【事例】米国の旅行アプリ会社のインフルエンサーマーケティング

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米国の旅行者を対象としたiPhoneアプリ「Epiclist」は1万人以上のユーザーを持ち、これまでほぼ同数の旅行体験がこのアプリを通してシェアされている。

2014年5月、Epiclistはインフルエンサーマーケティング事業者「themidgame」と協働でマーケティング・キャンペーンに取り組んだ。今回はそのケーススタディーを紹介する。


Epiclistによるインフルエンサー・キャンペーン

Epiclistは2014年に開始された、旅行者のさらなる壮大(epic)な旅を応援し、旅行リストを充実したものにするというiPhoneアプリである。このアプリはアップルの「注目のライフスタイル・アプリ」および「突出した無料アプリ」部門でも「最も注目すべき新しいアプリ」として取り上げられている。

インフルエンサーマーケティング事業者である「themidgame」とのパートナーシップは、EpiclistのiPhone上での実装を周知するキャンペーンとしておこなわれた。

キャンペーンの主な目的は、以下の2点である。

  • ユーザーのサインアップを増やすこと
  • Epiclistを利用してシェアされる旅行コンテンツを増やすこと

キャンペーンの概要

Epiclistは旅行に特化したアプリなので、そこで求められるインフルエンサー像は、オンライン上で旅行への情熱を発信するブロガーだった。

Epiclistにはインフルエンサー3組分の予算の用意があった。そのため、当時600人が登録していたthemidgameのトラベルインフルエンサーのプロフィールから、以下の点に注目しつつ3組が絞り込まれることとなった。

  • ニッチ性
  • アプリとの相性
  • 月間リーチ数
  • コンテンツ・クオリティ
 

選ばれた3名はそれぞれのブログ上でEpiclistのレビューを書き、すべてを同じ週のタイミングで公開する。そして、各自のソーシャルメディア上でもシェアすることとした。

インフルエンサーにとってもEpiclistを使うことで、キュレーションやアップロードをスムーズに行うことができ、また自分のコンテンツを拡散する場が増えるのだ。

レビュー例

インフルエンサーとして選ばれた「クルージング・カップル」という旅行者によるレビューを見てみよう。

クルージングカップルによるブログのEpiclistレビューページには、amazonやairbnb、ドッグシッター事業者や旅行代理店へのリンクが貼られている。そのなかで、まずEpiclistを「今の冒険の途中でも、次の「壮大」な旅行計画に向けて、他のユーザーが投稿した1万件以上のリストを見ながらインスピレーションが得られる新しいアプリ」、また「自分の冒険で得た写真や地図を数千人のユーザーコミュニティでシェアできる」と紹介している。

そして、Epiclistの実際の投稿画面を掲載しながら使い方を解説し、気に入っている点、改善して欲しい点を述べていて、このページは様々なソーシャルメディアを通し153回シェアされている。


themidgameのインフルエンサー・マーケティングへの姿勢

themidgameは、コンテンツに対する中立性を重視している。

事業の透明性とトラベルブロガーらのコンテンツの信憑性が、インフルエンサーマーケティングを成功させる鍵と考えるからだ。そのため、同社はコンテンツに必ずしも好感度を求めない。「スポンサーに妥協した記事は決して読みたくたい」と言う。こうした姿勢をもとにおこなわれた今回のキャンペーンでも、Epiclistのインフルエンサーとして選ばれた3組のブロガーらはアプリに対する率直なレビューを寄せている。

それはどのような効果をもたらしただろうか。


ポジティブな結果

今回のキャンペーンのポジティブな結果としては、まずインフルエンサーらのレビューを通してEpiclistがアプリへのフィードバックを得られた点が挙げられる。

3組のインフルエンサーはアプリのデザインの美しさや仕様の分かりやすさについて述べたほか、旅行をカテゴリー別に分ける機能やAndroidバージョンのリクエストといった改善点も提案した。そのほか、Googleで「Epiclistレビュー」というキーワード検索をすると、上位5件に今回のレビューが表示されるようにり、なかでも1件のレビューは「Epiclist」の検索でも最初の検索結果表示画面に現れるという。

今回のインフルエンサー・キャンペーンはEpiclistのインターネット上の知名度を確かなものにしたと言える。

CPC型の広告を載せるブログとは違い、スポンサーの付いたブログはコンテンツの充実度を都度改善しながら、継続的に更新される性質がある。これはインフルエンサーにとっても実り多い結果をもたらすだろう。


その他の結果

レビュー記事への反応が最も活発だったのはTwitterで、何百ものメンションやシェアが獲得できたという。

しかし、それぞれのブログ記事のなかで他と比べてレビューページの閲覧数は多いと言えず、レビューからEpiclistサイトへのリンクをたどった件数やアプリのダウンロード自体は思わしくなかった。

スポンサーのコンテンツをさらに充実させ、またインフルエンサーに対してもコンテンツのシェアやアプリ紹介記事でどうクリエイティビティを発揮するかなど、改善点をリクエストしてゆくことが必要だろう。

レビュー自体へのエンゲージメントについても、各インフルエンサーの他の記事と比べると少なかった。しかし、こうしたブログファンたちは旅行の経験談を読むためにコンテンツをチェックしているので、予測できた結果とも言える。


まとめ

Epiclistのインフルエンサー・キャンペーンはおおむね成功だったと言える。

1つ目の目的であるユーザーのサインアップに関しては失敗だったが、2つ目の目的であるシェアされるコンテンツを増やすことには成功した。明確に計測した結果などは記載されていないが、シェアされるコンテンツによるアトリビューション効果も少なからず今後もあるはずだ。

今後予算を増やすことで、より多くのインフルエンサーらと協働し、更に効果的なキャンペーン展開が可能となるだろう。

とりわけ今回示唆的だったのは、インフルエンサーとスポンサー両者による、相互への期待値を調整する必要が課題として浮かび上がったことだ。スポンサーは例えニッチな分野で比較的小規模のインフルエンサーに投資しただけでも目に見える大きな効果を期待し、逆にインフルエンサーは発信したいことをそのまま、より多くのソーシャルメディアで拡散できるようになりたいと望む。

両者が円滑なコミュニケーションを取り、キャンペーンの目標や期待する効果を時間をかけて共有することが、その結果をより予測可能なものとするだろう。ステイクホルダー全員にとってより望ましい結果が得られるよう、インフルエンサーマーケティングのさらなる発展に向け、いっそうの努力が求められる。




参考:themidgame “Influencer Marketing Case Study: EPICLIST” blog.themidgame.com/2014/06/10/influencer-marketing-case-study-epiclist/

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