ムスリム系ファッションブランド、インフルエンサーの個性を活かしフォロワー数が増加

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『State of the Global Islamic Economy Report』誌の調査によると、ムスリムの消費者は推定2300億ドル(約23兆円)を衣服に投資しているという結果が出ました。この数字は2019年には3270億ドル(約32兆7千億円)まで成長すると予想されていて、現行のアパレル市場で
・イギリスの1070億ドル(約10兆7千億円)
・ドイツの990億ドル(約9兆9千億円)
・インドの960億ドル(約9兆6千億円)
を合わせてもゆうに超える規模となっています。

従来のアパレル市場は保守的なスタイルがほとんどを占めていますが、この数字を基に考えるとムスリムのアパレル市場には多くのチャンスが転がっているのではないかという考えに行きつきます。ではイスラム教徒の女性として、ムスリムの品位を保ちつつスタイリッシュな装いをすることは可能なのでしょうか?

現代女性と慎み深い女性の両方にストリートウェアを提案するブランド「LULLY SELB社」が、この考え方を提唱しています。Selma BamadhajさんとNur Rulhudaさんというイスラム教徒の女性2人が設立したシンガポールに拠点を構えるLULLY SELB社は、イスラム教徒の女性の価値を損なわずに、彼女達がどういった服装をすべきかというステレオタイプを打ち砕くことを目標に掲げています。

しかしイスラム教徒以外の市場がメインを占めるシンガポールで、すでに形になっている概念を打ち破って新しいファッションビジネスを始めることは簡単ではありません。だからこそSelma BamadhajさんとNur Rulhudaさんは、
・ソーシャルメディア
・インフルエンサーマーケティング
・コンテンツマーケティング
・メールマーケティング
これらを使って、シンガポールだけでなくアジアを巻き込みブランドの認知度を高めようと考えました。

今回は、ファッションのプロから起業家になった「LULLY SELB」の設立者たちが、インフルエンサーマーケティングを駆使してインターネット上でブランドの存在感を高めた手順と秘訣を紹介します。

目次

  1. ファッション業界に参入
  2. ブランドの信念に共感するインフルエンサーとタイアップ
  3. ファンにブランドの裏側を見せる
  4. シンガポールの市場を飛び越える
  5. まとめ
  6. ファッション業界に参入

    シンガポールで多くの小売店が閉店に追い込まれている今、なぜムスリム向けのファッションブランドを開業したのか?という問いに、Selmaさんは次のように答えています。「私はむしろ、現在のムスリム向けファッションブランドにイライラしていたんです。見た目が伝統的すぎるし、フェミニンでかわいらしいものばかり。私が着たいと感じる洋服の美的センスからは全体的にかけ離れていました。」

    ムスリム向けのファッションに選択肢が少ないことにうんざりして、Selmaさんはこの状況をなんとかしようと考えていました。ファッション業界に参入するため、まずSelmaさんはタイと中国からファッショナブルだけど格安な衣類を調達し、台車を引いて手売りをしたりフリーマーケットに出店して自ら商品を売り始めたのです。

    手売りやフリーマーケットで商品を売っていたころ、Selmaさんはブランドをインターネットで宣伝し、認知度や存在感を向上させる必要性に気付きました。そこで数多くいるファッション業界の起業家のように、インスタグラムにLULLY SELBのブランドアカウントを開設し、ソーシャルメディアを利用したマーケティング戦略を開始したのです。

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    ブランドの信念に共感するインフルエンサーとタイアップ

    当時、多数の企業がインフルエンサーをソーシャルメディアのフォロワー数だけで選別していましたが、Selma BamadhajさんとNur Rulhudaさんは異なる方法を選択しました。彼女たちはソーシャルメディアの中でも独自の個性を放つ人材を探し、非公式ながらブランドを代表しているかのように振る舞っているファッションインフルエンサーにコンタクトをとり、タイアップ契約を結びました。そういったインフルエンサーは、身につけている服やアクセサリーのブランドについて積極的に情報を発信してくれるからです。

    Selmaさん達とインフルエンサーの努力の甲斐あって、LULLY SELBのインスタグラム・アカウントは数日でフォロワー数400人を突破。タイアップしたインフルエンサーはLULLY SELBのファッションに身を包み、#ootd (今日のコーディネート)というハッシュタグを使いコンテンツを投稿することで、ブランドの認知度向上に貢献しました。

    初のインフルエンサーマーケティングキャンペーン後、Selmaさんは「私たちのブランド戦略に適していて、これから人気が出そうなインフルエンサーが持つ個性とスタイルをフィーチャーするんです。するとインフルエンサーのフォロワーが、私たちのコンテンツをお気に入りにしてくれる割合が増えました。ブロガーと協力してキャンペーンを進めていたときに比べると、数値は高くなりましたね。ブランドの認知度向上と売上増加という点では、インフルエンサーマーケティングは大成功でした。」と語っています。

    LULLY SELBのソーシャルメディアでの取り組みはシンガポールやマレーシア、カタールのオンラインメディアの目に留まり、彼女たちのインフルエンサーマーケティング成功事例がサイト上で紹介されました。しかしソーシャルメディアでユーザーとのつながりが深まり、Webサイトで露出が増えることを喜ぶ一方で、閑散期の売上を維持することには頭を悩ませています。年間を通して製品に対する顧客の関心と要求を持続させるために、彼女たちは顧客に寄り添ったコンテンツの提供を開始しました。

    ファンにブランドの裏側を見せる

    LULLY SELBは「ブランドの顧客に寄り添ったコンテンツ」として織物設計の過程からスタイリングのポイントまでブランドの舞台裏を投稿して見せたところ、製品情報に関する宣伝コンテンツより50%も高いエンゲージメント率を叩き出しました。

    Selmaさんは「ブランドの裏側を投稿したコンテンツには質問を添えて、ファンからどういった反応が返ってくるか実験しました。ありがたいことに、このコンテンツは通常のコンテンツより50%も高いエンゲージメント率を示しています。ファンも私たちのブランドがすることに参加したいと感じているということが証明された瞬間でした。」と、話しています。

    ソーシャルメディアとWebサイトだけが、彼女たちが活用しているデジタルチャンネルではありません。LULLY SELBでは、さらにメールを使ってコンテンツをシェアしており、メールでファンとつながりを保つため、メール購読者には1~2週間に1回ニュースレターを送付しています。

    「私たちが配信するメールの開封率は30%です。ファッション業界全体のメール開封率の平均より、だいたい9%高い数値なんですよ。“顧客にマッチしたタイトル”で送信すると、新製品発表といったようなタイトルのメールより、開封率が高いと気付きました。」とSelmaさんは教えてくれました。

    シンガポールの市場を飛び超える

    シンガポールのムスリム人口は約600万人の国民のうち14%であり、このことを視野に入れてLULLY SELBはアメリカでの事業展開を考えています。

    Selmaさんは、「インターネットで確立したブランドとして、世界中に私たちの商品を届けたいです。最近はムスリム用のスポーツウェアの開発に取り組んでいるんですよ。」と、今後LULLY SELBを展開していくビジョンについて語ってくれました。

    しかしSelmaさんたちは現在も、世間のムスリム女性に対する見方と自分たちの考え方に大きなずれを感じています。そのため、ムスリム女性向けスポーツウェアの開発が「ムスリムの女性の服装に対するステレオタイプを打ち砕く」という、ブランドの信念と一致していると話していました。今後は急速に進化しているテクノロジーを使って、インフルエンサーマーケティングと公式Webサイトを通して世界中のファンや見込み客と交流し、つながる方法を探そうと模索しているようです。

    まとめ

    今回の事例では、ムスリム系ファッションブランド「LULLY SELB」が、インフルエンサーマーケティングを取り入れたことで大きく成長を遂げた記録を紹介しました。

    LULLY SELBの設立者たちは、
    ・インスタグラムにブランドのアカウントを作成
    ・これから人気が出そうなインフルエンサーとタイアップ
    ・ブランドの裏側を公開
    ・文面を工夫したメールでコンテンツをシェア
    上記のような方法で、小さかったブランドを世界規模のアパレルへと変貌させています。

    「インターネットのように常に変化が伴うものには圧倒されがちだが、重要なのはブランド価値に忠実であり続けて、顧客を理解することです。」と、設立者のSelmaさんとNurさんは語っていました。

    製品の制作に注力するのも大切ですが、インフルエンサーマーケティングにおいては、タイアップしているインフルエンサーやブランドのファンとの絆を深めるために多くの時間を使うことが、成功へ繋がる鍵だと考えられます。

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    参考:Forbes:Digital Marketing Tips From Singapore’s Hottest Muslimah Fashion Brand
    http://www.forbes.com/sites/joeescobedo/2016/10/19/digital-marketing-tips-from-singapores-hottest-muslimah-fashion-brand/#32071db15efa

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