近年、多くのブランドがソーシャルメディアに公式アカウントを開設してコンテンツマーケティングに取り組んでいます。しかし、アカウントを開設すれば自然にフォロワーが増えていく訳ではなく、数か月または年単位でじっくりと取り組む必要があります。
もし、すでにソーシャルメディアにアカウントを持っている第三者のフォロワーを「借りる」ことができたらどうでしょうか。インフルエンサーマーケティングは、そんな夢のようなマーケティング手法です。
インフルエンサーマーケティングは直接的な売上には繋がりにくいと言われていますが、戦略の組み方によっては効果的なキャンペーンを展開することが可能です。今回は、売上に繋げるためのインフルエンサーマーケティング戦略のポイントについて解説します。
目次
- インフルエンサーのペルソナを設定する
- 正しいインフルエンサーを選択する
- 効果を追跡できるようにしておく
- インフルエンサーの感性でコンテンツを作ってもらう
- 複数のプラットフォームでコンテンツを展開する
- インフルエンサーを通じてメッセージを伝えてもらう
- ソーシャルメディアで顧客との繋がりを保つ
- インフルエンサーを通じて顧客と会話する
- まとめ
インフルエンサーのペルソナを設定する
まずは、ブランドがターゲットとするオーディエンスについて可能な限り多くの情報を集めます。そして、その情報を活用してキャンペーンに最適なインフルエンサーのペルソナを作成します。
例えば、美容・コスメ関係のメーカーが実施するキャンペーンであれば、美容に関する知識があり、なおかつブランドがターゲットとするオーディエンス層をフォロワーに持つインフルエンサーがタイアップ相手として理想的です。
インフルエンサーマーケティングの事例の中には、ブランドの専門カテゴリから外れたインフルエンサーとタイアップして大成功を収めたケースもあります。チョコレートメーカーの「ハーシーズ」は、若年層にリーチするためにゲームインフルエンサーとタイアップして成功を収めました。
カテゴリが変わると新しいオーディエンス層を開拓できるというメリットがありますが、その分、インフルエンサーの選定やキャンペーン戦略の難易度は上がります。まずはブランドと同じカテゴリのインフルエンサーとタイアップするのがおすすめです。
おすすめ記事:ハーシーズがゲームインフルエンサーとタイアップして莫大なリーチを獲得した事例
正しいインフルエンサーを選択する
インフルエンサーのペルソナが設定できたら、インフルエンサーを探すステップに移ります。インフルエンサーは、次のような視点で選ぶと良いでしょう。
・どのプラットフォームで活躍しているのか?
・フォロワーはブランドのターゲットとする層とマッチしているか?
・競合他社とタイアップをしていないか?
・プロモーションする商品やサービスに関連がある投稿をしていないか?(もしあれば、コンテンツの信憑性が高まる)
また、インフルエンサーが日頃からどのようにフォロワーとコミュニケーションを取っているかという点もチェックしておきましょう。
インフルエンサーマーケティングは、どれだけエンゲージメントの高いフォロワーを持っているかという点が成果に大きく影響します。インフルエンサーが日頃からフォロワーとコミュニケーションを取っていればエンゲージメントが高まり、インフルエンサーの影響力も強くなります。
良いインフルエンサーを見極めるには、インフルエンサーがフォロワーに接する姿勢やフォロワーの反応を見ることが大切ですが、ブランドにとって最適なインフルエンサーを見つけることは大きな課題です。
米国インフルエンサーマーケティングプラットフォーム「Mediakix」が2019年1月にブランドやマーケターを対象に実施した統計結果によると、61%のマーケターが「ブランドに合うインフルエンサーを探すのは難しい」と答えています。
まず最初にできることは、ブランドのソーシャルメディアのフォロワーの中からインフルエンサーを探すことです。ビジネス関係がない段階でブランドのアカウントをフォローしているインフルエンサーは、確実にブランドの商品やサービスに興味があります。
すでにブランドのユーザーであるインフルエンサーは、自発的にブランドに関するコンテンツを投稿している可能性があります。そのため、スポンサードコンテンツを投稿してもフォロワーに違和感なく受け入れてもらうことができます。その結果、売上に繋がりやすいキャンペーン展開が可能になります。
しかし、自力でブランドにピッタリのインフルエンサーを探すことは簡単ではありません。そんな時は、インフルエンサーマーケティングプラットフォームやエージェントなど、インフルエンサーマーケティングのプロに依頼してインフルエンサーを紹介してもらうのも一つの方法です。
おすすめ記事:インフルエンサーマーケティングは自前か外注か?メリットとデメリット【前編】
効果を追跡できるようにしておく
インフルエンサーマーケティングは、ソーシャルメディアを活用すると「いいね!」やコメント、コンテンツのシェア数といった効果測定が可能になります。パフォーマンスをリアルタイムで追跡できるので、長期にわたるキャンペーンであれば分析結果を元にキャンペーンの内容を調整していくこともできます。
また、インフルエンサーに固有の割引コードやアフィリエイトリンクを割り当てることによって、ダイレクトに売上に繋げることができます。ブランドは、割引コードの使用履歴やアフィリエイトリンクを経由した売上を計算することによって、各インフルエンサーがどのくらい売上に貢献しているかを測定することができます。複数のインフルエンサーとタイアップすればパフォーマンスを比較することも可能です。
時計メーカーの「Daniel Wellington」は、インフルエンサーマーケティングキャンペーンに割引コードをうまく活用して売上を伸ばしています。
おすすめ記事:ファッション・時計業界のインフルエンサーマーケティング【Daniel Wellingtonの戦略】
インフルエンサーマーケティングプラットフォームを活用すれば、インフルエンサーの選定からパフォーマンス分析、コンテンツ管理などの一連の流れをすべてプラットフォーム上で完結させることができます。初めてインフルエンサーマーケティングを実施するブランドはインフルエンサーマーケティングプラットフォームを活用すると良いでしょう。
インフルエンサーの感性でコンテンツを作ってもらう
インフルエンサーは質の高いコンテンツを作成することができるクリエイターで、フォロワーがどのようなコンテンツに興味を持つかを熟知しています。そのため、インフルエンサーにキャンペーンの目的や概要といったガイドラインを共有したあとは、インフルエンサーを信頼してコンテンツ作成を任せることが大切です。
ラベルプリンターやコピー機などでお馴染みの「Brother(ブラザー)」はヨーロッパ市場を開拓する際にインフルエンサーマーケティングを実施し、複数のインフルエンサーにコンテンツを作成してもらいました。
タイアップしたインフルエンサーは、ベイビーシャワーや子供の誕生日パーティー、キッチンの整理など、日常生活のさまざまな場面で実際にブラザーのラベルプリンターを使用し、その様子をコンテンツとして投稿しました。
インフルエンサーが作成した質の高いコンテンツに感動したブラザーの担当者は、自社ホームページにインフルエンサーのコンテンツを掲載するためのページを新たに設けました。
おすすめ記事:家電メーカーのインフルエンサーマーケティング事例【Brother(ブラザー)】
インフルエンサーはブランドよりも消費者に近い立場なので、第三者目線でフォロワーの日常生活に基づいたコンテンツを作成することができます。フォロワーが自らの日常生活とインフルエンサーの日常生活を重ね合わせることによって「商品やサービスのある生活」を想像しやすくなり、購買意欲を高める効果が生まれます。
複数のプラットフォームでコンテンツを展開する
インフルエンサーマーケティングキャンペーンで売上を伸ばすためには、コンテンツをより多くの人に見てもらうことが必要です。同じソーシャルメディアであっても、インスタグラムとフェイスブックではユーザー層が異なるため、なるべく多くのプラットフォームでコンテンツを展開しましょう。
複数のプラットフォームでキャンペーンを展開する「マルチプラットフォーム戦略」は、2020年のインフルエンサーマーケティングトレンドにもなっています。
おすすめ記事:2020年のインフルエンサーマーケティングトレンド12選【前編】
一例として、インスタグラムで新鮮なオーガニック食材の写真を投稿したら、YouTubeでオーガニック食材を使った料理動画を配信するといった戦略が考えられます。
複数のプラットフォームでコンテンツを展開することによって異なるオーディエンス層にリーチすることができるだけではなく、あえてコンテンツの投稿時期をずらせば、キャンペーンに関する話題が長期にわたって口コミとして広がっていく効果もあります。
また、前章で紹介したアフィリエイトリンクや割引コードをプラットフォーム毎に分けておけば、プラットフォーム別にコンテンツのパフォーマンスを測定できるので、次回のキャンペーン戦略立案に役立ちます。
最近では、インフルエンサーが複数のソーシャルエディアや動画プラットフォームにアカウントを保持しているケースが多いので、コンテンツを展開して欲しいプラットフォームをあらかじめ契約に盛り込んでおきましょう。キャンペーンを展開するプラットフォームを明確にしておくことによって、ブランドとインフルエンサー間のトラブル防止にも繋がります。
インフルエンサーを通じてメッセージを伝えてもらう
ブランドロイヤルティの高いファンを増やすためには、商品やサービスを気に入ってもらうだけではなく、ブランドのコンセプトや価値観に共感してもらうことが大切です。インフルエンサーを通じてブランドのメッセージを発信してもらうと、メッセージの信憑性を高める効果が期待できます。
こちらのコンテンツは、スポーツメーカーの「ナイキ」が、有名なアメリカンフットボールプレイヤーであるコリン・キャパニックさんとタイアップして、ナイキの「Just Do It!」というコンセプトをメッセージと共に投稿してもらった例です。
インフルエンサーがブランドに代わってメッセージを伝えることによって信頼が高まり、最終的にはブランドの売上増加に繋がります。コリン・キャパニックさんのコンテンツはツイッターにも投稿され、このコンテンツに関する口コミがソーシャルメディアで広まった後、実際に売上が31%増加しました。
ブランドからのメッセージを受け取って共感したオーディエンスは、その後も長い間、ブランドのファンで居続けてくれるでしょう。
ソーシャルメディアで顧客との繋がりを保つ
2020年3月頃から、世界的なコロナウイルスの感染拡大によって多くの人々が自粛生活を余儀なくされました。そして、多くのイベントやキャンペーンといったセールスプロモーションがキャンセルされ、マーケティング戦略の変更が求められました。
プロモーションが満足にできない状況下でブランドが売上を伸ばすことは困難と言えるでしょう。しかし、インフルエンサーを通じてソーシャルメディアで新たな顧客との繋がりを作り、既存顧客との関係性をさらに深めることは可能です。
オンラインで完結させることができるインフルエンサーマーケティングは、ブランドが大々的なプロモーションを実施できない環境であっても取り組むことができます。
商品やサービスを紹介することだけがプロモーションではありません。大切なのは、将来的に長くブランドを愛してくれる顧客を増やすことです。長期的な目で見れば、顧客との接点を作り出そうとするブランドの努力は必ず売上に結びつくでしょう。
インフルエンサーを通じて顧客と会話する
一般消費者をターゲットにしているブランドであっても、実際に顧客と顔を合わせて会話をする機会は限られています。その点、ソーシャルメディアであれば、メッセージのやり取りを通じて気軽に顧客と会話をすることが可能です。
顧客と会話する方法としておすすめなのが、テイクオーバーというインフルエンサーマーケティング戦略です。テイクオーバーとは、インフルエンサーに依頼して、ブランドのソーシャルアカウントを一定期間、代わりに運営してもらう手法です。
商品やサービスに何かしらの疑問や不満を持った顧客は、必ずしもその思いをブランドに伝えてくれる訳ではありません。意見を直接ブランドに伝えない顧客は「サイレントカスタマー」と呼ばれ、その割合は「クレーマー」よりもはるかに多いと考えられています。ブランドは、インフルエンサーを通じて顧客と会話をすることによって顧客の本音を聞くことができます。
旅行バッグの直販ブランド「Away」は、2015年に誕生したばかりの新しいブランドです。サムソナイトなどの大手ブランドが台頭する中、Awayはすでに30万個以上のスーツケースを売り上げるなど、急成長しています。
Awayはインスタグラムを通じて商品の使い方を顧客に伝え、リアルタイムのフィードバッグを受けるというサイクルを回して改善を重ねてきました。さらに、新商品のリリースの際にはインフルエンサーに商品サンプルが貸し出され、テイクオーバー戦略を欠かさず実施しています。
おすすめ記事:旅行業界のインフルエンサーマーケティング事例【バッグブランドAway】
まとめ
今回は、売上に繋げるためのインフルエンサーマーケティング戦略のポイントについて解説しました。
インフルエンサーマーケティングを実施する上で大切なのは、ブランドの顧客やタイアップ候補となっているインフルエンサーをしっかりとリサーチすることです。その上で、キャンペーンの効果測定ができるような仕組みを整えて改善を重ね、売上に繋げていきましょう。
参考:https://www.grouphigh.com/blog/generating-sales-with-influencer-marketing-a-cheat-sheat/
https://www.unboxsocial.com/blog/influencer-marketing-campaigns-sales/