2020年6月現在、コロナウイルスの流行によって世界中の人々が不安と混乱の中にいます。このような状況下で、ブランドはこれまで以上に責任を持ってマーケティング活動を行わなければなりません。
人々のライフスタイルも大きく変化しました。ニールセンが2020年3月に発表した情報によると、多くの人々が自宅で過ごすようになったことで、ソーシャルメディアに投稿されるコンテンツの数が60%増加していると言います。
また、ブランドのマーケティング戦略は、販促を中心とした内容から、非営利団体への寄付の呼び掛け・健康への意識向上・家で過ごす人々をサポートするための内容に切り替えられています。その影響を受けて、インフルエンサーが作成するコンテンツにも大きな変化が見られます。
今回は、インフルエンサーマーケティングキャンペーンで新たに生まれているトレンドと、新しい課題に対応しながら上手にプロモーションを実施している国内・海外のブランドの最新インフルエンサーマーケティング事例を紹介します。
おすすめ記事:【よく分かる】やさしいインフルエンサーマーケティング入門 – インフルエンサーの定義~最新事例まで –
目次
- インフルエンサーマーケティング戦略の最新動向
- 海外のインフルエンサーマーケティング事例
- 国内のインフルエンサーマーケティング事例
- インフルエンサーマーケティングの最新動向と事例から学べること
- まとめ
インフルエンサーマーケティング戦略の最新動向
コロナウイルスの流行により、多くのインフルエンサーマーケティングキャンペーンが中止または延期されました。対面でのイベントの開催が困難になったことに加え、営業停止を余儀なくされている業種もあり、ブランドが積極的なプロモーションを躊躇していることが大きく影響しています。
一方で、オンライン上でプロモーションを完結させることが可能なソーシャルメディアコンテンツが人気を集めています。人々が自粛生活中に自分たちの生活に役立つコンテンツをソーシャルメディア上で探していることは、インフルエンサーマーケティングにとって潜在的なチャンスでもあります。
他にも、インフルエンサーマーケティング業界ではこれまでになかったさまざまな変化が起きています。
ライブストリームを活用したコンテンツ
ライブストリームはオーディエンスとリアルタイムで会話することができるため、インフルエンサーマーケティングで人気のコンテンツです。最近は、長引く自粛生活で人との繋がりを求める消費者が増え、ライブストリームのようにオンライン上でコミュニケーションが取れるコンテンツが急増しています。
ライブストリーミングプラットフォームのTwitchでは、2020年3月14日の週末に視聴率が10%増加しました。ゲームを中心としたデジタルエンターテインメントに時間を費やす消費者が増えていると考えられます。
そして現在、ライブストリーミングを有効活用しているのがフィットネスインフルエンサーです。Joe Wicksさん(@thebodycoach)は、家で過ごす時間が増えている子供たちのためにフィットネス動画を毎朝配信しています。
動画の視聴回数は100万回を超えており、Wicksさんが普段配信している動画の再生回数の2倍超になっています。Wicksさんはインスタグラムを活用してライブ動画の配信時間や内容などの予告を行っています。
このようなライブ配信型のコンテンツは、料理や美容などの分野にも広がっています。
手洗いや外出自粛を呼び掛けるインフルエンサー
米国の保健局は、「ミレニアル世代がコロナウイルスの流行を止める鍵だ」と強調しています。世界のさまざまな国の政府がインフルエンサーと協力して、ミレニアル世代を中心とした若年層に対して手洗いや外出自粛を呼び掛けるコンテンツを作成してもらっています。
おすすめ記事:バングラデシュ政府とインフルエンサーによるコロナウイルス感染拡大防止キャンペーン
問題解決型のコンテンツ
人々の日常生活の変化に合わせて、インフルエンサーは商品やサービスをダイレクトにプロモーションする手法から、問題解決型のコンテンツにシフトしています。
インフルエンサーが作成する問題解決型のコンテンツは、新しいライフスタイルの提案に留まらず、メンタルケアや人と人の繋がりを作り出すような内容までさまざまです。消費者が家で楽しく過ごすための手助けになるようなコンテンツは今後も増えていくでしょう。
ライフスタイル&美容インフルエンサーのKatie Snooksさん(katesnooks)は、インスタグラムストーリーにクイズなどのオーディエンス参加型のコンテンツを投稿して人気を集めています。
近年、インフルエンサーマーケティングの広がりによってソーシャルメディア上にはインフルエンサーが作成したコンテンツが溢れ、オーディエンスが「コンテンツ疲れしている」と言われていましたが、今では人と人との繋がりを求める消費者がかつてないほどに増え、「コミュニティ」の感覚を求める多くの人たちによってインフルエンサーマーケティングの需要が急激に高まっています。
ブランドは今、何をするべきなのか?
興味深いことに、最近の調査で、消費者はブランドが完全に広告を停止することを望んでいないことが分かりました。世界トップクラスのマーケティング企業である「Kantar」による調査では、調査対象になった3万5,000人のうち、「ブランドの広告表示を止めてほしい」と考えている消費者は全体のわずか8%に過ぎませんでした。
人々は行動が制限されたことによってオンラインコンテンツを求め、今後購入する可能性のある商品をGoogleなどの検索エンジンで探しています。ブランドは今、これまで以上に消費者のニーズに合わせたマーケティング戦略が求められています。
おすすめ記事:「Stay Home」の状況下でブランドができる事とは?
海外のインフルエンサーマーケティング事例
ソーシャルメディアには現在、どのようなスポンサードコンテンツが投稿されているのでしょうか。ここからは、海外・国内の最新インフルエンサーマーケティング事例を紹介していきます。まずは海外の事例から見ていきましょう。
スポーツ用品メーカーUnder Armourの事例
米国のスポーツ用品メーカー「Under Armour」と、ダイエットや健康管理をサポートするアプリ「MyFitnessPal」は、ヘルスケアの分野で活躍する2人のインフルエンサーとタイアップして「Healthy At Home キャンペーン」を実施しました。
キャンペーンで作成されたフィットネス動画は、インスタグラムによる動画アプリ「IGTV」に投稿されました。さらにUnder Armourは、MyFitnessの登録1件につき1ドルを、子供たちのスポーツ活動に必要な備品などを支援している団体「Good Sports」に寄付しました。
現在、米国では多くのジムやフィットネススタジオが閉鎖されています。一方で、「自宅トレーニング」というキーワードの検索件数が350%増加していることを受け、スポーツ・フィットネス業界に属する多くのブランドがソーシャルメディア戦略を見直し、オンラインクラスやライブストリーム、自宅で実施できるトレーニングメニューを提供しています。
ファッションブランドREVOLVEの事例
人気ファッションブランド「REVOLVE」は、インスタグラムによる動画アプリ「IGTV」を活用して、インフルエンサーによるさまざまなイベントを開催しています。また、REVOLVEのインスタグラム公式アカウントに登場するインフルエンサーは、屋内でゆったりとしたルームウェアを身に付け、コンテンツには#REVOLVEaroundthehouseというハッシュタグが付けられています。
現在のオーディエンスのニーズを適確に捉え、インフルエンサーが自宅でコンテンツを作成することによってインフルエンサーマーケティングキャンペーンを続けているREVOLVEの戦略は模範的と言えるでしょう。
シューズブランドFryeの事例
シューズブランド「Frye」は、ファッション・ライフスタイルインフルエンサーとタイアップして#AtHomeWithFryeキャンペーンを実施しました。
ファッションインフルエンサーのOlivia Rinkさん(@feedingamerica)はインスタグラムにFryeのスポンサードコンテンツを投稿し、オーディエンスが所有しているFryeの靴の写真を共有することを求めました。また、キャンペーンハッシュタグを付けてコンテンツを投稿すると、米国のフードバンクである「フィーディング・アメリカ」のコロナウイルス感染症対応基金に、コンテンツ1件あたり1ドルが寄付されることもキャプションで説明しました。
また、Rinkさんは、Fryeの靴を所有していない人も#AtHomeWithFryeのハッシュタグを付けて家の内部の写真を投稿すればキャンペーンに参加することができると説明し、オーディエンスにキャンペーンの情報を拡散することを呼び掛けました。
さらに、コンテンツを投稿した人の中から毎週1名に新しいFRYEの靴をプレゼントすると説明しました。Fryeは実店舗が閉鎖されている間にも顧客との接点を保つために、毎週このようなプレゼント企画を実施しています。
人々がファッションから遠ざかっている期間中も顧客との接点を絶やさず、さらに社会貢献にも繋がるFryeのインフルエンサーマーケティングキャンペーンは、多くのブランドにとって非常に参考になる事例です。
コンピュータゲームのEAスポーツの事例
スポーツを専門とするコンピュータゲームブランド「EAスポーツ」は、オーストラリアのモデルでありインフルエンサーのHarvey Petitoさん(@harveypetito)とタイアップしてスポンサードコンテンツを投稿してもらいました。Petitoさんは、サッカーゲームの「Fifa20」をプロモーションし、インスタグラムのコンテンツは最初の6時間で3万件以上の「いいね!」を獲得しました。
ニュース雑誌「TIME」によると、2020年3月にライブストリーミング配信プラットフォーム「Twitch」の視聴率が31%上昇したといいます。さらに、ストリーミング配信のサポートツールを提供している「StreamElements」は、2020年3月14日の週末に、YouTubeによるゲーム実況ライブ配信サービス「YouTube Gaming」の視聴率が15%上昇したと報告しました。
多くの人が自宅で過ごす現在、Eスポーツはフィットネスと並んで、人々が自宅で気軽に楽しめるエンターテイメントになっています。
国内のインフルエンサーマーケティング事例
続いて、国内の最新インフルエンサーマーケティング事例を紹介します。国内では、スキンケアメーカーや食品会社が数多くのインフルエンサーマーケティングキャンペーンを展開しています。
ファンケルの事例
化粧品・健康食品メーカーの「ファンケル」は、月替わりでおすすめのファッションアイテムや雑貨を通販サイトで販売する「ファンケルセレクション」をプロモーションするためにインフルエンサーマーケティングキャンペーンを実施しました。
ファンケルは、インスタグラムに10万人のフォロワーを持つフードインフルエンサーの「まいちく」さん(@maichiku3)とタイアップしました。まいちくさんはファンケルセレクションで限定販売された「野田琺瑯ホワイトシリーズ」というスタイリッシュな保存容器を使って作り置きのおかずを紹介しました。ファンケルセレクションでは、まいちくさんのオリジナルレシピも併せて公開されました。
また、ファンケルのネット通販では、毎月3日と9日に買い物をするとポイント還元率が2%アップする「ファンケル39デー」を実施しています。コンテンツは39デーの前日の2020年4月2日に投稿され、まいちくさんはキャプションでファンケルセレクションの会員に向けてサイトの利用を勧めました。
タコの通販「Mark A」の事例
「Mark A」は、明治20年に創業した老舗水産加工会社「あ印」が開発したタコの最高級ブランドです。Mark Aは、インスタグラムに5万7,000人のフォロワーを持つライフスタイルインフルエンサーの「とふこ」さん(@tofuko0611)とタイアップして、Mark Aのタコを使った料理を紹介してもらいました。
とふこさんのコンテンツは色とりどりの料理と美しい和食器が中心で、スポンサードコンテンツも他のコンテンツの中に自然と馴染んでいます。とふこさんはキャプションで、「届いた時の箱がシンプルでお洒落」「さばき方の説明書が付いていた」と説明し、「タコの美味しさに驚いた」と素直な感想を述べました。
星野物産の事例
星野物産は群馬県に位置する食品メーカーで、80年以上にわたって小麦製粉と乾麺を製造しています。星野物産はインスタグラムに公式アカウントを持ち、フードインフルエンサーのコンテンツを「リグラム」しています。
リグラムとは、インフルエンサーが作成したコンテンツをブランドの公式アカウントで再投稿することを言います。インフルエンサーが作成した質の高いコンテンツをそのままブランドのプロモーションに活用できることはインフルエンサーマーケティングの大きなメリットです。
星野物産はインフルエンサーに小麦粉などの商品サンプルを送り、それを使った料理をインスタグラムで紹介してもらっています。フードインフルエンサーのshioさん(@shio0509)は、「白金鶴」という国産の小麦粉を使った蒸しパンを作り、コンテンツを投稿しました。キャプションでは「白金鶴」を使った感想に加えて食品の安全性にも触れ、「小麦粉を国産に変えることは私にもできる」と述べました。
リグラムを活用したインフルエンサーマーケティング事例はこちらの記事にも掲載されていますので併せてご覧ください。
おすすめ記事:美容・コスメ業界のインフルエンサーマーケティング成功事例【リンメル Rimmel】
テーブルマークの事例
冷凍食品やパックごはんなどを製造している食品メーカーのテーブルマークは、フードインフルエンサーのToshihiro Uekiさん(@utosh)とタイアップして、冷凍うどんをプロモーションしてもらいました。
Uekiさんはテーブルマークの冷凍うどんを使った「冷や汁ぶっかけうどん」のレシピを写真と共に投稿しました。コンテンツにはソーシャルメディアで流行している「#在宅楽飯」というハッシュタグが付けられ、簡単で美味しいレシピを探している人に投稿を見つけてもらえるように工夫しています。
また、タイアップキャンペーンでは、Uekiさんが紹介したレシピを真似してインスタグラムかツイッターに投稿するとAmazonギフト券が当たるプレゼントキャンペーンも実施されました。コンテストやプレゼント企画など、ユーザー参加型のコンテンツはインフルエンサーマーケティングキャンペーンの中でも特に人気が高いコンテンツです。
インフルエンサーマーケティングの最新動向と事例から学べること
インフルエンサーマーケティングは、「ブランドが見せたいもの」ではなく、「オーディエンスが見たいもの」を提供することが大切です。今後、消費者のライフスタイルはどんどん変化していくと考えられるため、常にニーズの変化を敏感にキャッチする必要があります。
普段からオーディエンスとコミュニケーションを取っているインフルエンサーはオーディエンスのニーズを熟知しているため、ブランドとオーディエンスの双方にメリットがあるソーシャルメディアコンテンツを作成することができます。
今回取り上げたブランドは、対面イベントなどの大掛かりなマーケティング施策が難しい状況下で、インフルエンサーマーケティングを上手に活用して顧客との接点を失わないようにしています。また、海外の事例では社会貢献の要素をキャンペーンに取り入れているブランドも目立ちます。
人と人との繋がりを感じられ、なおかつ役に立つ情報を発信してくれるインフルエンサーの存在は、ブランドがマーケティング施策を再開する上で大きな助けとなっていくでしょう。
まとめ
今回は、インフルエンサーマーケティングキャンペーンで新たに生まれているトレンドと、インフルエンサーマーケティングの国内・海外の最新事例を紹介しました。
予期せぬライフスタイルの変化によって、ブランドのマーケティング施策は再構築を求められています。オンラインで完結させることができるインフルエンサーマーケティングは少ない予算で今すぐ始めることができるので、一度試してみてはいかがでしょうか。
インフルエンサーマーケティングプラットフォームを活用すれば、フォロワーの数やジャンルなどでインフルエンサーを絞り込み、煩雑な契約のプロセスもプラットフォーム上で完結させることができます。
参考:https://mediakix.com/blog/coronavirus-influencer-marketing-case-studies/
https://econsultancy.com/how-the-influencer-marketing-industry-is-adapting-to-coronavirus/
https://www.fancl.co.jp/zakka/List/4200/
https://www.fancl.co.jp/campaign/net/index.html