製薬会社のインフルエンサーマーケティング

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製薬会社は長い間、業界ならではの「ある理由」から、インフルエンサーマーケティングを実施することをためらってきました。しかし、最近ではインフルエンサーとのタイアップキャンペーンを実施し、会社のプロモーションに成功する製薬会社が増えてきています。

今回は、製薬会社がインフルエンサーマーケティングを実施する上で抱える問題点と、インフルエンサーマーケティンを取り入れるようになった理由を、具体的なタイアップ事例を挙げて紹介します。

 

目次

    1. 製薬会社がインフルエンサーマーケティングで抱える問題点とは?
    2. 規制が厳しい製薬会社のインフルエンサーマーケティング
    3. 製薬会社ならではのインフルエンサーマーケティング事情
    4. 製薬会社のインフルエンサーマーケティング事例4選
    5. 4つの事例から学べること
    6. まとめ

製薬会社がインフルエンサーマーケティングで抱える問題点とは?

Instagram 史上最も多い700万件を超える「いいね!」を獲得した投稿は、アメリカ出身の女優である Selena Gomez さんとコカ・コーラ社がタイアップしたものでした。

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一方、製薬会社の「Duchesnay USA」は、コカ・コーラ社と同じように、有名インフルエンサーでアメリカ出身のソーシャライトである Kim Kardashian さんとタイアップし、2015年に「Diclegis」という悪阻の薬をプロモーションしました。しかし、Duchesnay USA のスポンサーコンテンツは FDA(アメリカ食品医薬品局)のルールに違反しているとして注意を受けてしまいました。その後、 Kim Kardashian さんは投稿したコンテンツを修正し、再度投稿しました。

「薬」という商品の特性上、製薬会社は発信するコンテンツの内容に特に気をつけなければなりません。コカ・コーラ社のような大手企業が有名インフルエンサーとタイアップして成功を収める一方、製薬会社は、他の業界に属する企業が当たり前に行っている有名人とタイアップしたプロモーションを避けてきました。

製薬業界にとって、副作用や薬のリスクについて明確に伝え、国のルールに則ってインフルエンサーキャンペーンを展開することはある種のチャレンジでした。

規制が厳しい製薬会社のインフルエンサーマーケティング

FDA(アメリカ食品医薬品局)の定めるルールに加えて、FTC(連邦取引委員会)にもインフルエンサーマーケティングプロモーションに関するガイドラインがあります。

米国インフルエンサーマーケティングプラットフォームの「Mediakix」によると、2017年に、ソーシャルメディアの第一線で活躍するブランドやインフルエンサーの93%に対してFTC のガイドラインについての警告が送られました。インフルエンサーマーケティングを実施するほとんどの企業が注意を受けていることになります。また、製薬会社の場合は FTC に加えて FDA から注意を受ける可能性があります。

製薬会社のインフルエンサーマーケティングには厳しい規制がありますが、ルールに則って正しく実施すれば十分な効果が期待できます。アメリカのシンクタンクである「ピュー研究所」の調査によると、18歳~24歳までの90%が、「ソーシャルメディア上の医療に関する情報を信用する」と答えました。また、アメリカの成人の3分の1が、「病気についてオンラインで調べる」と答えました。

このように複雑で規制が多い状況の中、製薬業界はどのようにしてインフルエンサーとのタイアッププロモーションを実施したのでしょうか。製薬業界はここ数年の間にソーシャルメディアで戦略的に成熟し、他の業界とは少し異なるインフルエンサーと製薬会社の関係ができあがりつつあります。

製薬会社ならではのインフルエンサーマーケティング事情

一般的な企業が実施しているインフルエンサーマーケティングでは、複数のコンテンツを発信し、多くのオーディエンスにリーチすることが求められます。一方、製薬会社のインフルエンサーマーケティングは、「長期契約」「量より質」「少ないリーチ」が特徴です。なぜならば、製薬会社のマーケティングはニッチなオーディエンスを通じて狭いネットワークに向けられるものだからです。

製薬会社はキーとなるオピニオンリーダーと長期契約を結び、ブランドを効果的にプロモーションし、オンライン上のインフルエンサーマーケティングで非常に重要な「信頼性」を保ち続けることができるインフルエンサーとタイアップします。製薬会社とタイアップするインフルエンサーは、医者、フィットネスの専門家、栄養士などが中心で、一般的な「有名インフルエンサー」とは少し異なります。

製薬業界がインフルエンサーを選ぶプロセスは長期に渡って慎重に行われ、選ばれたインフルエンサーと長期契約を結ぶのが一般的です。このような背景から、2016年に製薬業界が実施したキャンペーンの EMV の平均額は、他のどの業界よりも高額になっています。

おすすめ記事:EMV(アーンドメディアバリュー)はどんな基準?EMV戦術の使用法

製薬会社のインフルエンサーマーケティング事例4選

ここからは、製薬会社が実施したインフルエンサーマーケティング事例を4つ紹介します。「薬」という商品の特性上、製薬業界にはインフルエンサーマーケティングを実施する上で情報公開の方法など、気を付けなければならない点がいくつかあります。ただし、インフルエンサーマーケティングを成功させる法則は他の業界と何ら変わりはありません。

成功例1: 糖尿病に苦しむスーパーカードライバーと Amcal Pharmacy の事例

Jack Perkins さんは、Instagram に21,000人のフォロワーを抱えるスーパーカーのドライバーです。Jack Perkins さんはオーストラリアの製薬会社「Amcal Pharmacy 社」とタイアップし、糖尿病についての個人的な体験談と、Amcal Pharmacy がどのように彼の病気との闘いに役立ったかをフォロワーに伝えました。

コンテンツでは特定の商品の紹介はせず、Jack Perkins さんは、キャンペーンを実施した年の中で最も重要なレースに一番良い健康状態でいられたことについて感謝の気持ちを表現しました。

Jack Perkins さんはスポンサーコンテンツで、#DiabetesAwareness、#spon、#JustAskAmcal、 #PharmacistAlwaysAvailable のハッシュタグを使用しました。彼が投稿したスポンサーコンテンツは1,397件の「いいね!」と33件のコメントを獲得し、エンゲージメント率は7.2%という結果になりました。

Jack Perkins さんは、特定の薬ではなく自身の体験談にフォーカスしてコンテンツを作成しました。個人的な体験談を交えたコンテンツ制作は、インフルエンサーマーケティングを成功させるための大切なポイントです。

成功例2: ロッククライマーと Merck 社の避妊教育についての事例

プロのロッククライマーである Emily Harrington さんは、Instagram に160,000人のフォロワーを抱え、自身がロッククライミングをしている様子をコンテンツとして投稿しています。

Emily Harrington さんは、アメリカの大手製薬会社「Merck 社」とタイアップしました。彼女もスーパーカードライバーの Jack Perkins さんと同様、特定の薬をプロモーションするのではなく、Merck 社の避妊教育に関するキャンペーンを紹介し、女性が避妊について医者に相談することを勧めました。

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#ad I’ve been fortunate in life to be able to merge my passion for climbing and adventure into a career and lifestyle, but not without a lot of dedication, training and sacrifice. As I evolve as a person and an athlete, so do my goals and objectives. Some are specific to climbing while others are more personal. I hope to not only continue to live a fulfilling and passionate life, but also someday to be able to share my adventures with a family. Family planning and birth control has played a major part in how I have organized my life and will remain important as I enter the next phases of life. I believe in educating yourself on your options and open communication when it comes to planning and priorities, which is why I’m teaming up with Merck on the @herlifeheradventures campaign to encourage other women to discuss birth control options with their doctor – check the link in my profile for more and follow along on Instagram #HerLifeHerAdventures // @tarakerzhner photo of me climbing the legendary ‘Panic in Detroit,’ at my home cliff in Donner Summit, CA

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Emily Harrington さんは、#ad と #herlifeheradventures のハッシュタグを使って、自身の意見を交えながら Merck 社のキャンペーンをプロモーションしました。スポンサーコンテンツは7,468件の「いいね!」と46件のコメントを獲得し、エンゲージメント率は4.7%でした。

「避妊」と「ロッククライマー」は異色の組み合わせですが、Emily Harrington さんが活き活きと自分のやりたいことを楽しむ姿を通じて、暗に女性が自分らしく生きることの大切さをオーディエンスに伝えた結果、大きな反響を得たと考えられます。

失敗例1: ママブロガーと Pfizer 社の子供の風邪についての事例

Ashley Paige さんは、Instagram に13,600人のフォロワーを抱える「ママブロガー」です。 彼女はアメリカの製薬会社「Pfizer 社」とタイアップし、彼女自身のブログで子供が風邪をひいた際に市販薬を使って対処する方法を紹介しました。Instagram のスポンサーコンテンツでは、ブログについての情報を発信しました。

Ashley Paige さんは Instagram のコンテンツでもブログでも薬の副作用については触れず、効能にフォーカスしました。スポンサーコンテンツは89件の「いいね!」を獲得し、エンゲージメント率は0.8%という結果になりました。

こちらの事例は、最初の2つの事例と比べてエンゲージメント率が低い結果となりました。Instagram のコンテンツでは多くを語らずブログに誘導するというやり方が「広告感」を演出し、フォロワーの関心を集めることができなかったことが原因と考えられます。

失敗例2: 有名ブロガーと Celgene 社の乾癬についての事例

イギリスのブロガーで TV 番組の司会者でもある Louise Roe さんは、Instagram に696,000人ものフォロワーを抱える有名インフルエンサーです。彼女はアメリカの製薬会社である「Celgene 社」とタイアップし、皮膚疾患である乾癬についてのプロモーションを実施しました。

スポンサーコンテンツのキャプションで、Louise Roe さんが乾癬の症状にどのように対処しているかをまとめたブログへのページのリンクを共有しました。ブログのページには実際の製薬会社のリンクが貼られ、そこには FDA のコンプライアンス情報も含まれています。

Louise Roe さんはスポンサーコンテンツで商品の名前を出しませんでしたが、Celgene 社の薬を使用していることを暗示しました。コンテンツでは #InsidePerspective というハッシュタグと共に、FTC によって定められているハッシュタグである #Ad も使用されました。彼女のコンテンツは3,969件の「いいね!」と23件のコメントを獲得し、エンゲージメント率は0.6%でした。

こちらの事例も、コンテンツのレギュレーションを遵守したにも関わらず、フォロワー数に対してエンゲージメント率があまり伸びませんでした。フォロワーからは、スポンサーコンテンツで使われた Louise Roe さんの写真のファッションを称賛するコメントもあり、Celgene 社のプロモーションという意味では改善できる点があると言えます。

4つの事例から学べること

今回の4つの事例のうち、エンゲージメント率という点で成功を収めたのは「1: Amcal Pharmacy」と「2: Merck 社」の2つの事例でした。

2つの事例に共通していたのは、インフルエンサーが自身の体験や意見を、プロモーションしたい製薬会社と結び付けたことです。フォロワーにとって一番の関心事は、自分がフォローしているインフルエンサーがどのような日常生活を送っているのか、そして、どのような考え方をしているのかという事です。それを上手にコンテンツで表現できると、フォロワーの関心を集めることができるのです。

まとめ

    1. 今回の記事では、製薬会社がインフルエンサーマーケティングを実施する上で抱える問題点と、インフルエンサーマーケティングを取り入れるようになった理由、そして、具体的なタイアップ事例を4つ紹介しました。

製薬会社は「薬」という商品の特性上、プロモーションの内容を精査し、慎重に実施する必要があります。すでにインフルエンサーマーケティングを実施している製薬会社は、特定の商品を直接プロモーションすることは避け、キャンペーンを通じて企業自体のプロモーションを上手に行っています。

インフルエンサーマーケティングはプロモーションのやり方次第で製薬会社のように制限がある業界でも効果を発揮します。製薬業界内でインフルエンサーマーケティングの成功事例が増えてくると、それを目撃したライバル企業が続々と参戦し、更なる盛り上がりを見せるでしょう。

製薬会社がインフルエンサーとのタイアップキャンペーンを実施する際は、信頼のおけるインフルエンサーを探し出し、長期契約を結んでプロモーションを実施するのがポイントです。

企業がインフルエンサーに直接コンタクトを取るという方法もありますが、インフルエンサーマーケティングプラットフォームに依頼すると企業の目的にマッチしたインフルエンサーを紹介してもらえますので、製薬会社のように規制が多い業界の場合は特に、エージェントを活用することも視野に入れると良いでしょう。

 

参考:http://mediakix.com/2018/11/pharmaceutical-influencer-marketing/#gs.6jz5mw

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