2020年の第3四半期までに多くのブランドがインフルエンサーマーケティングへの投資を拡大

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2020年は、新型コロナウイルスのパンデミックによって、多くのブランドがイベントやプロモーションを延期するなど、マーケティング活動の縮小を余儀なくされました。一方で、多くの人が自宅で過ごすようになったことで、ソーシャルメディアの使用率は増加し、インフルエンサーマーケティングへの投資が拡大しています。

今回は、インフルエンサーマーケティングプラットフォーム「Influencer Marketing Hub」と「Takumi」による、インフルエンサーマーケティング業界や広告、消費者の行動の変化などをまとめた最新のマーケティング調査の結果を分かりやすく解説します。

目次

  1. 多くのブランドがインフルエンサーマーケティングへの投資を増やしている
  2. 消費者の購買行動の変化
  3. マーケティング業界の変化
  4. 広告業界の変化
  5. まとめ


  6. 多くのブランドがインフルエンサーマーケティングへの投資を増やしている

    インフルエンサーマーケティングプラットフォーム「Takumi」は、2020年に約3,500人の消費者やマーケティング担当者、インフルエンサーを対象にしたインフルエンサーマーケティングの実態調査を行いました。

    その結果、2020年の第3四半期までに調査対象となったマーケターの73%がインフルエンサーマーケティングへの投資を拡大していることが分かり、その中でも特に、小売(79%)、法務(79%)、製造(75%)の業界でより多くのリソースがインフルエンサーマーケティングに投入されています。

    消費者はソーシャルメディアにより多くの時間を費やし、インフルエンサーと積極的に交流しています。大規模な広告制作やプロモーションが困難な状況であっても、ソーシャルメディアを活用すれば、対面での接触をすることなく既存顧客との繋がりを保ち、潜在顧客へのアプローチが可能になります。

    人々の日常生活が大きく変わった今、ブランドのプロモーションは、商品やサービスにフォーカスしたものから、消費者の生活に寄り添い、ポジティブなメッセージを発信するものに変化しています。

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    消費者の購買行動の変化

    ここからは、インフルエンサーマーケティングプラットフォーム「Influencer Marketing Hub」が2020年3月下旬と9月に237のブランドを対象に実施した調査結果を中心に紹介します。

    今回の調査は、コロナウイルスのパンデミックという未知の事態に、ブランドがどのように対処しているかを確認するために行われました。また、ネット上のマーケティングに関する統計結果についても言及されています。

    多くのブランドがイベントの延期やプロモーションの自粛といったマーケティング活動の縮小を余儀なくされていますが、その中でも特に、高級品やサービス関連のブランドは大きな影響を受けています。しかし、今回の調査では、2019年8月から2020年8月までの英国の小売売上高が4.7%増加するなど、景気回復の兆しも見られました。

    また、米国のリサーチ会社「フォレスター・リサーチ」は、2020年における世界の小売売上高が全体で平均9.6%減少し、2.1兆ドルの損失になると予測しています。また、小売業者がパンデミック前のレベルを追い抜くのに4年かかるとの見解もあります。

    オンライン購入が飛躍的に増加

    Influencer Marketing Hubの調査では、米国の消費者の62%が、コロナウイルスのパンデミック以前よりもオンラインで買い物をする機会が増えたと答えています。また、カスタマーレビューを収集するサービスを提供している「Bazaarvoice社」が、さまざまな国の5,000人を超える消費者の購買行動について調査した結果、米国(62%)、カナダ(59%)、メキシコ(70%)、英国(58%)、フランス(41%)、ドイツ(41%)のすべての国の消費者が、以前よりもオンラインで買い物をするようになったことを認めています。

    米国のECサイト「BuyPower.com」は、3月に有料広告によるウェブトラフィックが1250%増加しました。オンラインで情報を収集し、オンラインで購入するという消費者がこれまで以上に増えたことを受け、B2B企業を含むかなりの数のブランドがオンライン広告への支出を増やしています。オンラインプロモーションがメインのインフルエンサーマーケティングへの出資が増えたこともうなずけるでしょう。

    マーケティングのエンゲージメントが低下

    トップマーケターへの年2回のインターネット調査によってマーケティング業界の予測を行っている「CMO Survey」では、最近、コロナウイルスのパンデミックがブランドのマーケティングに与える影響を理解することに焦点を当てた特別版をリリースしました。

    CMO Surveyでは、パンデミック中に観察された消費者の購買行動についてマーケターに聞き取り調査が行われました。その中で最も注目すべき結果は、マーケターの実に97%が、店舗や見本市といった対面でのマーケティングエンゲージメントの低下に気づいたことでした。

    パンデミック中に回答者が特定した顧客行動には、他にも次のような傾向が見られました。

    ・パンデミック時に導入された新しいデジタル製品に対する受容性の向上(84.8%)
    ・デジタル体験の価値の向上(83.8%)
    ・「善を行う」という企業の試みに対するより大きな認識(79.1%)
    ・購入する可能性が低い(67.2%)
    ・新規顧客は自社の製品やサービスに魅力を感じている(65.4%)

    対面でのマーケティングエンゲージメントの低下は、今後もしばらく続いていくと予想されます。そのため、オンラインプラットフォームを活用した非対面のマーケティング戦略を組み合わせるなど、「消費者と顔を合わせずに」接点を増やす工夫が求められます。

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    マーケティング業界の変化

    ここからは、Influencer Marketing Hubがネットのさまざまなマーケティングおよび販売に関する統計を精査して分かったことを紹介します。

    Influencer Marketing Hubの調査対象となったブランドの74%は、現在、自社のソーシャルメディアアカウントへの投稿が減少していることが分かりました。店舗の閉鎖やスタッフの在宅勤務への変更など、さまざまな理由でこれまでのようなオンラインプロモーションができていない企業が多いのが現状です。しかし、「新しい生活様式」が定着してきたタイミングで、オンラインプロモーションを積極的に打ち出すことは有効と考えられます。

    4社に1社がマーケティング活動を増やすと宣言

    多くのブランドが、資金調達や経費の削減といった、事業を存続させるための行動を取っています。このような状況の中で、調査対象となった4社に1社がマーケティング活動を拡大する予定であり、41%がその勢いを利用してメディアでの存在感を維持または拡大しようとしていることは注目に値します。

    Eメールマーケティングサービスを提供している「KLAVIYO社」は、コロナウイルスのパンデミックが広がる中、毎日3万件の企業のネットワークを調査してきました。調査が終了した2020年3月末の段階では、驚くほど多くのブランドが依然として楽観的な売上予測を持っていました。実際に、回答者の28%以上が「売り上げが伸びている」と答えました。

    しかし、消費者がお金を使う商品の種類には明確な動きがあります。消費者は生活必需品への支出へとシフトしており、業界によって状況が二極化しています。

    マーケターの「楽観レベル」は大不況並に急落

    その結果の中で注目するべき結論の1つは、マーケティング担当者の「楽観レベル」(0〜100のスケールで100が最も楽観的)で、コロナウイルスパンデミック前のスコアが62.7だったのに対して、パンデミック後は50.9に急落したことです。これまでで最高の指数は、2015年2月に記録した69.9でした。

    また、分野・業界別に見ると、 B2Bのスコアは54.0で、B2Cの47.1よりも高い数値となりました。また、ヘルスケアは59.0となり「最も活気がある」と言える分野で、コンシューマーサービスは43.9で最も低いスコアとなりました。

    マーケティングに割り当てる予算が増加

    トップマーケターへの聞き取り調査「CMO Survey」では、調査対象となったほとんどのブランドにおいて、全体の予算に対するマーケティング予算の割合が増加していることが分かりました。 2020年2月の調査では、回答したマーケターが所属するブランドが平均して総予算の11.3%をマーケティングに費やす予定でした。 しかし、2020年6月までに、その数値は12.6%に上昇しました。

    少し前の状況と比較してみると、2011年2月の時点で、マーケティング費用は一般的なブランドの収益の8.1%でした。この統計は次の9年間で変動し、2014年2月には9.3%というピークに達し、2018年2月に7.9%に低下しました。2020年2月には8.6%に戻りましたが、2020年6月までに11.4%に急上昇しました。

    これは、ブランドが困難に直面している時期に、既存顧客とブランド認知を維持するためにマーケティングが重要だと考えるブランドが多いことを明確に反映しています。

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    広告業界の変化

    この章では、Influencer Marketing Hubの調査によって明らかになった広告業界の変化について説明します。2020年の前半は世界中の多くの人が自宅で過ごし、その結果、ソーシャルメディアの使用率とオンラインショッピングが拡大しました。では、広告業界にはどのような影響が出ているのでしょうか。

    Googleとフェイスブックの広告収入は減少予測

    投資銀行である「Cowen&Co」は、Googleの2020年の純売上高を約1,275億ドルと予測しており、これは同社が当初予測していた金額よりも286億ドル減少しています。さらに、フェイスブックの年間広告収入は678億ドルになると予測していますが、これは以前の予測から157億ドル(19%)減少しています。

    また、オンライン広告を継続しているブランドでは、1,000インプレッションあたりのコスト(CPM)が低下し、クリック単価(CPC)の傾向が横ばい、または低下しているため、広告の費用対効果は通常よりもはるかに高くなっています。また、メディアサイトへのトラフィックが30%以上増加しています。

    「ブランドは広告をやめるべき」と考える消費者はわずか8%

    市場調査会社である「Kantar」は、コロナウイルスのパンデミック中のブランド広告について、世界中の3万5,000人の消費者を調査しました。その結果、「ブランドが広告をやめるべきだ」と考えている消費者はわずか8%に過ぎないことが分かりました。

    消費者の78%は「ブランドが日常生活の中で消費者を助けるべきだ」と考えており、75%は「ブランドは自分たちがしていることを人々に知らせるべきだ」、74%は「企業がその状況を悪用してはならない」と答えています。

    2020年にインフルエンサーマーケティングキャンペーンで成果を上げているブランドは、ブランドや商品のプロモーションにフォーカスした通常のマーケティング戦略から、人々の生活を手助けし、励ますようなメッセージを発信することに注力する戦略に切り替えています。

    34%が広告キャンペーンを完全にキャンセル

    コロナウイルスは、パンデミック以前に計画されていた広告キャンペーンに大きな影響を与えました。回答者の65%は、広告主が直接販売の結果を示すことができるメディアに支出を集中させると答えました。

    また、広告主の34%はキャンペーンを完全にキャンセルし、45%はキャンペーンを途中で停止したと答えました。また、38%は、年内の新しい広告活動を一時停止しました。全体として、89%が広告について何らかの措置を講じています。

    一口に広告といっても、メディアの種類によってパンデミックの影響は大きく異なりました。最も大きな影響を受けたのはディスプレイ広告で、予算支出が47%削減されています。また、有料のソーシャルメディア広告も45%減少しました。

    スポーツイベント広告の劇的な低下

    キャンセルされた広告の大部分は、スポーツの生中継に関連しています。パンデミック中、ほとんどのスポーツはキャンセルまたは延期を余儀なくされ、それに伴ってスポーツ関連の広告も休止されています。

    一部のソーシャルメディアはエンゲージメントが低下

    ソーシャルメディアの一部には、エンゲージメントの低下が見られます。2020年3月の第2週のインスタグラムにおけるフォロワーによるエンゲージメント率は過去3週間と比較して14%、フェイスブックは13.5%低下しています。 一方、ツイッターのパフォーマンスは比較的上々で、わずか7%の低下に留まっています。消費者の関心は、インスタグラムでファッションや旅行の美しい写真を見ることよりも、最新の情報やニュースをツイッターで検索し、話題のトピックをリツイートして議論することに移っているのかもしれません。

    小売メールの開封率は週ごとに25%上昇

    消費者が自宅で過ごすことによって、思いがけない広告のチャンスも生まれています。電子メールの開封率は、小売業で週ごとに最大25%上昇しています。消費者が電子メールを開いて読む時間が以前よりも増えていることは明らかです。

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    まとめ

    今回は、インフルエンサーマーケティングプラットフォーム「Influencer Marketing Hub」と「Takumi」による、インフルエンサーマーケティング業界や広告、消費者の行動の変化などをまとめた最新のマーケティング調査の結果を分かりやすく解説しました。

    世界的に経済が落ち込んでいる状況であっても、その内訳を分析してみると、さまざまな打開策が見えてきます。特に、非対面で消費者と接触することができるオンラインプロモーションには優先して予算を投じるべきだと言えるでしょう。

    インフルエンサーマーケティングは、オンラインプロモーションの中でも消費者と双方向のコミュニケーションを取ることができるマーケティング手法です。人と人との「物理的でない接触」、そして、「精神的な繋がりを保つこと」が、当面のマーケティング戦略の鍵となります。

    参考:https://influencermarketinghub.com/improve-influencer-marketing-roi/
    https://www.chiefmarketer.com/4-influencer-marketing-musts-to-improve-roi/

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