毎年、インフルエンサーマーケティングには様々な流行が生まれ、2019年は「インフルエンサースポンサーシップの開示が規範となる年」と言われています。
企業とインフルエンサーがタイアップした広告コンテンツのことを「スポンサーコンテンツ」と言います。これまでは、オーディエンスに広告を拒否されることを恐れ、インフルエンサーとのタイアップを隠してコンテンツを投稿するケースもありました。最近ではインフルエンサーマーケティングに関わる多くの人がスポンサーシップを開示することの重要性に気づき始めています。
そして、意外なことに、スポンサーコンテンツを明確にすることは企業にとってデメリットになるどころか逆にメリットになるのです。今回は、スポンサーコンテンツを取り巻く環境の変化と、スポンサーコンテンツの開示が企業にもたらすメリットについて説明します。
目次
- SNS の広告コンテンツは嫌われる?
- 透明性が求められるインフルエンサーマーケティング
- なぜスポンサーシップの開示にメリットがあるのか?
- スポンサーシップの開示でエンゲージメントが改善される?
- スポンサーシップを開示する方法
- まとめ
SNS の広告コンテンツは嫌われる?
多くのマーケターが、「SNSの広告コンテンツはユーザーに嫌われる」と考えています。確かに、ウェブ上の企業広告をブロックするソフトウェアの利用が一般化するなど、従来の形態の広告を取り巻く環境は厳しくなっています。
一方、インフルエンサーマーケティングの場合は事情が異なります。一般的な SNS の企業広告コンテンツは、ユーザーが望まなくても一方的に「見せられる」ものです。インフルエンサーマーケティングの場合は、フォロワーは自分のお気に入りのインフルエンサーの好きなものや日常生活、考え方などに強い興味を持っているという違いがあります。すでに信頼関係で結ばれているインフルエンサーが発信したコンテンツは、例え広告コンテンツであってもフォロワーに興味を持ってもらえるのです。
インフルエンサーが発信したコンテンツがスポンサーコンテンツであることを開示してもプロモーションの効果に悪影響はありません。インフルエンサーが普段から本音でコンテンツを投稿し、正しいターゲット層にアプローチできていれば、プロモーションの効果は発揮されます。
驚くことに、従来の企業広告をあまり好まないY世代(1980年代初めから1990年代半ばに生まれた世代)やZ世代(1990年代半ば以降に生まれた世代)も、すでにオンライン上で関係性が出来上がっているインフルエンサーが投稿した広告コンテンツには興味を示すと言われています。
インフルエンサーマーケティングが効果的だと言われているのも、すでにインフルエンサーに興味を持っているという「ベース」が出来上がっている潜在顧客層へのリーチが可能になるという理由が大きく、それは従来の企業広告には決して真似のできないことです。
透明性が求められるインフルエンサーマーケティング
アメリカでは、FTC(Federal Trade Commission = 連邦取引委員会)によって、インフルエンサーがスポンサーコンテンツを投稿する際にはそれが広告であることを明確にすることが義務付けられています。近年、企業は経営の透明性が求められるようになってきましたが、インフルエンサーマーケティングにもその流れがきています。
もし、企業や、企業とタイアップしているインフルエンサーがスポンサーシップを隠してコンテンツを投稿した場合、それに気づいたオーディエンスとの関係性が一瞬で崩れてしまいます。実際にそのようなコンテンツには批判のコメントが集まります。それによって、インフルエンサーと企業はどちらも信頼を失ってしまうことになりかねません。
今日のインフルエンサーマーケティングにおいては、スポンサーシップを隠すことは非常にリスクが高いと言えます。企業の経営と同様に、透明性の高いプロモーションが実施できるかどうかがインフルエンサーマーケティングの成功の鍵となります。
なぜスポンサーシップの開示にメリットがあるのか?
企業とインフルエンサーは、スポンサーシップを開示することによってオーディエンスからの信用を得ることができるというメリットがあります。
信用性はインフルエンサーマーケティングにとって非常に重要です。特に、これから消費者の中心となる「デジタルネイティブ」と呼ばれる若い世代はオンライン上のコンテンツが広告かそうではないかを容易に見極めることができるので、コンテンツでスポンサーシップを開示することによって、逆にオーディエンスからの信用を得られるようになるのです。
そして、インフルエンサーマーケティングを成功させるためには目的にあったインフルエンサーとタイアップすることが大切です。
インフルエンサーマーケティング業界では、単純にフォロワーの数が多いインフルエンサーと契約するのではなく、企業のイメージとキャンペーンの目的に合ったインフルエンサーを、時間をかけて探すことをマーケターに呼び掛けています。
インフルエンサーは、自身の日常生活にプロモーションする商品やサービスを自然に取り入れてコンテンツを制作します。そのため、企業のイメージとかけ離れたインフルエンサーとタイアップすると、たとえ多くのフォロワーを持っているインフルエンサーであってもプロモーションはうまく機能しません。
正しいインフルエンサーとタイアップし、スポンサーシップを開示することによって、インフルエンサーマーケティングの透明性と信頼性を高めることができるのです。
スポンサーシップの開示でエンゲージメントが改善される?
「スポンサーシップを開示することによってエンゲージメントが減るのではないか?」と考えている企業もありますが、スポンサーコンテンツを明確にするとエンゲージメントが改善されるというデータがあります。
スポンサーコンテンツであることを隠したコンテンツには非難のコメントが集まり、インフルエンサーと企業のブランドに悪影響を与えます。もしスポンサーコンテンツが良質で信憑性があれば、エンゲージメントは減少するどころか改善されるのです。
インフルエンサーはオーディエンスにとって流行の最先端を行く憧れの存在で、正直な意見をコンテンツとして発信しているインフルエンサーはオーディエンスから信頼を得ています。スポンサーシップの開示は誠実性の証であり、結果的にそのコンテンツは良い反響が得られるのです。
スポンサーシップを開示する方法
通常、スポンサーシップの開示は、FTC のルールに則って「#ad(広告)」や「#sponsored(スポンサード)」などのハッシュタグを付けるのが一般的ですが、一部の企業がスポンサーシップの開示をよりクリエイティブな方法で展開し始めています。
その代表的な方法がブランドのオリジナルハッシュタグを活用することです。オリジナルハッシュタグは、ブランドの露出を高め、SEO の改善にも繋がります。「partner(パートナー)」というワードを含んだブランドのオリジナルハッシュタグは、FTC からもスポンサーシップを開示する正式な方法として認められています。
例えば、民泊サービスを展開する「Airbnb 社」は、タイアップしているインフルエンサーに、Instagram コンテンツのキャプションの一行目に #Airbnb_partner というオリジナルハッシュタグを付けてもらっています。オリジナルハッシュタグでスポンサーシップを開示することは FTC のルールに沿っているだけはなく、企業とインフルエンサー、オーディエンスから成り立つオンラインコミュニティーの活性化にも役立ちます。
インフルエンサーマーケティングでハッシュタグを活用する方法についてはこちらの記事をご覧ください。
おすすめ記事:Instagram の流行ハッシュタグをインフルエンサーマーケティングに活用する方法
まとめ
今回は、スポンサーコンテンツを取り巻く環境の変化と、スポンサーコンテンツの開示が企業にもたらすメリットについて説明しました。
従来の形態の企業広告を取り巻く環境は悪化していますが、インフルエンサーとのタイアッププロモーションであれば、スポンサーコンテンツを武器にすることができます。広告であることを開示してもオーディエンスに嫌われず、むしろ信頼性が高まるのであればスポンサーシップを隠す理由がありません。
そして、スポンサーシップを開示するためにブランドのオリジナルハッシュタグを作り、それがインフルエンサーやオーディエンスの間で定着すればブランディングにも活用できます。
このように、スポンサーシップの開示は企業にとって様々なメリットがあります。インフルエンサーマーケティングに取り組む際はぜひ今回の内容を参考にしてください。
参考:https://www.aspireiq.com/blog/five-things-you-may-not-know-about-ftc-guidelines-for-influencer-marketing
https://influencermarketinghub.com/10-leading-influencer-marketing-trends-for-2019/
https://medium.com/@sponsokit/the-need-for-transparency-in-influencer-marketing-7ebc6347669c
https://www.thedrum.com/news/2019/04/03/influencer-marketing-2019-what-you-need-know