消費者は日々、テレビ、看板、ソーシャルメディア、検索エンジンなどでさまざまな企業広告を目にしています。2020年の現在では、消費者ひとりあたりが目にする広告の数は1日あたり6,000~1万件と考えられており、消費者は「広告疲れ」しています。
しかし、ビジネスにはプロモーションが必要です。企業は、消費者により自然な形でアプローチできるプロモーション施策を考える必要があります。そこで注目されているのがインフルエンサーマーケティングです。
インフルエンサーマーケティングは口コミから派生したマーケティング施策で、消費者にアプローチする方法も企業の有料広告とは異なります。
今回は、インフルエンサーマーケティングが効果的な10の理由について説明します。
目次
- 1.若年層の消費者はインフルエンサーを信じている
- 2.オーディエンスを正確にターゲティングできる
- 3. インフルエンサーは質の高いコンテンツを作成できる
- 4. ブランド認知度の向上に役立つ
- 5. ブランドについての話題が増える
- 6. 広告をブロックするアプリの影響を受けない
- 7. オーディエンスからのフィードバックが改善に役立つ
- 8. B2Bバイヤーに対して効果的にアプローチできる
- 9. SEO対策になる
- 10. ROIを高めることができる
- まとめ
1.若年層の消費者はインフルエンサーを信じている
信頼は、プロモーションを成功させるために最も重要な要素の一つです。消費者は、企業の広告に掲載されている商品よりも、家族や友人など、身近で信頼できる人に勧められた商品やサービスに興味を持ちます。
インフルエンサーはソーシャルメディアのオーディエンスにとって友人や家族のように身近な存在です。インフルエンサーは、特に10代を中心とするZ世代と呼ばれる年齢層のオーディエンスに対して強い影響力を持ち、Googleによる調査では、70%の10代が「有名人よりもユーチューバーを身近に感じる」と答えました。
さらに、40%が「自分のお気に入りのユーチューバーは友人よりも自分のことをよく分かってくれている」と感じており、Z世代に対するインフルエンサーの影響力の強さが顕著に表れた統計結果と言えます。また、米国のマーケティング会社「MarketingCharts」によると、「Z世代の85%は新商品についてソーシャルメディアで情報収集する」といいます。
オーディエンスは、インフルエンサーのライフスタイルに強い興味を持っています。そのため、インフルエンサーが心から気に入っている商品やサービスを推薦するとオーディエンスは強い興味を示します。
そして、オーディエンスがインフルエンサーのコンテンツを拡散し、「フォロワーのフォロワー」がそれを目撃することによって情報が口コミとして広がっていきます。影響力の強いインフルエンサーが情報を発信し、自然な形で口コミを生み出すことができるのがインフルエンサーマーケティングが効果的だと言われている最大の理由です。
2.オーディエンスを正確にターゲティングできる
マーケティングプロモーションを実施する上で最も大切なのは、ブランドがターゲットとしている消費者層に対して確実にリーチすることです。インフルエンサーマーケティングは、インフルエンサーのフォロワーに対してアプローチするマーケティング手法なので、適切なインフルエンサーとタイアップできれば高確率でターゲット層へのアプローチが可能です。
オンライン広告の場合はターゲット層を年齢や性別で絞るのが一般的ですが、インフルエンサーマーケティングの場合はインフルエンサーのフォロワーがターゲットになるため、オーディエンスの表面的なデータだけではなく、「ヨガ」「ファッション」「ライフスタイル」など、興味の対象も含めて細かいターゲティングを行うことができます。
また、マーケティング担当者の51%は、インフルエンサーマーケティングを通じて他のチャネルよりも優れた顧客を獲得し、多様なオーディエンスにリーチできると報告しています。
フォロワーはインフルエンサーの熱心なファンで、インフルエンサーのライフスタイルに強い興味を持っています。そのため、インフルエンサーが紹介する商品やサービスにも強い関心を示します。
不特定多数の消費者に対してアプローチした場合に比べて、インフルエンサーという「憧れの人」の紹介でブランドを知ったフォロワーはブランドに対して良いイメージを持ちます。その結果、ブランドロイヤルティが高く、購買に繋がる「質の良い顧客」との繋がりが生まれます。
おすすめ記事:【2020年最新版】インフルエンサーマーケティングでミレニアル世代を効果的にターゲティングする方法5選
3. インフルエンサーは質の高いコンテンツを作成できる
インフルエンサーはオンラインで活躍する有名人で、ほとんどの場合、ソーシャルメディアやブログなど、コンテンツを配信するためのプラットフォームにアカウントを持っています。
インフルエンサーマーケティングの代表的な手法が、インフルエンサーに依頼して「スポンサードコンテンツ」と呼ばれる広告コンテンツを作成してもらうことです。
インフルエンサーは「コンテンツクリエイター」とも呼ばれるコンテンツ作成のプロで、オーディエンスがどのようなコンテンツを望んでいるかを熟知しています。そして、商品やサービスを実体験に基づいてレビューし、自らのセンスで美しいコンテンツに仕上げます。
また、インフルエンサーが作成した質の高いコンテンツは、許可を取ってブランドのホームページやソーシャルメディアアカウントなどで再利用することもできます。インフルエンサーマーケティングキャンペーンを実施することによって新たなオーディエンスにリーチできるだけではなく、他のプロモーションに使用できる質の高いコンテンツを手に入れることができる点も、インフルエンサーマーケティングならではのメリットです。
4. ブランド認知度の向上に役立つ
多くのブランドが、インフルエンサーマーケティングに取り組むことによって新たな顧客層との繋がりが持てると考えています。2019年に米国インフルエンサーマーケティングプラットフォーム「Mediakix」が162のブランドやマーケターを対象にした調査によると、調査対象の86%が「ブランド認知度の向上がインフルエンサーマーケティングの目的だ」と答えました。
インフルエンサーは、ファッションやコスメ、フィットネスなど、基本的に何かしらの専門分野を軸に活動しています。そのため、フォロワーはインフルエンサーのことを「その分野の専門家」と考えています。信頼できるインフルエンサーが推薦する商品に関する情報は、「ブランドのキャッチコピー」ではなく、「インフルエンサーの本音」と受け取られます。
信頼できる専門家からの推薦はブランド認知度の向上に役立ち、ブランドに関する有意義なオンラインでの会話を始めるきっかけになります。
時計ブランドのDaniel Wellingtonは、インスタグラムでのプロモーションのパイオニアとして、インフルエンサーマーケティングを中心に施策を展開し、無名ブランドから世界中の有名人に愛されるブランドへと成長しました。
おすすめ記事:ファッション・時計業界のインフルエンサーマーケティング【Daniel Wellingtonの戦略】
5. ブランドについての話題が増える
インフルエンサーがブランドとタイアップしてスポンサードコンテンツを投稿すると、それに対してフォロワーから「いいね!」やコメントなどのリアクションがあります。普段からフォロワーとコミュニケーションを取っているインフルエンサーは、フォロワーのコメントに返信してブランドについての話題を盛り上げます。
また、インフルエンサーは、フォロワーからの質問に対してコメントを通じてコミュニケーションを取ることができるので、疑問をその場で解決し、購買行動に繋げることも可能です。
次のようなインフルエンサーマーケティング施策を実施するとさらにオンラインで情報が拡散されやすくなります。
・商品企画の裏側を紹介するコンテンツ・クーポンなどの特典があるコンテンツ
・ブランドのファンイベント
・インフルエンサーとの対面イベント
日本発のカジュアルファッションブランドであるユニクロは、海外における「UNIQLO x Orla Kiely:ヒートテックコレクション」の立ち上げ時にインフルエンサーマーケティングキャンペーンを実施し、イベントの実施前から話題が拡散されるような仕組みを作りました。その結果、ファッションブログや著名な出版物にユニクロのイベントに関する記事が30件以上掲載されました。
おすすめ記事:ユニクロの海外におけるオンライン戦略とインフルエンサーマーケティング事例
6. 広告をブロックするアプリの影響を受けない
一昔前まで、オンラインプロモーションと言えば企業の有料広告が一般的でした。しかし、数年前からオンライン広告をブロックするアプリが普及し始め、オンライン広告を取り巻く環境は厳しくなっています。
カナダに拠点を持ち、広告をブロックするソフトウェアについて調査している「PageFair社」によると、全世界で6億1,500万人もの人々が広告をブロックするアプリを使用しているといいます。
一方、インフルエンサーマーケティングの場合は、インフルエンサーが一般ユーザーと同じように自らのソーシャルメディアやブログのアカウントにコンテンツを投稿するため、広告をブロックするソフトの影響を受けません。
さらに、インフルエンサーマーケティングでターゲットとなる「フォロワー」は、性別や年齢層、興味の対象といったデータが明確で、効率よく狙った層にリーチすることができます。
せっかくマーケティングプロモーションに資金を投じても、ターゲット層に届かなければ意味がありません。オンライン広告が以前ほど効果的ではなくなってきている現在、インフルエンサーマーケティングは費用対効果が高い新たなマーケティング手法として注目を集めています。
7. オーディエンスからのフィードバックが改善に役立つ
インフルエンサーがスポンサードコンテンツを投稿すると、フォロワーから「いいね!」やコメント、質問などのアクションがあります。フォロワーは、友人や家族と話をする感覚でインフルエンサーが紹介した商品やサービスについて率直な意見を投稿します。
ブランドが一般消費者からのフィードバックを得るにはユーザーインタビューやアンケート調査を実施するのが一般的ですが、外部の調査会社に依頼すれば当然費用がかかります。インフルエンサーマーケティングを実施すれば、インフルエンサーを通じて、消費者の生の声という貴重なマーケティングデータを入手することができます。
また、発売前の商品情報の一部をインフルエンサーに公開し、コンテンツとして投稿してもらうと、消費者のリアルな反応を見ることができます。フィードバックを参考にして商品を改善することによって売上の向上も期待できるでしょう。
8. B2Bバイヤーに対して効果的にアプローチできる
インフルエンサーマーケティングといえばファッションやコスメなどのB2Cマーケティングのイメージが強いですが、実はB2Bマーケティングに対しても非常に効果的です。
B2Bブランドは、B2Cブランドのように一般消費者との接点が多い訳ではありません。そのため、「ブランドの存在自体をどう知ってもらうか」という点がマーケティング戦略の最初の課題になります。
ビジネス特化型SNS「LinkedIn」の調査によると、B2Bバイヤーの実に84%が、知人の紹介から購入プロセスを開始するといいます。B2BはB2Cに比べて一回の取引金額が高額になる傾向があるため、新しい企業との取引には慎重です。そのため、同じB2B業界で働く知人からの口コミが購買行動に大きな影響を与えます。
インフルエンサーマーケティング業界には、「B2Bインフルエンサー」と呼ばれる人々が存在します。口コミが重要な役割を果たすB2B業界において、B2Bに詳しいインフルエンサーの意見が有利に働くのです。
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9. SEO対策になる
インフルエンサーマーケティングは、直近のマーケティング目標を達成するだけでなく、長期的なSEO対策にも効果的です。
ソーシャルメディアで情報を求めるユーザーは、意思決定プロセス中に検索エンジンも使用します。The Social Media Revolutionによると、ユーザーが作成したソーシャルメディアの投稿は、世界の上位20ブランドの検索結果のうち25%を占めています。つまり、ソーシャルメディアでブランドについて言及する人が増えれば増えるほど効果的なSEO対策に繋がるということになります。
さらに、インフルエンサーは複数のソーシャルメディアにアカウントを持ち、ブログを中心に活動しているインフルエンサーも数多く存在します。複数のプラットフォームでブランドや商品の名前がメンションされ、リンクが貼り付けられることによって更なるSEO効果が期待できます。
インフルエンサーマーケティングのSEO効果を最大限に高めるため、インフルエンサーとタイアップする際は、なるべく多くのプラットフォームに情報を展開してもらうようにしましょう。また、ハッシュタグやメンションなどで情報を整理することも大切です。
10. ROIを高めることができる
Influencer Marketing Hub社の調査によると、インフルエンサーマーケティングに1ドル投資した場合のROI(投資利益率)は5.78ドルだといいます。また、Tomoson社の調査で、インフルエンサーマーケティングを実施しているブランドの70%が2ドル以上、13%が20ドル以上のROIを記録していることが分かりました。これは、従来の広告の約11倍の投資収益率です。
インフルエンサーマーケティング市場は年々拡大を続け、2020年に史上最大の80億ドル規模にまで成長すると予想されています。美容メーカー大手のEstee Lauder社は、2020年のマーケティング予算のうち、75%をインフルエンサーマーケティングに割り当てると発表しました。
マーケティング戦略を考える上で、ROIが高い施策に投資することは非常に大切です。インフルエンサーの中でも、フォロワー数が比較的少ない「マイクロインフルエンサー」と呼ばれるインフルエンサーとのタイアップキャンペーンは、次のような理由で特にROIが高いことで知られています。
・エンゲージメント率が高い
フォロワー数が少ないインフルエンサーはフォロワーと積極的にコミュニケーションを取っており、繋がりが強いのでエンゲージメント率が高くなる傾向があります。
次のグラフは、インスタグラムのプロモーション会社「Later社」の調査結果を基に作成したもので、フォロワー数とエンゲージメント率の関係性を表しています。表を見ると、フォロワー数が2万5,000人以下の「マイクロインフルエンサー」と呼ばれる層のエンゲージメント率が最も高くなっています。
ブランドはマイクロインフルエンサーとタイアップすることによってROIを向上させることができる可能性があります。
・ニッチな分野に強い
ニッチな分野で活躍するマイクロインフルエンサーは、その分野に強い興味を持つフォロワーのコミュニティを持っています。ブランドはそのようなマイクロインフルエンサーとタイアップすることによって、ターゲットを絞ったインフルエンサーマーケティングキャンペーンを展開することができます。
・フォロワーとの信頼関係が強い
マイクロインフルエンサーは通常、数十万人、数百万人といった膨大なフォロワーを持つインフルエンサーよりもフォロワーとの繋がりが強く、信頼関係があります。「インフルエンサーが語ることは本音だ」とフォロワーが認識しているため、効果的なプロモーションに繋がります。
・タイアップの費用が比較的安い
一般的に、インフルエンサーマーケティングキャンペーンの費用は、インフルエンサーのフォロワー数が多ければ多いほど高額になります。マイクロインフルエンサーはブランドとのタイアップ経験が少ない場合も多く、これからキャリアを築いていく段階なので、タイアップ費用が比較的少額で済むことが多く、なおかつフォロワーとの信頼関係もあるので、費用対効果の高いキャンペーンが期待できます。
おすすめ記事:インフルエンサーマーケティングキャンペーンのROIを高める戦略7選
まとめ
今回は、インフルエンサーマーケティングが効果的な10の理由について説明しました。
インフルエンサーマーケティングは、インフルエンサーが持っているフォロワーのコミュニティに働きかけるマーケティング手法です。そのため、有料のオンライン広告とは異なるオーディエンスに対して効果的にアプローチすることができます。また、オーディエンスの興味の対象なども含めた細かいターゲティングができる点もインフルエンサーマーケティングの大きなメリットです。
オンラインマーケティング戦略にうまくインフルエンサーとのタイアップキャンペーンを取り入れて、ターゲットとなるオーディエンス層にアプローチしていきましょう。
参考:https://www.r2integrated.com/r2insights/5-reasons-why-influencer-marketing-is-right-for-your-brand
https://www.publicfast.com/page-what-is-influencer-marketing-and-how-it-works
https://grin.co/blog/why-influencer-marketing/
https://medium.com/@trusteedtech/why-is-influencer-marketing-effective-89f58ff3fdd
https://ppcprotect.com/how-many-ads-do-we-see-a-day/
https://www.agorapulse.com/blog/micro-influencers-roi/