オンラインで活躍する「インフルエンサー」は、ソーシャルメディアに自らのアカウントを持ち、多くの人々にフォローされています。
「フォロワーが何人以上であればインフルエンサー」といった明確な定義はなく、フォロワー数が数百万人、数千万人に上る有名インフルエンサーもいれば、特定の地域で強い影響力を持つ、フォロワーが1,000人のインフルエンサーもいます。
有名インフルエンサーはフォロワー数が多いので、一度に数多くのオーディエンスにリーチすることができます。一方で、有名インフルエンサーには、フォロワー数が多い故のデメリットも存在します。
今回は、有名インフルエンサーのメリットとデメリットについて分かりやすく説明します。
目次
- 有名インフルエンサーの定義とインフルエンサーマーケティング事例
- 有名インフルエンサーのメリット
- 有名インフルエンサーのデメリット
- 大事なのはエンゲージメント率
- どのようにしてインフルエンサーを選べばいいのか?
- まとめ
有名インフルエンサーの定義とインフルエンサーマーケティング事例
インフルエンサー(influencer)は、influence(~に影響を与える)という英単語から生まれた言葉で、世間に対して影響力を持つ人々を幅広く指す言葉です。インフルエンサーの定義は曖昧な部分もありますが、当ブログではインフルエンサーを次のように定義しています。
・ブログやソーシャルメディアなどのオンラインで活躍している
・何かしらの専門分野がある
・その専門分野に興味があるフォロワーのコミュニティを持っている
近年では、テレビなどで活躍する有名人がソーシャルメディアに活躍の場を広げるケースもあり、反対に、インフルエンサーが大衆メディアに登場することもありますが、インフルエンサーマーケティングにおける「インフルエンサー」の定義は、「オンライン上の有名人」ということになるでしょう。
そして、インフルエンサーの中でも100万人を超えるフォロワーを持つインフルエンサーは「メガインフルエンサー」と呼ばれ、世間に幅広く名前を知られています。今回テーマに挙げている「有名インフルエンサー」は「メガインフルエンサー」と考えてください。
まずは、有名インフルエンサーによるインフルエンサーマーケティング事例を簡単に紹介します。
AMAZONの事例
世界的に有名なEコマースプラットフォームである「Amazon」は、有料のPrime会員を対象にしたサービス「Prime Now」のプロモーションを実施する際に、人気女優であるリア・ミシェルさんをはじめとした3名の有名インフルエンサーとタイアップしました。ミシェルさんは、インスタグラムに480万人のフォロワーを持つ有名インフルエンサーです。
クリスマスシーズンに合わせて実施されたキャンペーンでは、インフルエンサー本人がファンの家にプレゼントを届けるというサプライズが行われました。インスタグラムには憧れのスターに会えて歓喜するファンの様子がアップされ、大きな反響を呼びました。
キャンペーンの結果、ミシェルさんのコンテンツは9万7,226件の「いいね!」を獲得し、
エンゲージメント率は4%という結果になりました。
エアビーアンドビーの事例
民泊サービスのエアビーアンドビーは、アメリカ国民にとって一大イベントであるアメリカンフットボールの試合「スーパーボウル」の第51回大会で、世界的に有名な歌手であるLady Gagaさんに、ヒューストンに位置する2,000万ドルの滞在先を提供しました。
このコンテンツは52万7,000件以上の「いいね!」を獲得し、Lady Gagaさんはキャプションでエアビーアンドビーに対して感謝の言葉を述べました。また、このタイアップコンテンツは People、Vanity Fair、BuzzFeedなどの有名メディアに取り上げられ、Lady Gagaさんの2,500万人のフォロワーだけに留まらず、多くの人が目にすることになりました。
有名インフルエンサーのメリット
有名インフルエンサーとのタイアップキャンペーンにはどのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。まずはメリットから見ていきましょう。
1.一度に多くの人にリーチできる
有名インフルエンサーの最大のメリットは、言うまでもなくリーチの範囲が広いことです。最近では、テレビや雑誌などで活躍する有名人がインフルエンサーマーケティングに参入するケースが増えていますが、すでに世間的な知名度が高い人物であれば、ソーシャルメディアのアカウントを開設するだけですぐに数十万人のフォロワーが付きます。
また、オンラインのみで活躍しているにも関わらず、専門分野に特化したカリスマ性で数百万人、数千万人というフォロワーを持つ有名インフルエンサーも存在します。
有名インフルエンサーとタイアップすれば一度に多くの人にリーチすることができるため、ブランドや商品の認知度を一気に拡大することができます。
2.競合他社との差別化に効果的
有名インフルエンサーと長期にわたってタイアップを行うと、インフルエンサーの名前や顔がブランドイメージとして消費者の中で固まっていきます。それによって、ブランドを競合他社と差別化することができます。
また、今やインフルエンサーの影響力はソーシャルメディアに留まらず、他のオンラインプラットフォームやテレビなどへ波及していくケースがよく見られます。ソーシャルメディアで話題を作り出すことによって大規模な口コミへと成長し、カテゴリを代表するブランドになるチャンスが生まれます。
3.新しい市場への参入に役立つ
有名インフルエンサーとのタイアップは、新しい市場への参入を考えた時にも非常に効果的です。例えば、スポーツブランドのナイキは、世界的に有名なバスケットボールプレイヤーであるマイケルジョーダンさんとパートナーシップを結ぶことによって新しい市場への参入に成功し、「ジョーダン」シリーズは、後にナイキの人気ブランドの一つへと成長しました。
有名インフルエンサーのデメリット
続いて、有名インフルエンサーのデメリットについて見ていきましょう。
1. オファーを受けてもらうこと自体が難しい
有名インフルエンサーは、日々、数多くのブランドからタイアップのオファーを受けています。また、すでに競合他社とタイアップしている可能性もあります。多くの有名インフルエンサーは事務所に所属しているため、オファーをすること自体はそれほど難しくないと考えられますが、実際にタイアップまで話が進むケースはごくわずかでしょう。
2. 高額なタイアップ費用がかかる
インフルエンサーマーケティングキャンペーンで主となる費用は、インフルエンサーへ支払う報酬です。インフルエンサーマーケティングでは、ソーシャルメディアに「スポンサードコンテンツ」と呼ばれる広告コンテンツを投稿してもらうのがメインの手法ですが、フォロワー数が100万人を超える有名インフルエンサーの場合、一回のスポンサードコンテンツ投稿の報酬が100~500万円、さらには1,000万円以上になるケースもあります。
3.ABテストが難しい
インフルエンサーマーケティングで成果が出るまでには一定の期間が必要です。そのため、有名インフルエンサーとタイアップした場合、成果が分かる頃にはかなり多くの予算を投じていることになります。「複数のインフルエンサーとタイアップしてABテスト」といった段階的な施策を打つのが難しいという点も、有名インフルエンサーとタイアップするデメリットの一つです。
4.ブランドの影が薄くなる
タイアップした有名インフルエンサーの世間的な知名度が高い場合、インフルエンサーマーケティングキャンペーンのコンテンツが有名インフルエンサーを中心にしたものになる傾向があります。結果的に、消費者の中でブランドよりも有名インフルエンサーが印象に残り、「思ったほどブランド認知度向上に繋がらなかった」という結果になるかもしれません。
また、有名インフルエンサーが複数のブランドとタイアップしている場合、消費者が有名インフルエンサーを目にした時に別のブランドを想起する可能性もあります。
大事なのはエンゲージメント率
インフルエンサーマーケティングを実施する際に大切なのは、インフルエンサーの持つフォロワーの数ではなく、エンゲージメント率です。実際に、インフルエンサーマーケティングキャンペーンを成功させている多くのブランドが、インフルエンサーを選ぶ際にフォロワー数ではなくフォロワーの「質」を選択基準にしています。
数多くのフォロワーを持っているインフルエンサーであっても、フォロワーのほとんどがインフルエンサーのコンテンツに興味を示さなければ、キャンペーンで思うような成果は得られません。
一般的に、フォロワー数が多ければ多いほど、エンゲージメント率は下がる傾向にあります。次のグラフは、インスタグラムのプロモーション会社「Later社」の調査結果を基に作成したもので、フォロワー数とエンゲージメント率の関係性を表しています。表を見ると、フォロワー数が2万5,000人以下の「マイクロインフルエンサー」と呼ばれる層のエンゲージメント率が最も高くなっています。
分かりやすい例を一つ挙げてみましょう。有名女優のキム・カーダシアンさんはインスタグラムに1.8億人のフォロワーを持っていますが、すべてのフォロワーがカーダシアンさんのコンテンツを見ている訳ではありません。
フォロワーの中には、カーダシアンさんの最新のゴシップを見逃したくないという理由でアカウントをフォローしている人もいるでしょう。そのようなフォロワーはコンテンツを定期的にチェックしている訳ではないので、「いいね!」やコメントをすることも少なく、「エンゲージメントが低いフォロワー」であると言えます。
エンゲージメントが高いフォロワーをどれだけ持っているかという考え方は、インフルエンサーマーケティングにおいて非常に大切です。
また、インスタグラムの投稿画面には、友人や家族が投稿したコンテンツだけでなく、ユーザーの興味に合っていると推測される他のユーザーのコンテンツも表示されるアルゴリズムが組まれています。
そのため、ユーザーが特定のアカウントのコンテンツを頻繁に見ていることにインスタグラムが気づいた場合、そのアカウントのコンテンツをより目立つように投稿画面に表示させる可能性があり、結果的にユーザーの目に留まりやすくなります。
逆に、ユーザーがあまり関心を持っていないと考えられるアカウントのコンテンツはどんどん下の方に表示されるようになっていきます。このことからも、ユーザーがコンテンツに積極的に関与すること、つまり、エンゲージメントが高いことが重要であると分かります。
どのようにしてインフルエンサーを選べばいいのか?
ここまで見てきたように、有名インフルエンサーには圧倒的なリーチの広さという強力なメリットがある一方、フォロワーが少ないインフルエンサーに比べてエンゲージメント率が低いというデメリットもあります。
もし、ブランドが絶対の自信がある革新的な商品を持ち、市場で大きなシェアを獲得するチャンスがある場合、有名インフルエンサーとのタイアップによって素晴らしい成果が得られる可能性が高くなります。有名インフルエンサーはブランドや商品をたった一回のコンテンツ投稿で数百万人規模のオーディエンスに届け、一気に話題を拡散できる力を持っています。
有名インフルエンサーとタイアップする際には、プロモーション開始後にブランドや商品が話題になっている瞬間を利用して認知度拡大や売上を促進させるための組織的な能力も必要になります。確固たるプランがなければプロモーションが失敗に終わる可能性もあるので、入念に準備をしておく必要があります。
マイクロインフルエンサーという選択肢
これからインフルエンサーマーケティングに取り組むことを考えている多くのブランドは、限られたマーケティング予算の中で、成果を見ながら少しずつインフルエンサーマーケティングに投資していくことになるでしょう。その場合は、マイクロインフルエンサーとのタイアップも選択肢の一つになります。
マイクロインフルエンサーとは、一般的にフォロワー数が10万人未満のインフルエンサーのことです。フォロワーが少ないので影響力を与えられる範囲が狭い分、ニッチな分野に強みを持ち、エンゲージメントの高いフォロワーを持っています。そのため、パフォーマンスを分析しながら長期でじっくりと取り組むインフルエンサーマーケティングキャンペーンには、マイクロインフルエンサーの方が適しています。
また、予算を分散させることができるのでリスクも低く、じわじわと草の根のように話題が広がっていくので、より具体的で潜在的な顧客をターゲットにすることができます。
多くのマイクロインフルエンサーは、特定の種類のスポーツなど、ニッチな分野を軸に活動しています。その分野はすべての人にアピールするには具体的すぎる分野です。そのため、その分野に本当に関心のある人だけがインフルエンサーのアカウントをフォローします。
例えば、ランニングシューズブランドがインフルエンサーマーケティングを実施しようと考えた場合、潜在顧客として次のようなターゲット層が挙げられます。
・本格的なマラソンランナー
・趣味で軽くジョギングする人
・山岳レースランナー
有名なオリンピックアスリートとタイアップした場合、そのアスリートのフォロワーにはランニングに興味がない人々も含まれます。一方、「本格的なマラソンランナー」「山岳レースランナー」など、それぞれのターゲット層をフォロワーに持つインフルエンサーとタイアップすれば、細かくカテゴリ分けされたオーディエンスにピンポイントでリーチすることができます。
さらに、ニッチな分野で活躍するインフルエンサーはタイアップ費用も比較的安いため、予算を抑えて効果的にインフルエンサーマーケティングキャンペーンを実施することができます。
有名インフルエンサーとマイクロインフルエンサーは、どちらもマーケティングキャンペーンを成功させるための優れたパートナーです。キャンペーンの予算や目的に合わせて、適切なインフルエンサーを見極めることが大切です。
まとめ
今回は、有名インフルエンサーのメリットとデメリットについて解説しました。
インフルエンサーには、フォロワー数や活動するプラットフォーム、専門分野など、それぞれに得意分野があります。インフルエンサーの特徴を見極め、ブランドの目的や予算に合わせて適切なインフルエンサーを選びましょう。
数多くのインフルエンサーが登録しているインフルエンサーマーケティングプラットフォームを活用すれば、ジャンルやフォロワー数などの条件でインフルエンサーを簡単に絞り込むことができます。これからインフルエンサーマーケティングに取り組もうと考えているブランドには、インフルエンサーマーケティングプラットフォームの利用がおすすめです。
参考:https://www.jeffbullas.com/celebrity-influencers-vs-micro-influencers/
https://influencerdb.com/blog/celebrity-vs-micro-influencer-battle-of-engagement/
https://www.marketingweek.com/harry-lang-pros-cons-brand-celebrity-influencer/
https://mediakix.com/blog/influencer-marketing-vs-celebrity-endorsements-pros-cons/
https://www.marketingdive.com/news/micro-influencers-have-major-impact-on-buying-behavior-study/416579/?_ga=2.95753756.1692201945.1563204441-527251855.1560789477