インスタグラムストーリー(Instagram Stories)は、2016年にリリースされたインスタグラムの新機能で、写真や動画を24時間限定で公開することができます。現在、1日3億人のユーザーがストーリーを利用しています。
ストーリーには、これまでのインスタグラム投稿には存在しなかった「ある機能」が追加され、すでに多くのブランドがストーリーを活用したインフルエンサーマーケティングを展開しています。
今回は、ストーリーの基礎知識や、ストーリーでのインフルエンサーマーケティングを成功させるためのポイントと事例を紹介します。
目次
- インフルエンサーマーケティングで有効なストーリーの機能とは?
- 数字で見るストーリー
- ストーリーの利点
- ストーリーでのインフルエンサーマーケティングを成功させる6つのコツ
- ストーリーを活用したインフルエンサーマーケティング事例
- まとめ
インフルエンサーマーケティングで有効なストーリーの機能とは?
ストーリーでは、ユーザーが「シェアしたい」と思った日常の様々な瞬間を写真や動画で気軽に共有することができます。24時間経つと消えてしまうという気軽さがユーザーの心を掴み、若年層を中心に人気を集めています。
ストーリーの登場は、インフルエンサーマーケティングに取り組むブランドにとって大きな変化でした。その最も大きな理由の一つが、ストーリーに「スワイプアップ」という機能が付いていることです。
これまでのインスタグラム投稿では、ユーザーを外部のサイトに誘導する場合、アカウントのプロフィール欄にURLを貼り付けておいて、キャプションで「URLはプロフィール欄にあります」と知らせる必要がありました。
一方、ストーリーには、外部サイトへのURLを貼り付けて直接アクセスできる「スワイプアップ」という機能があるため、多くのブランドがオンラインショッピングサイトやブログ、外部のキャンペーンサイトなどにユーザーを簡単に誘導できるようになりました。
この機能により、インフルエンサーマーケティングがブランドの売上向上にダイレクトに貢献できるようになりました。これまで「ダイレクトセールスには繋がりにくい」と言われていたインフルエンサーマーケティングにとって、スワイプアップ機能は「革命」と言えます。
2017年にストーリーでシェアされた外部リンクのうち59%はショッピングサイトに繋がるもので、2018年にはインスタグラムのスポンサードコンテンツのうち34%がストーリーでした。
今後、ストーリーを活用したインフルエンサーマーケティングは更に広がっていくと考えられます。
数字で見るストーリー
インスタグラムによると、ストーリーで最もよく閲覧されているコンテンツのうちの3分の1は、ブランドによって制作されたコンテンツだと言います。
ストーリーの現状を数字で見てみると、業界を問わず様々なブランドがストーリーでのプロモーションに取り組んでいる理由が分かります。
・ストーリーのアクティブユーザー数は1日3億人
・インスタグラムを利用しているブランドの50%以上がストーリーに投稿した経験がある
・インスタグラムのユーザーの3分の1以上が毎日ストーリーを見ている
・スポンサードコンテンツの20%がダイレクトインタラクションに繋がっている
・ストーリーで広告を展開しているブランドは1億社以上(アカウント数ベース)
・ストーリーに従業員やインフルエンサーを登場させているブランドのうち20%近くが、コンテンツを投稿してから数日の間にエンゲージメントを向上させている
また、ストーリーのコンテンツの内訳は次のようになっています。
ストーリーのコンテンツのうち36%が商品のプロモーションに活用されていることが分かります。現状、インフルエンサーコンテンツの割合は全体の14%程度ですが、ストーリーが商品プロモーションに最も多く活用されていることから、「インフルエンサーによる商品プロモーション」の割合は今後増えていくことが予想されます。
ストーリーの利点
スワイプアップ機能以外にも、ストーリーにはブランドにとって魅力的な特徴がいくつかあります。
・インパクトがある
ストーリーは通常の投稿画面の上に表示されるので目立ちます。
・邪魔するものが少ない
通常のインスタグラムのコンテンツには「いいね!」やコメント欄、DMボタンなど多くの機能が付いています。一方、ストーリーはコンテンツをクリックすれば自動的にフルスクリーンモードに切り替わり、ユーザーはコンテンツのみに集中することができます。フェイスブックなど他のソーシャルメディアの投稿画面とストーリーの投稿画面を比べてみても同じことが言えます。
・「一時的」であること
最近、心理学で「FOMO」というテーマが注目を集めています。「FOMO」は「Fear of missing out」の頭文字で、日本語に訳すと「逃すことへの恐怖」という意味になります。具体的には、流行から取り残されることを恐れ、SNSをこまめにチェックしないと不安に襲われる人々を指した言葉です。
ストーリーのコンテンツは24時間限定で、さらに自分が興味を持っている分野についての最新情報が配信されるため、流行を追い求める「FOMO症候群」の若年層ユーザーのニーズにマッチしていると言えます。
・アンケート機能がある
ストーリーには、ストーリーを閲覧しているユーザーに対して2択の質問を投げかけて回答してもらう「アンケート」という機能があります。アンケートやコンテストのようなユーザー参加型のコンテンツはエンゲージメントを高める方法として非常に効果的です。
・ロケーションストーリーという機能がある
ストーリーにはロケーション(現在地)をタグ付けできる「ロケーションストーリー」という機能があり、特定のエリアを選択すると、そのエリアがタグ付けされているストーリーを閲覧することができます。この機能には、現在そのエリアにいる「フォロワー以外」のユーザーにストーリーを見てもらえるという利点があります。
イベントやフェスなどの最中にロケーションストーリーを活用することによって、フォロワー以外のユーザーへのアプローチが期待できます。また、地域限定の情報なども狙ったユーザーに適切に発信することができます。
このように、ストーリーには様々な利点があります。
ストーリーではインフルエンサーの日常の一瞬をよりリアルに感じることができるので、「お気に入りのインフルエンサーのストーリーは必ずチェックしている」というオーディエンスは多いでしょう。
ストーリーでのインフルエンサーマーケティングは、ブランドにとってもインフルエンサーにとっても多くのメリットがあります。
ストーリーでのインフルエンサーマーケティングを成功させる6つのコツ
ストーリーでコンテンツを投稿する場合、通常のインスタグラム投稿とは少し事情が異なることを理解しておきましょう。
ここでは、ストーリーでのインフルエンサーマーケティングを成功させる6つのコツを紹介します。
1. 広告感の少ない自然なコンテンツにする
通常のインスタグラム投稿では洗練された写真が好まれますが、ストーリーでは広告感の少ない自然なコンテンツの方がユーザーに受け入れられやすくなります。実際に、作りこまれたグラフィック動画よりもライブ動画の方がユーザーの反応が良いというデータもあります。
ユーザーが日常の一瞬を切り取って投稿するストーリーでは、広告感のある作りこまれたコンテンツは浮いてしまいますので注意しましょう。
2. コンテンツに統一感を出す
ユーザーがストーリーに投稿された一つ一つのコンテンツを見る時間はほんの数秒です。その中からブランドのコンテンツをすぐに見つけてもらえるように、コンテンツには統一感を出すことを心がけましょう。
作りこんだコンテンツは嫌われますが、自然体のコンテンツを発信するということは「思いつきで作ったコンテンツを投稿する」こととは違います。「カジュアル」と「洗練さ」のバランスが大切です。
3. 重要な項目を分かりやすくする
コンテンツの質が高くても、何を伝えたいのか分からないコンテンツではプロモーションを実施する意味がありません。
商品を紹介したいのか、ブログへ誘導したいのか、ウェブサイトに掲載されている動画を閲覧して欲しいのか、コンテンツの目的がはっきりと分かるようにしましょう。
具体的な例を挙げると、期間限定のイベントであればそれが一目で分かるようにすると効果的です。例えば、「セール」よりも、「本日限定セール開催中」の方がオーディエンスは興味を持ちます。
また、音声での情報共有に頼り過ぎないようにすることも大切なポイントです。インスタグラムによると、ユーザーの70%はサウンドをオンにしてコンテンツを閲覧していますが、それは同時に、残りの30%のユーザーはコンテンツの音声を聞いていないことを意味します。
4. CTAを分かりやすくする
CTA(行動喚起)を目的としたコンテンツの場合、それを曖昧にするメリットは何もありません。「アクセスはこちら」「もっと見る」など、CTAを分かりやすく表現しましょう。 外部のサイトへオーディエンスを誘導できるスワイプアップ機能は非常に分かりやすいCTAと言えるでしょう。
5. リンク先のページとストーリーのメッセージを揃える
CTAは大切ですが、それは手段の一つに過ぎません。CTAの先にあるランディングページやウェブページがオーディエンスとブランドの接点の始まりです。
ランディングページやウェブページを訪れたオーディエンスは、何のアクションも起こさずにページを閉じてしまう事があります。その原因の一つが、ストーリーでのメッセージと、リンク先でのメッセージが統一されていないことです。
リンク先のページはストーリーのコンテンツと同じくらい大切です。トーンや見た目を揃え、せっかく誘導したオーディエンスをがっかりさせないようにしましょう。
6. 情報を詰め込み過ぎない
ストーリーは感覚的に消費されるコンテンツです。ユーザーはインスタグラムの画面の一番上に表示された複数のストーリーを次々とスワイプして閲覧していきます。
そのため、インフルエンサーマーケティングを実施する際は、コンテンツに情報を詰め込み過ぎないことが大切です。テキスト情報がたくさん詰め込まれたコンテンツはユーザーにスキップされてしまうことがあります。
ストーリーでのインフルエンサーマーケティングに成功しているブランドとインフルエンサーは、これらのポイントをおさえたコンテンツを制作しています。
より自然体でのプロモーションが好まれるストーリーはインフルエンサーマーケティングとの親和性が高く、うまく活用できればブランド認知度や売上向上など、期待以上のマーケティング目標を達成することができるでしょう。
ストーリーを活用したインフルエンサーマーケティング事例
ここからは、実際にストーリーを活用したインフルエンサーマーケティングの事例を紹介します。ウェブサイトへのアクセス、限定商品のプロモーションなど、それぞれのブランドがマーケティング目標を達成するためにストーリーを上手に活用している事が分かります。
HiSmile社の事例
2014年に創立した10代向けのホワイトニングブランド「HiSmile」は、アイルランドの男性総合格闘家であるConor McGregorさんとタイアップしてインフルエンサーマーケティングを実施しました。
HiSmile社は、これまでリーチが難しかった10代の男性をターゲットオーディエンスに設定し、ストーリーで動画を使ったインフルエンサーマーケティングを実施した結果、男性顧客の数が90%増加しました。
15秒間の動画の中でブランドのストーリーが分かりやすく表現され、HiSmile社のウェブサイトへのダイレクトリンクを貼り付けることも忘れませんでした。
MACの事例
化粧品ブランドの「MAC」は、ストーリーを活用してオーディエンスにとって役立つ情報を発信しています。
MACのコンテンツにはメイクアップアーティストやブロガーなどのインフルエンサーが登場し、メイクの方法や新商品の紹介などのトレンド情報を発信しています。コンテンツには #MACGirlsや#MACArtistChallengeといったブランド固有のハッシュタグが付けられ、フォロワーのネットワーク構築とエンゲージメントの向上に役立てています。
American Eagleの事例
アパレルブランドの「American Eagle」はフェイスブックで広告を展開していましたが、新しいオーディエンスとこれまでとは違うレベルで繋がるためにストーリーを活用したインフルエンサーマーケティングを開始しました。
American Eagle社はアメリカの若い性的マイノリティであるLGBTQを応援するためのキャンペーン「#WeAllCan」を展開しました。キャンペーンでは活動家とマイクロインフルエンサーが起用され、キャンペーン限定のコレクションの購入を促しました。
Bon Appetitの事例
Bon Appetitは、料理のレシピやレストランのレビューなどを掲載している月刊誌です。雑誌の発行以外に、編集者をインフルエンサーとしてSNSに登場させ、ストーリーでも食に関する魅力的なコンテンツを発信しています。ソーシャルメディアでハイレベルなコンテンツを発信することによって雑誌の質の高さをアピールし、「Bon Appetit」のブランド力を強めています。
ストーリーには毎日のようにコンテンツがアップされ、通常のインスタグラム投稿と雑誌のコンテンツのテーマとも連携し、複数のプラットフォームで情報を発信することによってオーディエンスのエンゲージメントを高めています。
また、ストーリーを他のプラットフォームのコンテンツの補足として使うことによってオーディエンスに新たな価値を与え、他のプラットフォームを訪問してもらうきっかけにもなっています。
まとめ
今回は、インスタグラムストーリーの基礎知識や、ストーリーでのインフルエンサーマーケティングを成功させるためのポイントと事例を紹介しました。
ストーリーは今や1億以上のブランドがプロモーションを展開する一大マーケティングプラットフォームです。
インフルエンサーによるスポンサーコンテンツはまだ通常の商品広告よりも割合が少ない状態ですが、ライバルが少ない分、早い段階でインフルエンサーマーケティングに乗り出すことができれば大きなチャンスがあります。
インフルエンサーは自力で探し出すことも可能ですが、インフルエンサーマーケティングプラットフォームを活用すれば、条件に合ったインフルエンサーを簡単に探すことができます。
また、煩雑な契約の手続きやキャンペーンの効果測定なども全てプラットフォーム上で行う事ができるので、ブランドのマーケティング担当者の負担を大幅に削減することが可能です。
参考:https://fpsmedia.it/en/instagram-stories-brands-case-studies/
https://talkinginfluence.com/2019/07/31/instagram-stories-likes/
https://join.marketing/blog/instagram-stories/#/
https://martech.zone/instagram-story-examples/
https://www.convinceandconvert.com/social-media-case-studies/crushing-it-with-instagram-stories/
https://blog.hootsuite.com/failing-instagram-stories-conversions/
https://blog.hootsuite.com/brands-insta-stories/
https://99firms.com/blog/how-businesses-use-instagram-stories/#gref
https://digiday.com/media/bon-appetit-treating-editors-like-influencers/