米国アップル社が2008年の夏に、iPhone端末向けに「App Store」をリリースしたことをきっかけに、スマートフォンアプリは急激に広がっていきました。ところが現在、スマートフォンアプリ業界はある変化に直面しています。毎月、数千もの新しいアプリがリリースされている一方、新しいアプリをダウンロードするユーザー数が激減しているのです。
デジタル市場の分析を行っている「ComScore 社」によると、2014年にアメリカのスマートフォンユーザーの65%以上が1カ月間に新たにダウンロードしたアプリの数は、驚きの「ゼロ」という調査結果が出ています。
この消費行動の変化がスマートフォンアプリ業界に激しい競争を引き起こしています。どんなに素晴らしいアプリを制作しても、ユーザーがダウンロードしてくれなければその良さは伝わりません。
このような状況の中、スマートフォンアプリのダウンロード数を簡単に伸ばす方法が一つあります。それは「口コミによる推薦」です。インフルエンサーマーケティングは口コミによるマーケティングの代表的な手法で、複数のアプリがインフルエンサーとタイアップしたキャンペーンを展開することによってダウンロード数を伸ばしています。
今回は、競争が激化するスマートフォンアプリ業界でインフルエンサーマーケティングが広がっている理由を、二つの事例を取り上げながら紹介します。
目次
消費者は他の人の意見に価値を感じる
スマートフォンアプリの分析プラットフォームである「Tune」の調査によると、70%のユーザーが、「特定のアプリをダウンロードする前にそのアプリについて見たり聞いたりしたことが少なくとも一度はある」と答えています。 また、「三回以上そのアプリについて見たり聞いたりしたことがある」と答えたユーザーは全体の三分の一近くに上りました。スマートフォンアプリのマーケティングにおいて口コミがいかに重要な要素であるかが分かります。
自ら新しいアプリを探す気になれなくても、誰かが第三者からそのアプリについて聞いた場合、その人物がアプリをダウンロードする確率は飛躍的に高まります。この場合、第三者は「友人」や「家族」、「オンライン上でフォローしているインフルエンサー」である場合が多く、自分にとって身近な人物からの推薦は、日常生活におけるあらゆる判断に大きな影響を与えます。
口コミは、「一人から一人」よりも「一人から大勢」の方が効果が高いことは明らかです。このような理由から、スマートフォンアプリの新しいマーケティング手法としてインフルエンサーとのタイアップが増えているのです。フォロワーと信頼関係が出来上がっているインフルエンサーがスマートフォンアプリを推薦することにより、ターゲットとなるオーディエンスに効果的にアプローチすることができます。
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Avis 社のインフルエンサーマーケティング事例
米国レンタカー会社の「Avis(エイビス)社」は、2016年にレンタカーを簡単に手配できるアプリをリリースしました。ユーザーはアプリを使って、レンタカーの予約やキャンセル、予約可能な店舗の検索などを24時間行うことができます。また、けん引車サービスの手配などの緊急対応までアプリで行うことができます。
この新しいアプリについて口コミで話題を広げるために、Avis 社はインフルエンサーとタイアップしたキャンペーンを実施しました。キャンペーンに参加したインフルエンサーは、コンテンツの投稿時に #AvisNow というハッシュタグを付けました。
ところで、今回のキャンペーンに最適なインフルエンサーは誰でしょうか。もし一番最初にテクノロジー系のインフルエンサーが浮かんできたとしたら、キャンペーンの可能性を狭めることになってしまいます。
今回のキャンペーンに最適なインフルエンサーは、Avis 社のスマートフォンアプリのターゲットユーザーと同じカテゴリーのフォロワーを抱えている人物です。Avis 社は、上質なコンテンツを作成できるトラベルフォトグラファー、トラベルエキスパートなど9名のインフルエンサーとタイアップしました。
彼らは Avis 社のアプリを旅行の中でどのように活用するかを分かりやすく表現しました。アプリの良さを直接アピールするのではなく、アプリを使うことによって快適な旅ができることを強調しました。
キャンペーンの結果は次のようになりました。
Instagram 投稿:25回ブログ投稿:3回 エンゲージメント:9万7200 リーチ:93万3000 インプレッション:530万
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スマートフォンゲームアプリ Bejeweled の事例
全世界に4億人以上のユーザーがいる Instagram は、急成長しているスマートフォンゲームアプリのインフルエンサーマーケティングのプラットフォームとして人気が高まっています。ドイツの調査会社「Statista」の調査によると、2017年までのスマートフォンゲームアプリによる広告収入の総額は、6億5500万ドル(約720億円 / 1ドル110円計算)に達すると見込まれています。
スマートフォンゲームアプリの「Bejeweled(ビジュエルド)」は、Instagram で活躍するトップインフルエンサーとタイアップしてキャンペーンを行いました。キャンペーンの認知を高めるために、Bejeweled はインフルエンサーがゲームアプリを楽しんでいる写真を、キャンペーンのハッシュタグである #shinyplace と共に投稿してもらいました。
キャンペーンのゴール:
・#shinyplace のキャンペーンハッシュタグを通してソーシャルメディアのオーディエンス間でブランド認知を高め、ブランドのエンゲージメント率アップを図る。
・オーディエンスをアプリストアに誘導し、Bejeweled をダウンロードしてもらう。
キャンペーンの内容:
・Bejeweled は、Instagram キャンペーンの認知を高めるために2本の短編動画を作成し、YouTube に投稿しました。
・Instagram に85万人のフォロワーがいるインフルエンサーの David Lopez さんとタイアップし、Bejeweled をプレイしている写真を投稿してもらいました。David Lopez さんはコンテンツの中で、忙しい日々の中で Bejeweled をプレイする時間が癒しになっていることを伝えました。
・フィットネス、ヨガインフルエンサーの Koya Webb さんとタイアップし、仕事の合間にビーチでリラックスしながら Bejeweled をプレイしている写真を投稿してもらいました。彼女のコンテンツは、#shinyplace というブランドのキャンペーンテーマに完璧にマッチしていました。
キャンペーンの結果:
・Bejeweled が YouTube にアップした動画は150万回以上再生され、Instagram で活躍するドックインフルエンサーである JiffPom のアカウントに取り上げられたことによって話題作りに成功しました。 JiffPom は Instagram に250万人のフォロワーを抱えています。
・アプリに関する調査を行っている米国「App Annie 社」によると、Bejeweled が Instagram キャンペーンを始めた2016年5月10日以降、アメリカ国内のアップル社の iphone ゲームランキングで454位だった順位が135位まで上昇しました。
・アプリの総合ランキングでも702位から182位まで飛躍的に上昇しました。
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2つの事例から学べること
インフルエンサーとのタイアップは、スマートフォンアプリをプロモーションする上で最も効果的な方法と言えます。インフルエンサーが動画や写真、ブログ記事でアプリを紹介することによって、幅広いオーディエンスにアプリの存在を認知してもらうことができます。
前半で説明した通り、消費者は第三者から特定のアプリについて見たり聞いたりした場合、そのアプリをダウンロードする確率が非常に高くなります。ソーシャルメディアはそのきっかけを提供する場所として最適なのです。
まとめ
今回は、スマートフォンアプリのインフルエンサーマーケティングについて、「Avis 社」と、ゲームアプリの「Bejeweled」の2つの事例を取り上げながら紹介しました。
スマートフォンアプリの認知を高めてダウンロード数を伸ばしたいと思っている企業にとって、インフルエンサーがハッシュタグを付けたコンテンツを投稿して情報が拡散される仕掛けを作ることは非常に重要です。
Instagram もスマートフォンアプリの一つです。スマートフォンアプリを制作している企業がInstagram 上でインフルエンサーとタイアップしたプロモーションを行うことによって、消費者がスマートフォンアプリを認知し、その流れでアプリをダウンロードするという行動に直結するのです。
参考:https://blog.klear.com/mobile-app-influencer-marketing/ http://mediakix.com/2016/06/instagram-marketing-case-study-mobile-app-bejeweled/#gs.0xt02y https://qz.com/253618/most-smartphone-users-download-zero-apps-per-month/