インフルエンサーマーケティングによってブランドイメージをコントロールするVictoria’s Secret(ヴィクトリアシークレット)の事例

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米国の女性用下着ブランド「Victoria’s Secret(ヴィクトリアシークレット)」は、フェイスブックやインスタグラムなどのソーシャルメディアに多くのフォロワーを持っていることで有名なブランドの一つです。

ヴィクトリアシークレットはソーシャルメディア上で圧倒的な存在感があり、ファッション業界ではスポーツブランドのナイキに続くフォロワー数を誇ります。インスタグラムの公式アカウントにはモデルとして活躍するインフルエンサーとのタイアップコンテンツが数多く投稿され、毎日数千人単位でフォロワーが増えています。

ヴィクトリアシークレットは、すぐにタイアップが可能なインフルエンサーチームを持っており、その中から目的に応じてインフルエンサーを選抜することによって効果的なインフルエンサーマーケティングキャンペーンを展開しています。

今回は、インフルエンサーマーケティングによってターゲットとブランドイメージを自在にコントロールするヴィクトリアシークレットの事例を2つ紹介します。

目次

  1. 事例1:ヴィクトリアシークレットが実施した過去最大のインフルエンサーマーケティングキャンペーン
  2. 事例2:ブランドとして新しい地位を築いた「シークレットピンクキャンペーン」
  3. ヴィクトリアシークレットのインフルエンサーマーケティング事例から学べること
  4. まとめ


  5. 事例1:ヴィクトリアシークレットが実施した過去最大のインフルエンサーマーケティングキャンペーン

    ヴィクトリアシークレットが実施した過去最大のインフルエンサーマーケティングキャンペーンは、2018年11月にブランド認知度拡大を目的として開催されたファッションショーです。

    ニューヨークで実施されたこのファッションショーにはさまざまな国籍を持つ60名のモデルが登場し、その様子は米国の複数のメディアで放送され、ファッションショーが開催されたことについて190ヵ国以上の国々で報道されました。

    ヴィクトリアシークレットのモデルといえば、以前は「ロングのブロンドヘアの女性」が定番でした。しかし、近年は消費者の間で「人種の多様化を認めよう」という声が高まり、その動きがインフルエンサーマーケティングにも波及しています。ヴィクトリアシークレットも、モデルとして活躍するインフルエンサーを選出する際に人種の多様化という考え方を念頭に置いています。

    2015年には、Maria Borgesさんが、アフロテクスチャー髪(特定のエリアの人種が持つ自然にカールした髪質)を持つ初めてのヴィクトリアシークレットモデルとしてステージに立ちました。ヴィクトリアシークレットはそれ以降、これまでのモデルの髪型の常識にとらわれず、さまざまなモデルの自然な髪型を尊重してきました。

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    backstage @victoriassecret 💘

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    今後、ヴィクトリアシークレットのようなグローバル企業は次のような視点を持ってインフルエンサーマーケティングを実施する必要があります。

    ・さまざまな国籍のターゲット層にリーチする

    できるだけ多くの潜在顧客にリーチするためには、さまざまな国籍を持つインフルエンサーとタイアップし、ブランドのターゲット層を広げることが大切です。

    「ロングのブロンドヘアを持つ人」など、特定の人種に絞ったインフルエンサーとタイアップすることは、ブランドの発展の可能性を狭めることになってしまいます。

    ・人種の多様化に対するブランドの考え方をアピールする

    有名人を起用した従来の「ブランドアンバサダー」とは異なり、インフルエンサーマーケティングの場合は複数のインフルエンサーと同時にタイアップができるという利点があります。さまざまな国籍を持つインフルエンサーとタイアップすることによって、ブランドが人種の多様化に対してポジティブであることを消費者に分かりやすく伝えることができます。

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    キャンペーンで投稿されたコンテンツ

    今回のインフルエンサーマーケティングで投稿されたコンテンツをいくつかご紹介します。

    有名ファッションモデルのKendall Jennerさんの例

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    moments before and during the @victoriassecret fashion show

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    米国の女性ファッションモデルであるKendall Jennerさんは、インスタグラムに1億2,300万人のフォロワーを持っており、今回のインフルエンサーマーケティングキャンペーン全体の21.4%に当たる1,390万件のエンゲージメントを獲得しました。

    有名ファッションモデルのBella Hadidさんの例

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    Smiling on the Inside

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    同じく米国の女性ファッションモデルであるBella Hadidさんは、2,800万人のフォロワーを持つメガインフルエンサーです。彼女はコンテンツを2つしか投稿しませんでしたが、合計260万件のエンゲージメントを獲得しました。

    フォロワーが100万人を超える「メガインフルエンサー」と呼ばれるインフルエンサーとタイアップすると、幅広いオーディエンス層にリーチすることができます。

    しかし、メガインフルエンサーは一人ひとりのフォロワーとの結びつきが弱く、フォロワー数を「いいね!」やコメントなどの数で割った「エンゲージメント率」では、フォロワーが少ないインフルエンサーに劣る傾向があります。

    フィリピン系のバックグラウンドを持つKelsey Merrittさんの例

    Kelsey Merrittさんはフィリピン系のバックグラウンドを持つモデルで、インスタグラムに89万人のフォロワーを持つ「マクロインフルエンサー」です。彼女は、フィリピン人として初めてヴィクトリアシークレットのファッションショーに参加した人物です。

    今回のタイアップでは積極的にインスタグラムへコンテンツを投稿し、39件のコンテンツで合計400万件のエンゲージメントを獲得しました。v

    最も高いエンゲージメント率を記録したIesha Hodgesさんの例

    今回のインフルエンサーマーケティングキャンペーンで最も高いエンゲージメント率を記録したのは、インスタグラムに2万2,000人のフォロワーを持つ「マイクロインフルエンサー」のIesha Hodgesさんでした。フォロワー数は少ないものの、20.8%という驚異のエンゲージメント率を記録し、Iesha Hodgesさんは自らのフォロワーとの繋がりの深さを証明しました。

    ヴィクトリアシークレットは米国のブランドですが、米国以外の国籍を持つインフルエンサーをモデルとして多数起用したことによって、ブランドの多様性に対する考え方をアピールすると共に、これまでの「ブロンドのロングヘア」のモデルだけでは到達できなかったオーディエンス層へのリーチも獲得することができました。

    キャンペーンの結果

    インフルエンサーマーケティングプラットフォームの「Popular Chips」が今回のインフルエンサーマーケティングキャンペーンの成果を測定した結果は次の通りです。

    投稿数:計615件
    「いいね!」の数:6,460万件
    閲覧数:4,800万回
    コメント数:48万5,300件

    また、2018年9月8日~11月9日までの間で、投稿されたコンテンツのパフォーマンス推移を分析したところ、ヴィクトリアシークレットがランウェイを歩くモデルのリストを公開した日と、タイアップしたインフルエンサーが「ショーに向けてヴィクトリアシークレットの本社で衣装のフィッティングを行った」と投稿した日に、急激に「いいね!」やコンテンツの閲覧数が伸びたことが分かりました。

    さらに、ファッションショーが始まった様子をインフルエンサー達が投稿すると、「いいね!」やコンテンツの閲覧数が1,000万件に到達しました。

    今回のインフルエンサーマーケティングキャンペーンでは、ファッションショーの開催中だけではなく、インフルエンサー達がショーのモデルに選出された瞬間から、本社でフィッティングを行う準備の様子までをコンテンツとして投稿したことによって、ショーの話題が長期間オンライン上で拡散され、効果的に口コミを作り出すことに成功しました。

    今回タイアップしたインフルエンサー達の通常の投稿に比べても、インフルエンサーマーケティングのコンテンツの「いいね!」数は46.69%、閲覧数は95.40%も増加するという結果になりました。このことから、タイアップインフルエンサーのオーディエンスがヴィクトリアシークレットに関するコンテンツに強い感心を示していたことが分かります。

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    事例2:ブランドとして新しい地位を築いた「シークレットピンクキャンペーン」

    ヴィクトリアシークレットは、メインの商品ラインよりもカジュアルで手頃な価格の「シークレットピンク」という商品ラインを持っています。

    シークレットピンクの主なターゲット層は大学生で、ヴィクトリアシークレットはシークレットピンクをプロモーションするために、若くて多様性に富んだインフルエンサーとタイアップしたキャンペーンを実施しました。

    若い世代のインフルエンサーが活動的なライフスタイルをコンテンツとして投稿することによって、ヴィクトリアシークレットは、これまで「大人向け」だと思われていたブランドイメージを変化させることに成功しました。

    また、今回のインフルエンサーマーケティングキャンペーンのコンテンツのインセンティブは1件あたり約120ドルで、参加したインフルエンサーは5,500名、インフルエンサーの一人当たりのフォロワー数は約3万7,500人でした。

    ヴィクトリアシークレットは、フォロワー数が少ないマイクロインフルエンサーをうまく活用することによって効果的に話題を拡散させることに成功しました。

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    ヴィクトリアシークレットのインフルエンサーマーケティング事例から学べること

    ヴィクトリアシークレットのインフルエンサーマーケティング戦略には次のような特徴があります。

    ・目的に合わせてタイアップするインフルエンサーを変更する

    ヴィクトリアシークレットは、「ブロンドのロングヘアのセクシーなモデルがアンバサダーを務める大人向けの下着」というイメージが強いブランドでした。

    しかし、意図的にさまざまな国籍を持つインフルエンサーとのタイアップを試みる、若年層向けの商品ラインのプロモーションには若くて活発なインフルエンサーを起用するなど、巧みなインフルエンサーマーケティング戦略によってブランドイメージやターゲット層を自在にコントロールしてきました。

    インフルエンサーは、特定の商品やサービスをプロモーションするだけでなく、ブランドイメージを変えるパワーも持っています。ヴィクトリアシークレットのように、さまざまな特徴を持つインフルエンサーをチームとして抱え、目的に合わせてタイアップするインフルエンサーを変えていくことによって、非常に効果的なインフルエンサーマーケティングキャンペーンを展開することができます。

    ・フォロワー数の異なるインフルエンサーをうまく活用する

    ヴィクトリアシークレットは1番目の事例で、メガインフルエンサーだけではなく、フォロワー数の少ないマイクロインフルエンサーともタイアップしました。メガインフルエンサーは幅広く情報を拡散し、マイクロインフルエンサーは特定のターゲットオーディエンス層を新規開拓する役割を果たしたことが成功に繋がったと言えるでしょう。

    ただし、ヴィクトリアシークレットのように、複数のメガインフルエンサーとタイアップできるブランドは限られています。なぜならば、メガインフルエンサーは一回あたりのスポンサードコンテンツのインセンティブが非常に高額で、最低でも一投稿につき数十万円、時には数百万円になることもあるからです。

    しかも、インフルエンサーとフォロワーの結びつきは、フォロワーが多ければ多いほど弱くなり、それに伴ってエンゲージメント率も低くなっていく傾向があります。そのため、膨大な数のフォロワーを抱えるインフルエンサーとのタイアップは「伸るか反るか」の賭けになりやすいのです。

    メガインフルエンサーとのタイアップは必ずしも必要なものではなく、ヴィクトリアシークレットの2番目の事例のように複数のマイクロインフルエンサーとタイアップすることによって、エンゲージメント率が高く、リスクが低いインフルエンサーマーケティングキャンペーンを展開することができます。

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    まとめ

    今回は、インフルエンサーマーケティングによってターゲットとブランドイメージを自在にコントロールするヴィクトリアシークレットの事例を2つ紹介しました。

    有名人を起用した従来の「ブランドアンバサダー」とは異なり、インフルエンサーマーケティングでは国籍や年齢が異なる複数のインフルエンサーとタイアップすることが可能です。目的に応じてタイアップするインフルエンサーを変更することによって、効果的なインフルエンサーマーケティングキャンペーンを展開することができます。

    ヴィクトリアシークレットの2つの事例は、インフルエンサーマーケティングの利点をうまく活用した好例と言えるでしょう。

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    参考:https://popularchips.com/dailies/the-biggest-influencer-marketing-campaign-ever-2018-victorias-secret-fashion-show/
    https://lonelybrand.com/blog/50-best-brand-ambassador-influencer-marketing-campaigns/#health-influencer-marketing
    https://blog.unmetric.com/victorias-secret-to-success-on-social-media

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