
4泊の日程で開催されたプレス旅行では、バーレーン市内観光ツアーやパールダイビング体験、無人島でのピクニック、テントで覆われたアラビアン・サンセット・バーベキューなどのアクティビティに加えて、ヨガ、スパ、プライベートアイランド、ビーチフロントヴィラなどのホテル施設での体験が用意されました。
プレス旅行に参加したインフルエンサーは次のようなコンテンツ投稿を求められました。
・ザ・リッツ・カールトンに滞在中は少なくとも1日1回インスタグラム投稿を行う ・バーレーンに関するインスタグラムストーリー投稿を行う ・バーレーンの国営航空会社「ガルフ・エア」について言及したブログ投稿を行う
インスタグラムに26万4,000人のフォロワーを持つElena Sandorさん(@Elena Sandor)はキャプションで「サービスの質の高さに感動しました」と述べ、ウエイターがSandorさんの部屋に朝食を運んできた際にSandorさんが体調を崩していることに気づき、ハーブティーを持ってきてくれたという実体験をシェアしました。また、テニスのレッスンやスカッシュなどをホテルで楽しむことができる点にも触れ、ホテルが海の近くに位置しているのでウォータースポーツも楽しめることを説明しました。
インフルエンサーはブランドよりも消費者に近い立場です。ブランドや商品に対するコメントはインフルエンサーの本音であり、そのことがオーディエンスからの信頼に繋がっています。
また、インフルエンサーが自らの日常生活の中に自然な形でスポンサードコンテンツを組み込むため、広告感が少ないのもインフルエンサーマーケティングの特徴です。Sandorさんの実体験を共有したこちらのインスタグラムコンテンツは5,000件以上の「いいね!」を獲得しています。
今回のインフルエンサーマーケティングキャンペーンでは、合計124万人を超えるフォロワーに向けて、320件のインスタグラムストーリーと52件のインスタグラムコンテンツが投稿されました。さらに、クリスマスには英国の有名人であるアマンダ・ホールデンさんとその家族をバーレーンのザ・リッツ・カールトンに招待し、キャンペーンを強化しました。
インフルエンサーマーケティングでは、オーディエンスの「感情」に訴えかけるコンテンツを作成することがポイントです。ホテル・旅行業界のインフルエンサーマーケティングキャンペーンでは、ザ・リッツ・カールトンの事例のように、施設内部の様子だけではなくインフルエンサーが旅先で体験したことやその時の感情が数多くコンテンツ化されています。
おすすめ記事:2020年のインフルエンサーマーケティングトレンド12選【前編】
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まとめ
今回は、ホテル・旅行業界がインフルエンサーマーケティングを実施するメリットを交えて、ザ・リッツ・カールトンのインフルエンサーマーケティング事例を紹介しました。
インフルエンサーを旅行に招待するスタイルのインフルエンサーマーケティングキャンペーンを実施すると、他のプロモーションにも活用できる非常に魅力的なコンテンツを大量に作成してもらうことができます。
通常、インフルエンサーを旅行に招待すると膨大な費用がかかりますが、ホテル・旅行業界であれば自前の施設を活用するなどして、費用を抑えてインフルエンサーマーケティングキャンペーンを展開することができます。
そして、インフルエンサーを通じてコンテンツを作成してもらうことによって、これまでブランド自身が気づいていなかった新しい施設やサービスの魅力も発見できるかもしれません。
参考:https://www.foxcomms.com/case-study/the-ritz-carlton/
https://mediakix.com/blog/travel-influencers-hotels-hospitality-brands/
https://www.technogym.com/gb/newsroom/influencer-marketing-hotel-industry/