2020年のインフルエンサーマーケティングトレンド12選【前編】

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インフルエンサーマーケティング市場は年々拡大を続け、2020年に史上最大の80億ドル規模にまで成長すると予想されています。美容メーカー大手のEstee Lauder社は、2020年のマーケティング予算のうち、75%をインフルエンサーマーケティングに割り当てると発表しました。

とどまる所を知らないインフルエンサーマーケティング業界では、2020年にどのような変化が起きるのでしょうか。

2019年のインフルエンサーマーケティングトレンド」の記事では、「マイクロインフルエンサーとナノインフルエンサーの重要性」「インスタグラムはインフルエンサーマーケティングの成功に不可欠なまま」など、2019年のインフルエンサーマーケティングにおける10のトレンドを紹介しました。

2020年は、フォロワー数が少ないインフルエンサーが活躍するなど、2019年と同じトレンドもありますが、インフルエンサーマーケティングに関わるマーケターならば絶対に知っておきたい新たなトレンドがいくつも生まれています。

今回は、2020年のインフルエンサーマーケティングトレンド12選を前編と後編に分けて紹介します。前編ではマーケティング戦略やインフルエンサーのトレンドなどのインフルエンサーマーケティング全体に関する内容、後編ではプラットフォームやコンテンツのトレンドなど、より具体的な内容について説明していきます。

目次

    【前編】

  1. マーケティング戦略のトレンド
  2. インフルエンサーのトレンド
  3. まとめ
  4. 【後編】

  5. プラットフォームのトレンド
  6. コンテンツのトレンド
  7. まとめ


  8. マーケティング戦略のトレンド

    まずは、2020年のインフルエンサーマーケティングにおけるマーケティング戦略のトレンドを紹介します。

    インターネットの普及により、消費者は様々なプラットフォームでブランドとの接点を持つようになりました。消費者は、これまでのマーケティング戦略で考えられていたように、決まったフェーズを経て商品購入に至る訳ではありません。そのため、インフルエンサーマーケティングにおいても包括的なカスタマージャーニーについて考えていかなければなりません。

    また、テクノロジーの進化によってインフルエンサーマーケティングの結果などのデータ分析が容易になり、可視化がさらに進むと予測されています。

    1. 包括的なカスタマージャーニー

    これまでは、多くのマーケターがインフルエンサーマーケティングを実施する際に、「カスタマージャーニーのそれぞれのフェーズでどのように消費者と接点を持つか」という事に注力してきました。ただ、それはもう過去の話です。

    インターネットの普及により、消費者は様々なプラットフォームでブランドとの接点を持つようになりました。また、ネット上にはブランドや商品に関する情報が溢れています。

    ブランドは、インフルエンサーマーケティングを通じてオーディエンスに伝えたいメッセージやキャンペーンの目的を明確にして、包括的にカスタマージャーニーを考えていかなければなりません。

    ブランドとインフルエンサーは、コンテンツが複数のプラットフォームで展開される事を見越した上でよりクリエイティブにストーリーを設計し、オーディエンスが異なるプラットフォームで似たような情報に触れた場合であっても興味を持ってもらえるようにする必要があります。

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    2. 透明性

    近年、ブランドは透明性の高い経営を求められるようになってきましたが、インフルエンサーマーケティングにも同様の流れが来ています。具体的には次のような変化が起きています。

    スポンサーシップの開示

    アメリカでは、FTC(Federal Trade Commission = 連邦取引委員会)によって、インフルエンサーがスポンサードコンテンツを投稿する際にはそれが広告であることを明確にすることが義務付けられています。

    ブランドや、ブランドとタイアップしているインフルエンサーがスポンサーシップを隠してコンテンツを投稿すると、それに気づいたオーディエンスとの関係性が一瞬で崩れてしまいます。

    オーディエンスは「裏がある」コンテンツに敏感に反応し、実際にそのようなコンテンツには批判のコメントが集まります。今日のインフルエンサーマーケティングにおいて、スポンサーシップを隠すことは非常にリスクが高いと言えます。

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    ブランドが生き残っていくためには消費者との信頼関係の構築が欠かせません。透明性の高いプロモーションを実施してオーディエンスの信頼を得る事ができるかどうかが、2020年にインフルエンサーマーケティングを成功させる上での大きな課題です。

    インフルエンサーマーケティング詐欺への対策強化

    インフルエンサーマーケティング市場の成長に伴い、次のような「インフルエンサーマーケティング詐欺」と呼ばれる問題が増えています。

    ・偽の「いいね!」をお金で買う
    ・botを使ってフォロワー数を多く見せかける

    残念ながら、インフルエンサーの中にはこのような不正行為をしている人が少なからず存在します。タイアップ候補のインフルエンサーが見つかったら、インフルエンサーが過去にタイアップしたブランドやコンテンツの内容を確認して、インフルエンサーマーケティング詐欺に遭わないよう十分注意しましょう。

    インフルエンサーはインターネット検索などで自力で探す事もできますが、インフルエンサーマーケティングプラットフォームやエージェントを通じておすすめのインフルエンサーを紹介してもらうのも一つの手段です。

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    3. ブランドの価値観

    2020年のインフルエンサーマーケティングにおいて、「ブランドとインフルエンサーがどのような価値観を持っているか?」という点が非常に重要になります。それには次のような理由があります。

    デロイト社の調査によると、80%の消費者が、「環境保護や企業の社会的責任に注力している会社の商品には代金を多く支払っても良い」と考えています。また、アクセンチュア社が3万人の消費者を調査した結果、 そのうちの62%が、ブランドに対して「世間で起きている問題を解決して欲しい」と思っていることが分かりました。

    このように、ブランドは単にお金を儲けるために存在するのではなく、社会をより良くするために存在するべきだと考える消費者が増えているのです。そして、消費者は自分と価値観の合うブランドを探し、繋がりを持ちたいと考えています。

    特に「Z世代」を中心とする若年層は企業の社会的責任を果たしているブランドを好む傾向があります。Z世代と呼ばれる「ジェネレーションZ」は、1996年から2010年に生まれた10代を中心とする年齢層です。この世代は「デジタルネイティブ」と言われ、これまでの消費者層とは、情報収集の方法や価値観、購買行動などが大きく異なります。

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    英国インフルエンサーマーケティングプラットフォーム「Whalar社」のCMOであるMike Hondorpさんは次のように述べています。

    「私たちが1万5,000人以上のクリエイターアカウントを調査したところ、社会貢献や、自分に関連のある問題に関連した投稿が増えている事が分かりました。イギリスでは、来年の選挙に関する話題を取り上げ、自分の立ち位置を明確にして発言をするクリエイターが増えています。社会問題に対してイニシアチブを取るインフルエンサーとタイアップしたいと考えるブランドは今後増えていくでしょう。」

    売上を伸ばすためだけに実施されたキャンペーンは消費者に即座に見抜かれてしまいます。インフルエンサーマーケティングに取り組んでいるブランドにとって、価値観を共有できるインフルエンサーを探す事はもはや必須と言えるでしょう。

    ブランドは自らの価値観を伝えるためのメッセージを明確にして、インフルエンサーはその目的をオーディエンスにしっかりと伝えられるようなストーリーテリングを行うことが大切です。

    4. AIの活用

    テクノロジーの発達によって、ドローン、360度カメラ、チャットボット、VRなど、様々な新しい機能が世の中に誕生しています。

    これらのテクノロジーはコミュニケーションのための新しいプラットフォームを作り出し、オーディエンスのコンテンツ体験を強化することによってソーシャルメディアやモバイルマーケティングを加速させると考えられています。

    インフルエンサーマーケティングもAIによって大きく変わりつつあります。その一例が「バーチャルインフルエンサー」です。バーチャルインフルエンサーとは、アニメーションで作成された架空のインフルエンサーで、一部のブランドがプロモーションに活用しています。

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    また、テクノロジーの進化により、自動のデータ分析が手軽に行えるようになりました。

    ユーザー行動やマーケットセグメントなどのデータを分析することにより、ブランドとインフルエンサーはオーディエンスに合ったコンテンツを提供することができます。さらに、キャンペーンの結果もこれまでよりも正確に測定できるようになり、ブランドはそのデータを基にキャンペーンの内容を改善し、より効果的なインフルエンサーマーケティングを実施する事ができます。

    インフルエンサーマーケティングはROIの測定が難しいと言われており、そのせいでインフルエンサーマーケティングへの参入に二の足を踏んでいるブランドは多いものです。

    特に、これまで通常のオンライン広告を出稿していたブランドは、それと同じようにインフルエンサーマーケティングの効果測定が可能かどうか懐疑的です。ただ、何か新しい事を始める時にはリスクが伴うものです。

    どのようなプラットフォームを利用してインフルエンサーマーケティングを実施したとしても、アプリや専用のツールを使ってROIを測定する事は可能です。

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    インフルエンサーのトレンド

    ここからは、2020年のインフルエンサーマーケティングにおける「インフルエンサーのトレンド」について説明していきます。

    2020年には、ブランドとインフルエンサー、そしてオーディエンスの関係性がより深いものになっていきます。消費者はオンライン上の情報に信憑性を求め、ブランドは「いいね!」などの分かりやすいエンゲージメントを向上させる事よりも、オーディエンスとの長期的な繋がりに価値を見出すようになります。

    5. 長期契約の標準化

    インフルエンサーと長期契約を結ぶメリットについてはこれまでも様々な媒体で取り上げられてきましたが、2020年には長期契約が標準化されると考えられています。

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    インフルエンサーと長期契約を結ぶメリットと注意点

    インスタグラムコンテンツのコンサルティングサービスを提供しているManu Muraroさんは、「オーディエンスが商品の購入に至るまで、インフルエンサーはコンテンツを通じて6~8回程度、製品に接触させることが必要」だと言います。

    また、インフルエンサーのElizabeth Gilmoreさんは、「ブランドと長期契約を結んで商品のプロモーションを行うと、回を重ねるごとに内容が具体的になっていく」と感じています。 「ブランドと関係性を構築する事とブランドに対するコミットメントが、インフルエンサーマーケティングの成功の鍵を握ります。」と彼女は話します。

    長期契約の標準化により、ブランドにとってインフルエンサーが真のビジネスパートナーに変わろうとしています。インフルエンサーは単なるブランドの広告塔ではなく、ブランドの代弁者と言えるでしょう。ブランドは、インフルエンサーをマーケティングチームのメンバーとして受け入れる姿勢を持つ事が大切です。

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    6. 小規模インフルエンサーの活躍

    インフルエンサーは、フォロワー数の違いによって次のように分類できます。

    ・メガインフルエンサー(フォロワー数100万人以上)
    ・マクロインフルエンサー(フォロワー数10万人~100万人)
    ・マイクロインフルエンサー(フォロワー数1万~10万人)
    ・ナノインフルエンサー(1万人以下)

    インスタグラムのプロモーション会社「Later社」の最新の調査で、フォロワー数が1万~10万人のマイクロインフルエンサーによるコンテンツのエンゲージメント率が最も高いことが分かりました。

    インスタグラムでプロモーションを展開するブランドが増えた事によって、全体的にコンテンツのエンゲージメント率が低下傾向にあります。そのため、ブランドはフォロワーとの繋がりが強い小規模インフルエンサーとのタイアップに価値を見出すようになりました。

    トラベルインフルエンサーのChristina Galbatoさんはその考えに同意し、「小規模なインフルエンサーは、フォロワーが少ない分、一人一人のフォロワーとの結びつきがとても強いのです。」と語っています。

    今後は複数の小規模インフルエンサーと長期契約を結んでブランドのインフルエンサーグループを作り、定期的にキャンペーンを実施する形のタイアップが増えていくでしょう。

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    7. オーディエンスとのより深い関係性

    2019年頃から、インフルエンサーとブランドは「洗練された完璧なコンテンツ」から「少しリアリティが感じられるコンテンツ」に移行し始めました。特に美容業界ではブランドや商品プロモーションに透明性を求める動きが強まっています。

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    2020年には、インフルエンサーの生活をよりリアルに垣間見ることができるコンテンツが増えると予測されています。そこには、「オーディエンスが求めるコンテンツ = 価値のあるコンテンツ」を配信することによってオーディエンスとの繋がりを深めようとするブランドとインフルエンサーの狙いがあります。

    インフルエンサーのRohini Maukさんは、「今では、かつてない程、オーディエンスがコンテンツを通じてインフルエンサーの事をもっと知りたいと思っています。インフルエンサーはよりリアルな日常生活を見せる事によってオンライン上でさらに成長できるでしょう。」と話します。

    様々な業界でインフルエンサーマーケティングの成功事例が生まれ、それを目撃して新たにインフルエンサーマーケティングに参入するブランドは今後も増え続けていくでしょう。



    まとめ

    今回は、2020年のインフルエンサーマーケティングトレンド12選の前編として、マーケティング戦略やインフルエンサーのトレンドについて説明しました。

    後編では、プラットフォームやコンテンツのトレンドなど、より具体的な内容を取り上げていきますので併せてご覧ください。

    おすすめ記事:2020年のインフルエンサーマーケティングトレンド12選【後編】

    2020年のインフルエンサーマーケティングトレンド12選【後編】

    参考:https://later.com/blog/influencer-marketing-trends/
    https://medium.com/@folkeviralaccess/what-to-expect-from-influencer-marketing-in-2020-1e93f1cf868f
    https://www.thedrum.com/opinion/2019/12/13/seven-predictions-influencer-marketing-2020
    https://talkinginfluence.com/2019/12/04/talking-influence-2020-influencer-marketing-predictions/
    https://casting-asia.com/ja/news/2213/
    https://medium.com/swlh/top-9-influencer-marketing-trends-of-2020-cee0ac935a84

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