これまでのマーケティング手法とインフルエンサーマーケティングが根本的に異なる点とは?

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ソーシャルメディアの台頭に伴い、デジタルマーケティングへの参入はどの業界でも一般的になりました。その中でもインフルエンサーマーケティングは「効果が高いマーケティング手法」として注目されています。

実際に、「Nielsen Catalina Solutions 社」の調査では、インフルエンサーによって制作されてシェアされたコンテンツの ROI は、12カ月後には通常の広告の11倍になるという結果が出ています。

企業がデジタルマーケティングを実施する主な目的は、ターゲットとなるオーディエンス層にリーチし、インプレッションを獲得することです。そして、多くのマーケターがインフルエンサーマーケティングを他のマーケティング手法と同じように「インプレッションを獲得するためのもの」と考えています。ですが、この認識は間違っています。

今回は、これまでのマーケティング手法とインフルエンサーマーケティングが根本的に異なる点について、2つのインフルエンサーマーケティングの例を挙げて説明します。


目次

  1. これまでのマーケティング手法と根本的に異なる点とは?
  2. サッカーの Zlatan Ibrahimovic 選手の例
  3. アメフトの Colin Kaepernick 選手の例
  4. 2つの事例から学べること
  5. まとめ

  6. これまでのマーケティング手法と根本的に異なる点とは?

    インフルエンサーマーケティングは次の2つの理由から、これまでのマーケティング手法とは一線を画すと言えます。

    1.インフルエンサーマーケティングは、インフルエンサーとフォロワーの関係性の上に成り立っている

    2.インフルエンサーマーケティングは、「企業がフォロワーに見せたいものを見せる」のではなく、「フォロワーが見たいと望むものを見せる」が基本

    これまでのマーケティング手法は、企業の商品やサービスを有名人が宣伝し、ターゲットとなるオーディエンスへのリーチを狙うものでした。この場合、オーディエンスは望まなくても広告を「見せられる」という状態になります。

    そして、デジタルマーケティングの場合はインプレッションがキャンペーンのパフォーマンスを測定する重要な指標となり、インプレッションが増えることによって商品やサービスの購入に繋がります。

    一方、インフルエンサーマーケティングの場合、ターゲットとなるオーディエンスはインフルエンサーのフォロワーで、インフルエンサーとフォロワーの間にすでに信頼関係が成り立っているという違いがあります。

    そのため、インフルエンサーがブランドとのタイアップを考える時に、そのブランドが自分のポリシーに合うのか、そして、自分のフォロワーがそれに共感してくれるのか、という点を重視します。ブランドとインフルエンサーとフォロワーの間で価値観が共有されて初めてインフルエンサーマーケティングは成功するのです。

    インフルエンサーマーケティングは、インフルエンサーとフォロワーの強い結びつきにブランドが入り、同じ時間や価値観を共有することによって成り立っています。その点において、「インフルエンサーマーケティングは、インプレッションの獲得を目指すこれまでのマーケティング手法とは異なる」と言えます。

    インフルエンサーマーケティングでインプレッションだけを追い求めるとどのようなことが起きるのか、次で具体的に例を挙げて説明します。


    サッカーの Zlatan Ibrahimovic 選手の例

    これから紹介するのは、「フォロワー」の視点から見たインフルエンサーマーケティングの一例です。

    Zlatan Ibrahimovic 選手は元スウェーデン代表のサッカー選手で、スウェーデンサッカーの最多得点記録を持つスーパースターです。彼の Instagram アカウントには3600万人ものフォロワーがいます。

    ヨーロッパで最大のマーケティングウェブサイト「The Drum」の Michael Feeley さんは、 Zlatan Ibrahimovic 選手の熱心なファンの一人でした。Michael Feeley さんは Zlatan Ibrahimovic 選手の SNS アカウントを10年間フォローし続け、彼の試合やインタビュー、記事、ソーシャルメディアの投稿を常にチェックしていました。

    その間、Michael Feeley さんは Zlatan Ibrahimovic 選手のファンになっただけではなく、 Zlatan Ibrahimovic 選手が情熱を持っているもの、彼の信念、姿勢といったパーソナルな部分まで理解できるようになりました。彼のソーシャルメディアのコンテンツは、フォロワーにインスピレーションを与え、楽しませるために作られていました。

    ところがある日、Zlatan Ibrahimovic 選手はあるメーカーとタイアップし、歯のホワイトニング用品のスポンサーコンテンツを投稿しました。Michael Feeley さんは、Zlatan Ibrahimovic 選手とそのメーカーがタイアップした背景が分からず、コンテンツからはフォロワーを楽しませようとする意思も感じられませんでした。Michael Feeley さんは、その投稿は単にお金を得るためのものだと考えました。

    Michael Feeley さんの知る Zlatan Ibrahimovic 選手は、単純にお金のためにブランドを宣伝するような人物ではありませんでした。フォロワーとの関係へのリスペクトが感じられないその投稿に Michael Feeley さんは落胆し、一瞬で、10年間で Zlatan Ibrahimovic 選手に感じていた尊敬の念を失ってしまいました。

    Zlatan Ibrahimovic 選手が投稿したスポンサーコンテンツの動画は数百万回再生されているので、プロモーション自体は失敗とは言えないでしょう。ただ、今回のプロモーションは Michael Feeley さんのような熱心なファンの信頼を裏切る結果になってしまったのも事実です。


    アメフトの Colin Kaepernick 選手の例

    これから紹介する例は、ブランドがインフルエンサーとフォロワーの関係性を大切にし、「フォロワーが見たいと望むものを見せる」という姿勢で実施したインフルエンサーマーケティングの成功事例です。

    2016年に、アメフトの Colin Kaepernick 選手は、少数派民族の差別に対する抗議として、国歌斉唱の最中に起立することを拒否しました。この行為は大きな議論を呼び、Colin Kaepernick 選手はそれ以降試合に出場できなくなってしまいました。

    その後、スポーツブランドの Nike 社が Colin Kaepernick 選手とタイアップし、「何かを信じろ。もしそれがすべてを犠牲にすることになっても。」というキャッチコピーと共に Colin Kaepernick 選手の顔が大きく映し出されたプロモーション写真を発表しました。彼は自身の Instagram にこの写真を投稿し、115万件以上の「いいね!」が付きました。

    その後、Nike 社は Colin Kaepernick 選手をブランドアンバサダーの一人として任命しました。Nike 社は Colin Kaepernick 選手の価値観を受け入れ、彼は Nike 社の「価値観」の一部になりました。そして、両者は互いの声を代弁する存在になったのです。

    Colin Kaepernick 選手は Instagram のアカウントで、彼と同じような経験をしている人々の素晴らしい物語をシェアし始めました。フォロワーはその投稿に共感し、ブランドとインフルエンサーとフォロワーは一つになりました。

    このケースでは、Nike 社と Colin Kaepernick 選手がタイアップした理由が明白です。Nike 社と Colin Kaepernick 選手は価値観を共有し、彼のファンの多くがその価値観に共感を示しました。

    フォロワーは Nike 社が Colin Kaepernick 選手との繋がりの一部になることを受け入れ、Nike 社と Colin Kaepernick 選手とそのフォロワーは、意味のある繋がりを作ることができました。その結果、Colin Kaepernick 選手がプロモーションした Nike 社の限定商品は即完売しました。

    インフルエンサーマーケティングは、インフルエンサーとフォロワーの関係性がベースになっています。単純にインプレッションを追い求めただけではフォロワーの心を動かすことはできません。


    2つの事例から学べること

    インフルエンサーとフォロワーの関係は、数年から数十年という長い時間をかけて築き上げられたものです。ブランドはそれを尊重しなければなりません。

    フォロワーは、自分がフォローしているインフルエンサーの信念、好きなもの、コミュニケーション手法などをとてもよく知っています。信憑性に疑問のあるコンテンツは瞬時に見抜かれ、フォロワーに受け入れてもらえないだけでなく、インフルエンサーとフォロワーの信頼関係を壊してしまうことになりかねません。

    コンテンツは「物やサービスを購入してもらうためのメッセージ」ではなく、インフルエンサーの価値観を表現したものでなければなりません。インフルエンサーが本音で伝えたいと思ったメッセージだからこそフォロワーに届くのです。

    インフルエンサーマーケティングは単純に「インプレッションを獲得するためのもの」と考えていると、表面には見えない「フォロワーからの信頼」という大切な財産を、気づかぬうちに失うことになるかもしれません。


    まとめ

    今回は、これまでのマーケティング手法とインフルエンサーマーケティングが根本的に異なる点について、2つのインフルエンサーマーケティングの例を挙げて説明しました。

    インフルエンサーマーケティングは、人と人の深い信頼関係の上に成り立っています。ブランドはその事を理解した上で、どのようなアプローチをすればフォロワーに受け入れてもらえるかという視点で考える必要があります。

    インフルエンサーとフォロワーをリスペクトし、価値観が共有できれば、インフルエンサーマーケティングはきっと成功するでしょう。



    参考:https://www.thedrum.com/opinion/2019/05/02/why-influencer-marketing-about-moments-not-impressions
    https://brands.joinstatus.com/influencer-marketing-vs-traditional-marketing

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