インターネットの普及に伴い、マーケティングの舞台はオフラインからオンラインへと移行しています。多くの企業がSNS広告を中心としたデジタルマーケティングに取り組んできましたが、昨今、次のような課題が浮彫りになっています。
・コンテンツの供給過剰と価値の低下
・ブランド主導のマーケティングから消費者主導への転換
・あらゆる業種における口コミの影響力の拡大(宣伝広告の2倍の収益を引き出している)
・セレブリティなど一般的なトレンドリーダーの市場での影響力の低下
オンライン上のオーディエンスはデジタル広告に嫌悪感を示すようになり、より信憑性のある「口コミ」を購入決定の主な判断材料にするようになりました。
そこで注目されているのがインフルエンサーマーケティングです。
インフルエンサーマーケティングは従来のSNS広告とは異なり、「インフルエンサー」と呼ばれる人たちが口コミに近い形で商品やサービスをプロモーションするマーケティング手法です。
インフルエンサーマーケティングは効果的なマーケティング手法として注目されていますが、単にインフルエンサーを探し出してコンテンツを投稿してもらえば良いというものではありません。
今回は、マーケティング担当者が知っておくべきインフルエンサーマーケティングの10ケ条を紹介します。
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目次
- 1.キャンペーンのゴールとターゲットオーディエンスを設定する
- 2.規模の小さいコミュニティーからインフルエンサーを探す
- 3.最適なインフルエンサーとオーディエンスを選択する
- 4.ソーシャルメディアに注力する
- 5.役割分担をする
- 6.インフルエンサーをプロモーションする
- 7.長期的に付き合えるインフルエンサーを探す
- 8.インフルエンサーについてリサーチを行う
- 9.インフルエンサーと Win-Win の関係を保つ努力をする
- 10.インフルエンサーと様々な形でコラボレーションする
- まとめ
1.キャンペーンのゴールとターゲットオーディエンスを設定する
他のマーケティング戦略と同じように、インフルエンサーマーケティングもゴールを設定して計画を立てることが大切です。
インフルエンサーマーケティングを計画する際には、次のような項目について考えてみましょう。
・インフルエンサーのモチベーションを保つにはどうしたらいいのか?
・タイアップするインフルエンサーは誰が決定するのか?
・インフルエンサーとの関係性は誰が構築するのか?
・インフルエンサーに何を求めるのか?
・最も適切なプラットフォームは何なのか?
・インフルエンサーは何に対して情熱を持っているのか?
これらの質問に答えることは、適切なインフルエンサーを特定し、彼らのエンゲージメントを高め、ブランドとインフルエンサーの双方にとって良い関係性を築くためのロードマップを作る手助けになります。
また、インフルエンサーマーケティングを実施する際には、ゴールと共にターゲットオーディエンスを設定することも必要です。
「誰をターゲットとするのか」という点をベースに戦略を考えることはインフルエンサーマーケティングの基本であり、最も大切なテクニックと言えます。ターゲットを明確にすることによって、キャンペーンを戦略的に行うためのより効果的なアイデアが浮かぶようになります。
ターゲットオーディエンスは、年齢層、興味の対象、居住地など、なるべく具体的に設定しましょう。ターゲットを絞ることができれば、そのターゲットに対して影響力のあるインフルエンサーを選択すれば良いので、インフルエンサーを選択するプロセスがより簡単になります。
基本的にインフルエンサーは何かしらの専門分野を持ち、フォロワーはその分野に興味がある人々で構成されています。たくさんのフォロワーを持つインフルエンサーとタイアップしても、そのインフルエンサーのフォロワーがブランドのターゲットとする層とずれているとキャンペーンがうまくいきません。
従来のマーケティングの中心的な手法だったセレブを起用した広告は、幅広い層に「浅く広く」リーチできるのが特徴です。一方、インフルエンサーマーケティングの場合は、ニッチな層に「深く狭く」リーチするため、ターゲット層を明確にしておくことがキャンペーンの成功の鍵となります。
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2.規模の小さいコミュニティーからインフルエンサーを探す
インフルエンサーマーケティングで、より短期的にトラフィックとセールスを上げたいのであれば、「規模の小さいコミュニティー」からインフルエンサーを探すといいでしょう。
「規模の小さいコミュニティー」には、次のようなものがあります。
・トラフィックを獲得できているウェブサイト
・ブランドのターゲット層が集まるSNSのグループ
・SNS上のブランドのターゲット層の中で目立っているアクティブユーザー
・ブランドの商品やサービスに関連する話題が出るQ&Aサイトのようなプラットフォーム
インフルエンサーマーケティングの経験が浅いブランドは、どうしてもインフルエンサーのフォロワー数に囚われてしまいますが、規模の小さいコミュニティーにも優秀なインフルエンサーはたくさん存在します。
また、規模の小さいコミュニティーではインフルエンサーとオーディエンスの関わりが密で、インフルエンサーにはニッチで熱心なファンが付いています。インフルエンサーと関係性が深いオーディエンスにリーチすることにより、キャンペーンの結果が出やすくなるでしょう。
規模の小さいコミュニティーでインフルエンサーを探すことによって、
熱心なファン層を持つインフルエンサーが見つかる → ターゲットオーディエンスに効果的にアプローチできる → エンゲージメントの高いキャンペーンが展開できる
という良い流れを作りだすことができます。
3.最適なインフルエンサーとオーディエンスを選択する
ブランドの規模や知名度によって、選択するべきインフルエンサーは変わってきます。
すでに業界で名前が知られていて、自社のソーシャルメディア上に多数のフォロワーがいるブランドの場合、インフルエンサー側もブランドの存在に気が付きやすくなります。
ただ、多くのブランドはこれからビジネスを拡大していこうとしている段階にいます。そのようなブランドこそ、ブランディングを強化するためにインフルエンサーマーケティングに取り組むべきなのですが、インフルエンサーマーケティングに取り組む上でブランドが最も苦労しているのが「適切なインフルエンサーを探すこと」なのです。
米国インフルエンサーマーケティングプラットフォーム「Tapinfluence」と「Altimeter」が実施した調査によると、調査対象となったマーケターのうち67.6%が、「適切なインフルエンサーを見つけることがインフルエンサーマーケティングにおいて一番難しい」と答えました。
インフルエンサーマーケティングを実施する際には、ブランドが属するマーケットの特性を考慮し、ブランドの立ち位置を考えた上で、適切なインフルエンサーを見つけましょう。
インフルエンサーを選ぶということは、同時にオーディエンスを選ぶことでもあります。今回紹介した「1. キャンペーンのゴールとターゲットオーディエンスを設定する」のプロセスでターゲットオーディエンスを明確にすることによって、タイアップする候補となるインフルエンサーは自然と絞り込めるでしょう。フォロワーの数(リーチ数)だけに囚われないのがポイントです。
自力でインフルエンサーを探し出す方法もありますが、インフルエンサーマーケティングプラットフォームを活用すれば、ブランドの予算や目的にあった適切なインフルエンサーを紹介してもらうことができます。また、インフルエンサーマーケティングの煩雑なプロセスもプラットフォーム上で完結することができます。
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4.ソーシャルメディアに注力する
インフルエンサーマーケティングの中でも特に目立っているのが、ソーシャルメディアインフルエンサーの活躍です。ブランドが理想とするインフルエンサーを特定できたら、ソーシャルメディアでインフルエンサーを探してみましょう。インフルエンサーと繋がりを持つには次のような方法があります。
・インフルエンサーのコンテンツにコメントする
・インフルエンサーのコンテンツをシェアする
・インフルエンサーがシェアしたブログのコンテンツを称賛する
・ブランドのブログでインフルエンサーを紹介する
・ブランドがソーシャルメディアに投稿する際にインフルエンサーをタグ付けする
ソーシャルメディア上でインフルエンサーと関わりを持つことによって、ブランドの存在に気づいてもらいやすくなります。そうすれば、後々ビジネスの交渉がしやすくなります。うまくいけば、インフルエンサーとブランドがお互いをプロモーションすることができるでしょう。
インフルエンサーマーケティングでソーシャルメディアを活用すると、「インフルエンサーと関わりを持つことができる」というメリットがありますが、ブランドがソーシャルメディアに注力するべき理由がもう一つあります。
それは、多くのブランドがメインターゲットに設定している10代後半から20代前半の若年層は、テレビの代わりにソーシャルメディアを主な情報収集の場にしていることです。
彼らはいずれ、どのブランドにとっても最も重要な顧客層になります。若年層が集まるソーシャルメディアでのプロモーションは、業界を問わず今後のマーケティング戦略の要となるでしょう。
5.役割分担をする
従来のマーケティング手法では、マーケターがキャンペーンの計画から実施方法までの全てをコントロールしてきました。しかし、インフルエンサーマーケティングの場合は事情が異なります。
インフルエンサーマーケティングにおいては、インフルエンサーにクリエイティビティの自由を与える事が必要です。それがブランドにとって大きな利益をもたらします。
米国のマーケティング会社「Crowdtap」の調査では、調査対象となったインフルエンサーのうち77%が、「クリエイティビティの自由を与えられることが一番のモチベーションになる」と答えました。
インフルエンサーは、自由にコンテンツを制作させてくれるブランドを好みます。それは、インフルエンサーが自身のフォロワーのことをとてもよく知っていて、どのようなコンテンツが彼らに最も響くかを理解しているからです。
フォロワーも、インフルエンサーの「いつものコミュニケーションスタイル」を知っています。そのため、少しでも違和感のあるコンテンツを発見したら、フォロワーが離脱してしまう可能性があるのです。
インフルエンサーマーケティングを実施する上で、ブランドとインフルエンサーはキャンペーンのゴールや目的を共有し、クリエイティブな部分はインフルエンサーに任せて、ブランドはキャンペーンの運営に注力するという役割分担がうまくできればベストです。
6.インフルエンサーをプロモーションする
タイアップするインフルエンサーが決まったら、彼らに対してブランドができることを考えてみましょう。
ブランドがインフルエンサーに与えられるのは金銭だけではありません。もし、ブランドが自社で運営しているブログを持っていれば、ブログ上でインフルエンサーを紹介することができます。
また、インフルエンサーにインタビューをして、ポッドキャスト(インターネット上で音声や動画ファイルを公開すること)としてプレゼントすると喜ばれます。インフルエンサーは自分の活動について話すことを好みますし、インタビューによって自分自身を無料でプロモーションすることができます。
インフルエンサーマーケティングは、ブランドとインフルエンサーの関係性が重要です。アイデア次第でインフルエンサーとの関係をより良いものにして、ブランドにコミットしてもらうことができます。その結果、コンテンツの質が上がり、スポンサーコンテンツ以外にも自発的にブランドのことを取り上げてくれるかもしれません。
このようなインフルエンサーマーケティングは、ブランドとインフルエンサーどちらにとっても楽しく、Win-Win になる素晴らしい関係と言えます。
7.長期的に付き合えるインフルエンサーを探す
インフルエンサーとブランドの関係は、長い時間を掛けて構築されるものです。しかし、お金のためにスポンサーコンテンツを投稿し、インセンティブを受け取ったらブランドから離れていくようなインフルエンサーが存在するのも事実です。
質の高い仕事をしてくれるインフルエンサーを見つけるには、インフルエンサーマーケティングプラットフォームを活用するといいでしょう。
インフルエンサーマーケティングプラットフォームには、インフルエンサーのデータベースがあります。その中からエージェントの「お墨付き」のインフルエンサーを紹介してもらることは、ブランドにとって大きなメリットになります。
ブランドにマッチするインフルエンサーを見つけたら、長期契約を結んで、ブランドの顔として活動してもらいましょう。
インフルエンサーマーケティングにおいて、長期契約はブランドとインフルエンサーの双方にとってたくさんのメリットがあります。
おすすめ記事:インフルエンサーと長期契約を結ぶメリットと注意点
8.インフルエンサーについてリサーチを行う
インフルエンサーにはそれぞれ個性があり、コミュニケーションのスタイル、トーンも多種多様です。タイアップの候補となるインフルエンサーを見つけたら、仕事をオファーする前に次のような点についてリサーチを行いましょう。
・そのインフルエンサーはどのようなことに情熱を持っているのか?
・コンテンツのトーンはフォーマルか、カジュアルか?
・何について情報発信をしているのか?
・フォロワーとどのように関わっているのか?
・最もよく利用している媒体は何か?
・そのインフルエンサーが求めているものは何か?
目的のインフルエンサーをよく知ることによって、インフルエンサーにアプローチする最適な方法が分かってくるでしょう。インフルエンサーも、タイアップのオファーをしてきたブランドが事前に自分のことについて調べているかどうかは分かるものです。
また、インフルエンサーについて事前にリサーチすることは、お金で買った「偽フォロワー」を抱える悪質なインフルエンサーを排除することにも繋がります。
インフルエンサーマーケティングは「量より質」です。質の高い仕事をするインフルエンサーを探し出して、結果の出るインフルエンサーマーケティングを実施するために、事前のリサーチは必要不可欠です。
おすすめ記事:注意すべき「偽フォロワー」や「偽いいね」とは?
9.インフルエンサーと Win-Win の関係を保つ努力をする
インフルエンサーマーケティングは、「インフルエンサーが見つかったらあとはキャンペーンを回すだけ」ではありません。ブランドとインフルエンサーが Win-Win の健全な関係性を保つためには、双方の努力が必要です。
・定期的にコンテンツを振り返る
・新しいアイデアを出す
・お互いに何か気になることがあればすぐに相談できる環境を整える
・インフルエンサーが質の高いコンテンツを作ったら称賛のコメントを送る
インフルエンサーをビジネスパートナーとしてブランドに迎え入れ、マーケティング戦略に積極的に関わってもらいましょう。そして、定期的にキャンペーンの状況を確認する必要があります。
ノルウェーの旅行用バックパックブランド「Douchebags」は、インフルエンサーの名前を付けた商品ラインを開発し、成功を収めています。こちらの記事で事例を紹介していますので併せてご覧ください。
おすすめ記事:Douchebags のインフルエンサーマーケティング事例
10.インフルエンサーと様々な形でコラボレーションする
多くのブランドは、「インフルエンサーマーケティング = スポンサーコンテンツ」と考えています。しかし、インフルエンサーマーケティングはコンテンツの配信だけではありません。インフルエンサーとタイアップし、様々なプロジェクトを企画しましょう。
例えば、インフルエンサーを招いてイベントを開催するというのはメジャーな手法です。インフルエンサーがイベントの告知をすると、フォロワーがイベントに遊びに来ます。ブランドが直接リーチできなかったオーディエンス層をイベントに誘い出すことができるのは、インフルエンサーとオーディエンスの間に信頼関係があるからで、それはブランドにとって大きなチャンスになります。
また、スポンサーコンテンツの投稿は、通常、インフルエンサーのアカウントを使って行われますが、ブランドのアカウントを使ってインフルエンサーにコンテンツを投稿してもらうこともできるのです。
インフルエンサーのフォロワーは、お気に入りのインフルエンサーの活動内容を常にチェックしているので、新たにブランドのアカウントをフォローしてもらうきっかけができます。
おすすめ記事:インスタグラムでのインフルエンサーマーケティングアイデア7選
まとめ
今回は、マーケティング担当者が知っておくべきインフルエンサーマーケティングの10ケ条を紹介しました。
1.キャンペーンのゴールとターゲットオーディエンスを設定する
2.規模の小さいコミュニティーからインフルエンサーを探す
3.最適なインフルエンサーとオーディエンスを選択する
4.ソーシャルメディアに注力する
5.役割分担をする
6.インフルエンサーをプロモーションする
7.長期的に付き合えるインフルエンサーを探す
8.インフルエンサーについてリサーチを行う
9.インフルエンサーと Win-Win の関係を保つ努力をする
10.インフルエンサーと様々な形でコラボレーションする
インフルエンサーマーケティングは、「インフルエンサーをブランドの広告塔として起用する」ということではありません。インフルエンサーをブランドのマーケティングチームの一員と考え、ブランドとインフルエンサー双方が知恵を出し合い、共通のゴールに向かっていくことによって初めてキャンペーンが成功するでしょう。
マーケターは、今回紹介したインフルエンサーマーケティングのポイントをおさえ、効率的にインフルエンサーマーケティングを実施することによってその効果を最大化できるようになるでしょう。
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参考:https://www.grin.co/blog/influencer-marketing-tips
https://www.agilecrm.com/blog/9-influencer-marketing-tips/